日米のママで違う!スマホとのつき合い方とペアレンタル・コントロール
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「外出先でぐずった!」
「泣いてるけど、手が離せない…」
こんなとき、赤ちゃんにすぐスマホを与えて、”スマホ子守り”をしていませんか?
最近では、「育児でスマホをどう使うべきか悩ましい」というママの声をよく聞きますが、日本でも大人気の『iPhone』をつくった『アップル』や、育児グッズのネット注文も便利な『アマゾン』が誕生したアメリカの親子は、スマホをどう使っているのか…。
メディア情報リテラシーやメディア社会心理学を専門とし、アメリカの大学院に通いながら、大学付属の幼稚園でアシスタントティーチャーをした経験もある駒谷真美先生に伺いました。サンフランシスコから届いた、最新情報も必見です!
アメリカの親子関係ははっきり、日本の親子関係はべったり!?
どうやらアメリカのママは、育児だけでなく、メディアのつき合い方も日本のママとは大きく違うようです。
まずは、アメリカと日本の親子関係やしつけのあり方から、デジタルメディアとどうつき合っているのかを探っていきます。
アメリカのママは、しつけも仕事もメディアもメリハリ!
「世界的に見て、家族のカタチはさまざまな形態が現れ、多様化の傾向にありますが、日本とアメリカの親子関係を比べると、根本的な違いが今も存在しています。
アメリカの家族形態は『夫婦』が重視され、大人である親が家族の要。そのため、アメリカの親子関係は、親としての権威をしっかりと示す傾向があり、それをきちんと見せながら子どものしつけも行います。
また、『個』を大事にするアメリカのママは、わが子の自立心がはぐくまれるように、幼少期からかかわります。自分の欲求や願望を自発的に表現できる子になるように、そして、将来、社会で活躍できるスキルを身につけられるように、日常の親子コミュニケーションはとても活発! 『アメリカ人はディベートやディスカッション好き』と言われる原点でもあります。
一方、日本の親子関係は、お互いのことを受け入れて容認しやすい傾向が見られます。これには2つ理由が。
1つは、日本の家族形態が“子ども中心”であること。もう1つは“母子密着”と言って、親は子どもを自分の一部としてとらえること。子どもの甘えを許しがちで、集団を大事にする日本のママは、わが子に協調性を求めます。そのため、気持ちに寄り添った言葉がけや、子どもをかばうようなコミュニケーションを取ることが多い。こういった、日米の親子関係の特徴は、デジタルメディアとのつき合い方にもつながっています」
親としての権威がメディアとのつき合い方にも反映
アメリカの親子のデジタルメディアとのつき合い方を、アメリカ・サンフランシスコのジャパンタウンで40年以上の歴史があるプレスクール『日本町リトルフレンズ』の吉川真矢先生に伺いました。最新の情報です!
親がパソコンを使う姿を見て、アメリカの子は育つ!
吉川先生のお話では、
「アメリカでは、親が自宅でコンピュータを使っているときは、『親は仕事している』『邪魔してはいけない』という認識が子どもにあります。“机に向かってコンピュータを使う親の姿=仕事”であり、子どもの面倒を見ないでネットサーフィンをしている、という印象は受けていない」そうです。
「アメリカの子どもがそう感じる理由は、前述のアメリカの親子関係が基盤になっています。アメリカの親は子どもを1人の人間としてとらえて対等に扱うため、子どもも『自分でできることは自分でやろう』と自立を望むように。自然と自立心がはぐくまれるので、自宅でパソコンに向かう親に対して、『自分のことをかまってくれない』と考えることはないのでしょう。毎日の親子コミュニケーションの中で、子どもは仕事の大切さを聞く機会も多い。そういった日常的な習慣は、『パソコンで仕事をする親の姿を、子どもがリスペクトする』過程になっていると思います」
アメリカの『ペアレンタル・コントロール』『メディア・ルール』とは?
吉川先生のお話から、アメリカの親は、『ペアレンタル・コントロール』を徹底利用していることがわかってきました。
「『ペアレンタル・コントロール』は、コンピュータ(パソコン)、スマホ、ゲーム機などのデジタルメディアを通じた、子どものオンラインアクセスを制限もしくは禁止設定できる機能。さらに、子どもが不適当なウェブページを閲覧していないかをモニターする機能があるものもあるので、便利なツールとして日常的に使っています。
アメリカは、家族の会話を楽しむことを大切にしているので、食事中はスマホやタブレットの使用を禁止している家庭がほとんど。また、小学生以下の子どもがいる場合、『お手伝いをしたら、ごほうびとして30分、スマホやタブレット、コンピュータなどでゲーム遊びをしていい』といったルールを設けている家庭もあります。誘拐が多発するアメリカでは、保護者が放課後の子どもの居場所を常に把握するためにも、GPS機能つきのスマホを活用しています」
「吉川先生のお話を通じてわかるのは、全体的にアメリカの親は、子どもとデジタルメディアのつき合い方についても、親としての権威をしっかりと示していること。保護者としての責任の一環として、『ペアレンタル・コントロール』や『メディア・ルール』を実践しているのでしょう」
親にアクセス履歴を監視されても嫌じゃない!?
吉川先生によると、
「『ペアレンタル・コントロール』は、子どものアクセス履歴が確認できたり、アプリによっては、子どもが閲覧中のサービスを親が同時に見ることも可能なモニタリングシステムです。
子ども自身も、自分の閲覧内容を親が把握し、管理していることを知っているので、親に隠れてアクセスすることもありません。アメリカでは、それが当たり前。親子のコミュニケーションがオープンなんだと思います。
この習慣は、親子の信頼関係をつくる意味でも大事なことととらえていますね。子どもは親の所有物ではない。だから、幼少でもその子の人格を尊重します。子どもにして欲しくないことは、『○才になったら□□ができるわよ』ときちんと伝え、親が定めた範囲で選ぶ権利を与えます。そして、子どもは、それをどれだけ楽しめるかがポイント。子どもがすることに“ダメ”を言い続けるとネガティブに育ってしまう。アメリカでは、“ごめんなさい”“すみません”ではなく、“ありがとう”が言える子になる子育てが主流です」と話します。
親が子どもを大事に思って愛情を注いでいることや、子どもの将来を見据えて子育てする姿に日米の違いはないと思いますが、親子の関係性には大きな違いがあるようですね。親子関係もデジタルメディアとのつき合い方も、アメリカのいいところは積極的に取り入れていくと、親子のかかわりもスマホを上手に取り入れた育児も、今以上に楽しく良好なものになるように感じました。(執筆協力/駒谷真美先生 取材・文/茶畑美治子・ひよこクラブ編集部)
■監修
Profile●駒谷 真美先生(実践女子大学人間社会学部人間社会学科教授)
お茶の水女子大学大学院博士(学術)取得後、昭和女子大学人間社会学部初等教育学科准教授などを経て現職。NHK放送文化研究所 NHK放送文化研究委員、ベネッセ次世代教育研究所「小さな子どもとメディア」 親と子のメディア研究会委員を歴任。専門はメディア情報リテラシー、メディア社会心理学、ICT教育。最新メディアを活用した実践研究、新旧のメディア様相、乳幼児期から老年期までのメディア意識行動など、生涯発達の観点からメディアの「よろづ」研究に従事。
■取材協力
Profile●吉川真矢先生(日本町リトルフレンズ プレ・アフタースクールマネージャー)
チャップマン大学大学院修士号を取得後、ロサンゼルスの小・中学校でスクールカウンセラーの経験を経て、現在サンフランシスコ日本町にある「日本町リトルフレンズ」で、プレ・アフタースクールのマネージャーを勤める。2才6カ月から11才までの子どもたちの教育に携わりながら、教員のコーチングに従事。サンフランシスコ在住。11才の女の子と5才の男の子のママ。
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