今シーズン大流行の「ヘルパンギーナ」。かかってしまって口が痛いときの栄養摂取の秘策とは?【小児科医】
新型コロナウイルス感染症の流行が始まってからしばらく流行がなかった、夏風邪の一種ヘルパンギーナ。今年は過去10年で最多となっていると報道されています。小児科医の太田文夫先生は「今夏は前代未聞の大流行。通常なら今ごろピークが過ぎているころですが、まだおさまりそうもありません」と言います。「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」連載の#35は、ヘルパンギーナにかかったときのホームケアのポイントについてです。
ヘルパンギーナって、どんな感染症?
ヘルパンギーナは、日本では5月から8月にかけて流行り、夏風邪ともいわれるウイルス性疾患の一つです。
ひと夏に数回かかる子もいます。流行は西から東に進む傾向があり、今年もすでにピークが過ぎた地域もあると聞いています。
ちなみに世界に目を向けると、熱帯地域では通年感染が見られることもあります。
日本では例年は、患者のほとんどは就学前の子どもたちですが、大流行している今年は小学生もかかっているのが特徴。元々は不顕性感染といって、症状が出ないで終わってしまうことが多いので、子どもたちは知らない間に免疫がついていることが多いです。
しかし新型コロナウイルス感染症の影響でここ数年流行が起きていなかったために免疫がつかないまま成長してきたのが原因ではないかと考えられています。
ヘルパンギーナはどんな症状が出るの?
ヘルパンギーナは突然高熱が出るのが特徴です。それに続いて口の中に水疱や潰瘍(かいよう)が出ます。
感染しても症状が出ない不顕性感染も多いので、知らないうちにかかって、症状が出ずに終わってしまう子も多いです。
発熱した場合の期間は数日と短いので、軽症の場合、口の痛みもないまま元気になります。
しかし、熱は高熱になることが多く、その影響で熱性けいれんを起こす子も多く、口の中の水疱や潰瘍の症状が強いと、痛みが出て、食事が摂れなくなります。
いちばんつらいのが、口の中の痛み
口の中の水疱や潰瘍の痛みのピークは熱のピークより遅くきます。発熱当日よりも、翌日以降が痛いということになり、水疱や潰瘍は、口蓋垂(のどちんこ)の周囲や扁桃腺あたりにできることが多いです。
口の中の水疱や潰瘍に食事があたってしみるので食べられないのです。痛みのためにつばを飲み込むのもつらく、よだれがあふれて出る子もいます。
食材では、とくにトマト、フルーツジュースなどの酸味のあるものだとよりしみますし、うどんなどのだし汁でもしみることがあります。
やわらかい、のどごしがいいというだけでは食べられません。パンやケーキなども、かんでいるうちにかたまるので、飲み込もうとすると水疱や潰瘍のきずにあたって痛いのです。
こういう患者さんを診たときは、できるだけママ・パパにも一緒に口の中の様子を診てもらいます。真っ赤になったのどを見てびっくり。「これじゃあごはん食べられないねえ、痛いね~」と納得するママ・パパが多いです。
秘策はあるのか、きずにやさしい食べ物は?
それでは、何が食べられるのでしょうか。どうしたら脱水症を防げるのでしょうか。実は、冷たいもの、甘いものは、刺激が少ないものになります。具体的には、幼児ならアイスクリームやプリンなどがおすすめめです。
ヘルパンギーナにかかっても多くの子は、これなら食べられます。この作戦は手足口病や口内炎にも使えます。
体調を崩しているときですから、糖分などを気にしすぎず、食べられるものを食べさせることが大切です。
ママ・パパが「この子はアイスばかり食べるんです」と、不満げに言うときもありますが、その子の本能か、感がいいのか、何が食べられるかを自分で探し出せる子もいます。
痛みの極期はこういう食材でしのぐしかありませんが、数日で痛みは軽くなります。水疱や潰瘍がまだ赤く見えていても、飲み込めるまでに復活しています。こうなるともう心配無用。いつもの食材をパクパクと食べることができます。
今年は、乳児の患者も増えています。母乳はそのまま飲ませるしか方法がありませんが、ミルクは普段より温め(ぬるめ)にしたほうが飲みやすい子もいるようです。
文・監修/太田文夫先生 構成/たまひよONLINE編集部
熱があり、さらに食べたり飲んだりできないと機嫌が悪くなる子どもも多いでしょう。太田先生は「ヘルパンギーナの大流行のピークはもうすぐ過ぎるでしょうが、毎年夏に流行るヘルパンギーナや手足口病に今回紹介した秘策を覚えておいて損はない」と言います。
●記事の内容は2023年7月の情報であり、現在と異なる場合があります。