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始まりは細い糸のような鼻血。血が止まらない異常から緊急入院。検査を重ねても病気が見つからない【難病アラジール症候群・体験談】

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2カ月の真翔くん。小さい身体にチューブや注射針が刺され、検査を受け続けました。

大阪府に住む吉田幸司さん(44歳)は、妻・麻里さん(44歳)と子ども5人で暮らす7人家族です。長男(現在23歳)、二男(現在19歳)の誕生後、1歳離れた三男として誕生した真翔(まなと)くん(現在18歳)に体調の異変があったのは生後1カ月のころのこと。多くの検査を重ねても病気が確定できないまま生後4カ月を迎えることに・・・。診断が出るまでの真翔くんの様子と幸司さんの気持ちを聞きました。全3回のインタビューの1回目です。

始まりは細い糸のような鼻血。血が止まらない異常から緊急入院

仲よし3人兄弟。入院前にパチリ。

真翔くんは吉田家の三男として2004年10月に誕生。身長45cm、体重2684gの赤ちゃんでした。麻里さんのおなかの中にいる間は少し体が小さめと指摘されながらも、大きなトラブルもなく生まれてきました。
しかし1カ月健診が無事に終わったある日のこと、せきが出て白いうんちが出ていることに気づきます。

「小児科を受診したところロタウイルス胃腸炎だろう、という診断でした。そのまま様子を見ていましたが数日後、細い糸のような鼻血を出て、それが出続けていたんです。そして、赤茶色のうんちが出ていたこともあり、すぐに救急病院を受診しました」(幸司さん)

しかし、救急病院でも診断はロタウイルス胃腸炎。鼻血は、ただの鼻血という診断でした。医師からは「鼻血が気になるなら、救急の耳鼻科を受診するように」と言われました。幸司さんは、真翔くんを連れて念のためと思いながら耳鼻科も受診。そこでもただの鼻血という診断だったと言います。

「ほっとしたのですが、翌日念のためかかりつけの病院に連れて行くと、採血検査をしてくれました。結果はとくに異常なかったのですが、その夜、採血した腕からの血が完全に止まっていなくて、血が出続けていたんです。あわててまたかかりつけの病院に行くと、国立病院を紹介され、そのまま検査入院をすることになりました」(幸司さん)

胆道閉鎖症が疑われ、大学病院へ転院するもなかなか結果が出ず

鼻に管を通して胆汁の検査を受ける、2カ月の真翔くん。

国立病院ではすぐに検査が行われ、医師からは「胆のうが見えないので、胆道閉鎖症(たんどうへいさしょう)の可能性があります」という言葉が。

「『真翔くんの血が止まらないのは、ビタミンK不足が考えられます。血を止める働きがあるビタミンKは脂肪から生成されますが、胆汁がないと脂肪は体の中で分解されない』というのが医師の説明でした。そして『胆道閉鎖症は、肝臓と腸の間にある胆のう・胆管がない、もしくは、閉鎖していて肝臓でつくられた胆汁が腸へと流れ込まないという病気』とも。
聞いたことのない病名でしたし、胆のうが見えないなんて、大変な病気なのだ、と感じました。しかし、あまりにも突然で信じられず、というより信じたくなく、‟大したことはない、大丈夫。何かの間違いのはず”と自分に言い聞かせていました」(幸司さん)

胆道閉鎖症の場合、なるべく早く手術を行ったほうが好ましいということで、真翔くんは医療体制の整った大学病院へと移ることになりました。

あちこちから採血された手足は、紫色に変色も

大学病院では、胆道閉鎖症かどうかを見極める検査が次々に行われました。

「採血検査やエコー、さらに鼻から腸まで管を通し胆汁が流れているかを見る検査を行いました。生後2カ月という小さな体には本当にどれもつらい検査です。週2回の採血も血管が細くなかなか血が採れないので、手や足などいろいろな場所で血を採られ手足が紫色に変色していました。十二指腸まで鼻から管を通す検査では、丸1日 水もミルクも飲めず、空腹で眠れず1日中大泣きでした。
年末から入院をしたものの、病院が正月休みで詳しい検査もできず胆道閉鎖症の断定ができません。病名もはっきりしないまま年末年始を過ごすことになりました。真翔は3カ月。生まれて初めてのお正月なのに、家族5人がバラバラに・・・。本当に残念でした」(幸司さん)

腹腔鏡検査を受けた結果、胆道閉鎖症は否定

年が明けても、診断は出ません。

「いくつもの検査が行われても病気がわからない状況が続いていました。そして、外からいくら検査しても診断が出ない、ということで腹腔(ふくくう)鏡検査が行われることになりました。腹腔鏡検査は、おなかを3~4カ所ほど切り、小型のカメラや管を入れて造影剤を流し、胆汁の流れや胆管の有無を調べる検査手術です。
手術室から出てきた真翔には、いくつものチューブがつながれていて、体には大きな4つのガーゼがついていました。まだ麻酔が切れていないのかボーッとした表情で・・・。とても痛々しかったことを覚えています。
およそ2時間後、医師から検査結果を聞きました。胆管に胆汁は流れていて、胆道閉鎖症ではないという診断でした。ひとまずほっとしましたが、その後もうんちの白さは回復せず黄疸(おうだん)の数値も高いままです。乳児肝炎など5つほど疑わしい病気があがっているものの、病名がわからないままさらに約2週間が過ぎました」(幸司さん)

ついに判明した病気は「アラジール症候群」

4カ月のころ。入院中に首がすわりました。

真翔くんは4カ月。さらに詳しく調べるために「肝生検」が行われました。「肝生検」とは長い注射針のようなものを肋骨(ろっこつ)のすき間から肝臓に刺し、肝組織を取って調べる検査です。結果は2日後に出ました。

「肝生検で、①肝臓のグリソン鞘にあるはずの胆管が少ない、②心臓の動脈が細い『肺動脈狭窄(はいどうみゃくきょうさく)』、③背骨の椎体に黒いすき間がみえる『蝶形椎体(ちょうけいついたい)』が見られるという結果が出たと言われました。それらの症状から、病名は『アラジール症候群』だと言われました。
正直、病名を聞いたときのことはあまり覚えていません。病名を聞いてまず初めに、治る病気かどうかを聞きました。医師の返事は『治る病気ではありません。しかし、病気の症状によっては今後もある程度普通の生活ができます』というものでした。
また、『症状によっては肝臓移植が必要になるかもしれない』とも言われました。一生治らない病気・・・、症状によっては肝臓移植・・・。医師の言葉が理解できるものの、自分の息子に起こっていることとも思えず、思いたくなく、一体何から整理をしていけばいいかもわからず、ものすごく複雑な心境でした」(幸司さん)

【近藤先生より】アラジール症候群は、生まれつき臓器に症状が出る病気

退院後6カ月ごろの真翔くん。初めての夏祭りにご機嫌。笑顔を見る限り、難病を抱えているようには見えません。

アラジール症候群は、生まれつき肝臓や心臓などさまざまな臓器に症状がある遺伝性疾患です。
原因は遺伝子変異が一因とされていますが、まだ解明されておらず、医師でも知らない人がいるほど認知度が低い病気です。治療法もいまだ確立されていません。

「アラジール症候群」は、主に「肝臓」「心臓や血管」「目」「椎骨」「顔立ち」の5つに症状が現れますが、必ずしも5つすべてに症状が現れるというわけではありません。
多くの場合見られるのが、胆汁のうっ滞で、胆汁のうっ滞により黄疸、かゆみ、心臓や血管の異常、ビタミン吸収障害による出血、骨折などが起こる病気です。また、胆汁が不足することで、脂質の吸収が悪いために発達の遅れや成長障害も見られます。

アラジール症候群は、黄疸や白っぽい便でわかることが多いですが、ビタミンK不足の症状として血が止まりにくくなることから、真翔くんのように鼻出血を認めたり、頭蓋内の出血で救急に受診し、この病気とわかることもあります。ただこの様な症状をきたす病気はアラジール症候群だけではなく胆道閉鎖症や進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、シトリン欠損症など多彩であり、まず急いで手術をしなければならない胆道閉鎖症かどうか判断する検査を優先して行います。

お話・写真提供/吉田幸司さん  監修/近藤宏樹先生 取材・文/岩﨑緑、たまひよONLINE編集部 

血が止まらないことから肝臓疾患が疑われ、生後1カ月からいくつものつらい検査を乗り越えた真翔くん。生後2~3カ月という小さな体にいくつもチューブや注射針が刺される様子を見ると、本当にかわいそうでつらかったと幸司さんは話します。そして、ようやく確定した病名はまったく初めて聞く病気。しかも治らない病気…。そして幸司さんが「アラジール症候群」と向き合う日々が始まります。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

日本アラジール症候群の会

Happy Family Life ~難

日本アラジール症候群の会(instagram)

近藤宏樹先生(こんどうひろき)

PROFILE:近畿大学奈良病院小児科准教授。大阪大学大学院医学部卒業後、大阪府立母子保健総合医療センター研究所・環境影響部門主任研究員、大阪大学大学院医学系研究科小児科学助教を務めたのち、近畿大学奈良病院に入局し、現職。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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