いくらかかる? 英語力はどのくらい必要? 海外親子留学のメリットと実態
子どもに異文化体験をさせてみたい、自分も海外での生活を体験してみたい!そんな思いを実現できるのが「親子留学体験」です。今回は親子の留学先として人気の高いオーストラリアの留学事情について、ゴールドコーストで留学サポート事業を行っている「TAKEOFF Gold Coast」の犬飼知子さんにお伺いしました。
海外親子留学の費用やスタイルは?
――「TAKEOFF Gold Coast」では、子どもや大人の留学のほかに、スポーツ留学や親子留学のサポートもされているとお聞きしました。その中で、親子留学とはどのようなものなのでしょうか?
犬飼さん(以下敬称略)「親子留学は、大きく2つのタイプに分かれます。
①親も子も一緒に学ぶ留学
お子さんが語学学校や現地校に通学している間に、親も語学学校で学ぶスタイルで、とても人気があります。滞在方法は、現地のホストファミリーに親子でホームステイする場合が多いですね。親子2人でホームステイをして語学学校に2週間通学の場合、費用の目安は45万円(往復の航空券は別)〜となります。
②親が子どもの留学をサポートする
語学学校や現地校に留学する子どもの日常を、送迎や食事作りなどを親がサポートをするスタイル。滞在方法はコンドミニアムの場合が多く、親子2人で2週間滞在して、費用の目安は35万円(往復の航空券は別)〜となります(通学先や滞在先、時期によって費用は大きく変動します)。」
海外留学で得られるものとは?
――犬飼さんが考える、留学のメリットとはどんなものですか?
犬飼 「留学と言っても、個々の状況により、その内容は様々です。親子留学の場合、もっとも手軽で身近なものは、観光ビザで滞在できる12週間以下の『短期留学』です。
その他、1年や2年など、短く期間が決まっている留学のことはSutudy Abrord(最終的に日本に戻る前提での留学)などと呼ばれ、小・中・高校の各卒業を目指す長期留学をHigh school programやPrimary programなど正規留学と呼ばれています。
得られる経験や力については、上記のどのパターンで留学をするかによりますが、留学のメリットを一つだけ言葉にするなら『違いを知ること』だと思います。
オーストラリアは(また他の国も)多民族国家で、一歩街へ出れば、肌や目、髪の色の違う人が存在することは当たり前で、宗教や文化的背景の違いによるルールや考えの相違にも寛容です。この環境から人々に自然と身につくのは、『違って当たり前』『違っていい』ということです。
ですが日本は島国で、同一民族が人口のほとんどを占める国家です。学校の中や社会で異文化を感じる機会はほとんどなく、自分たちと違うものを異質に感じてしまったり、『みんなと違うことはおかしい』と思ってしまったりする環境にあります。
留学という体験を通じて、異文化社会や世の中の多様性を、机上の言葉ではなく『実体験』として身に付けることで、『日本と世界の違い』を感じ、『人は皆、それぞれ違っていい』ということや、『日本で目の前に見えている選択肢以外に、世界には星の数ほどの他の選択がある』ことを知ることができます。私はそれが最も素晴らしいことだと思っています。
留学で英語はどのくらい身につくの?
――留学するとなると、英語力の向上を期待される方も多いと思います。留学で英語力はどのくらい身につくものなのでしょうか?
犬飼「よく保護者の方に聞かれることではありますが、短期の留学では、英語が身につくことを期待しないように伝えています。その代わりに短期留学では、私たちが今、日本で『英語を学ぶ理由』を子どもたち自身が気づくことができます。
<英語を学ぶ理由の例>
○留学先の学校で、隣に座ったお友だちともっと話したかった
○ホストファミリーにもっと感謝を伝えたかった
○嬉しいことも困ったことも、英語が話せるともっとスムーズに、そして世界中の人とコミュニケーションが取れると思った
このようなことを体験することで、子どもたちは日本に帰ってから、『何のために今、英語を学んでいて、どんな場面でその努力が生かされるのか』を理解し、学習意欲の向上に繋げることができます。
――それは素晴らしい効果ですね。ちなみに短期留学では、英語はどのくらい準備しておくといいのでしょうか?
犬飼「現地校ではなく、語学学校への留学であれば、英語の準備はそこまで必要ありません。子どもの年齢や英語力によって、それぞれ適した英語学習を行うためです。
語学学校にネイティブスピーカーのお友だちはいません。全員が非英語圏のクラスメイトです。
現地校留学であれば、事前に一つでも多くの単語を身に付けてくるだけで、クラスメイトとのコミュニケーションの幅がぐっと広がります。現地校でのクラスメイトはローカル(オーストラリア人)です。
ちなみに、短期留学であればあるほど、語学学校ではなく現地のチャイルドケア(1歳から6歳が対象)や現地校に通うことを、私は強くお勧めします。
現地のチャイルドケアや現地校は、英語力がないとハードルが高いのではないかとよく質問されますが、留学生を受け入れ慣れているオーストラリアの各学校の留学プログラムでは、非英語圏からの生徒に対する事細かなサポートがあるのでお勧めです。
どこに頼むか迷う前に必要なサポートの整理を
――留学のサポート業者を選ぶ際に、気をつけたほうがいいことがあれば教えてください。
犬飼「まずは、自分の必要なサポートが何であるかをご自身で明確にしてください。
例えば、私たちがご相談を受ける中で、近年、大きく2つのパターンのお客様がいらっしゃいます。
①何もかもすべてをお願いしたい人
英語ができない、準備の時間がない、現地の知識がない、子連れで不安、現地の空港到着後から帰国まですべてサポートしてほしい、という方々です。
②学校選びの相談や学校手続きのみをお願いしたい人
英語はある程度できる、自身でのリサーチ力がある、ある程度現地への知識がある、子連れの海外旅行に慣れているなどの方で、学校選定や手続きを頼みたいと思っている方々です。
例えば、②のイメージの依頼者が、①をメインにサポートしている団体とやり取りすると、サービスを過分に感じたり、料金が想定より高いと感じたりすることになります。
皆さんが思っている以上に、留学の参加者とサポートする団体との信頼関係は留学を成功させるうえで重要で、お互いに求めていることが違うがゆえに、悪意なく発生してしまう意見の相違が、せっかくの留学に影を落とし、トラブルを生むきっかけになります。
『留学する』と決めたら、自分は①または②のどちらのサポートが必要か、自分自身で整理をし、留学をサポートしてくれる団体とコンタクトを取ることが重要です。
私たちも、最初の聞き取りでこの部分を明確にするようお客様との面談に力を入れています。
親子留学体験談
最後に、実際に親子留学をした方の声を紹介しましょう。
Case1 夏休みに4週間、現地チャイルドケアに通園の佐藤さん親子 (親子2人でコンドミニアムに4週間滞在)
オーストラリアは子どもを尊重し、個性を大切にする教育方針で、日本との違いに驚きました。娘は日本にいるよりも伸び伸びイキイキしていて、3週間程度でクラスみんなの名前を覚え、オーストラリアが大好きになりました。経験してみないとわからないことがたくさんあり、友人から聞く体験談だけで終わらせず、実際に体験してよかったと本当に思います。
Case2 夏休みに2週間、兄弟で現地校へ通学した末綱さん親子(親子4人でホームステイ、2週間滞在。長女はチャイルドケア通園)
上2人の小学生は現地校に通学していたので、3歳の娘と私はその間、近くのカフェや公園、ショッピングセンター、ビーチなどへ行って楽しみました。どこも子連れパパ&ママにとって移動しやすく、過ごしやすかったです。
長男は最初、英語を聞き取ることは難しかったようですが、理科の実験や算数、パソコンの授業は英語が分からなくも内容は分かったそうです。通学2週間目の後半には、「何を言っているか分かってきたよ!」と話してくれました。
自分とはまったく違う考え方をして生活している人が世界にはたくさんいることを体験させたいと思い、留学をしました。現地のお友だちもたくさんでき、世界共通言語の英語を学ぶことの重要性を体感したことは、子どもたちにとって大きな影響となることを期待しています。
お話を聞いているだけでワクワクしますね。まだ子どもが小さいうちに親子で一緒に体験できる機会は貴重ですね。
(取材/文・メディア・ビュー 橋本真理子)
犬飼知子さん
PROFILE)
TAKEOFF Gold Coast代表。2016年に、当時8歳、6歳、3歳の子どもたちを連れて家族5人でGold Coastに移住。2017年に知人らの依頼に応じて個人的に留学サポートを開始。2018年にTAKEOFF Gold Coastとしてオーストラリアで事業登録して留学サポート事業を本格化。現地校短期通学団体プログラムの運営やオンライン留学プログラム、オーストラリアにおける日系コミュニティでの各種講演・セミナーの開催、医療関係者・教育関係者向け現地視察ツアーの企画・運営等も行う。
※記事の内容は2023年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。