約9人に1人の子どもが貧困の日本。日本中の親子へ支援の手を広げたい…!悩みに寄り添う専用チャットを開設【「子育てのミライ応援プロジェクト」エントリー団体の活動紹介1】
これからの子育ての未来を広げるために、現在たまひよでは「子育てのミライ応援プロジェクト」を実施中。生み育てやすい社会の実現に向けて頑張る3つの団体の活動に対して、ママやパパに投票してもらう取り組みです。本日は、エントリー団体の1つである認定NPO法人 フローレンスの担当の方に、活動の誕生秘話をお話してもらいます。
社会で子どもを育てよう。日本の親子に伴走して19年
私たち認定NPO法人フローレンスが生まれたのは2004年。「子どもの看病のために会社を休んだら、解雇されました」。そんな切実な声がきっかけになり、私たちの原点である「病児保育事業」がスタートしました。
それ以来、障害があるお子さんでもお預かりできる保育園をつくろう。保育園に入れない待機児童がいるなら、小規模保育園をつくってお預かりしよう。経済的に余裕がないご家庭には、継続的に食品をお届けすることで接点をつくりだそう……。そんなふうに、親子にまつわる社会的課題によりそい、伴走しながら19年間を歩んできました。
活動の根っこには、「子どもは社会で育てる」をあたりまえにしたい、という思いがありました。子育ては親だけでは担えない、一大プロジェクトです。すべての親子が、誰かを頼ったり頼られたりしながら、自由に挑戦できることがあたりまえになる社会を私たちは目指しています。
今回「子育てのミライ応援プロジェクト」にエントリーした「ハイブリッドソーシャルワーク」は、そんな私たちの19年間の経験と知恵、そして最新の技術がめぐりあい、日本中の親子へ支援の手を広げる活動です。なぜこのような形の支援が必要だったのか。それには深い理由があってのことでした。
家庭の困りごとは「出しづらい、見えづらい、聞きづらい」
私たちは19年間事業を続けてきたなかで、たくさんの「困りごと」を抱えたご家庭に出会ってきました。病気、障害、虐待、暴力、貧困など、要因は本当にさまざまです。さらにその困りごとが複雑化、長期化しているご家庭ほど、「SOS」が出しづらくなっている。そんな事実に直面しました。
例えば、「経済的に追い詰められているけれど、DVから逃げているので市役所に助けを求められない。困っていることを知られたくない」。そんなケースは、課題がいくつも重なりすぎて、解決の糸口が見つけられなくなっています。
そうしたご家庭が「匿名で、すぐにでも、難しい手続きなしに、ご自宅にいながら、時間を気にせずに」声を上げられるかたち。そこで行き着いたのが「LINE」を使ったチャット相談でした。相談に乗るのは福祉の資格を持った相談員(ソーシャルワーカー)。それが「おやこよりそいチャット」です。
「おやこよりそいチャット」は、2021年8月から、神戸市と「BE KOBEミライPROJECT」の協力を得て、神戸市で開始しました。2023年5月には山形市でも展開され、登録者数は同年4月までに全国で6,260世帯に上っています。最近では、仙台市で、人工呼吸器やたんの吸引などが日常的に必要な医療的ケア児がいるご家庭に向けた相談事業も開始しました。
必要な支援を考えるにはまず、相手を知ることから
「ご相談にのります」と言っても、内容は世間話でも質問でも構いません。大切なことは、相談員とご家庭とが「継続的につながり続ける」ことです。どんな人でも、よく知らない相手に心の中にあることを打ち明けるのはハードルが高いもの。困りごとを抱えた方ならなおさらです。
私たち一人ひとり、ご家庭それぞれに、まさに千差万別の個性があります。困りごと、ご相談もしかり。問題の中心にあるのは何なのか、どのような支援がふさわしいのか、今は見守りを続けた方がよいのかそれとも別の方法はないか……。
相談員たちは日々、専門的見地から判断し、ときには訪問支援をしたり、市役所など自治体の支援窓口につないだり、対面での支援も交えながらお付き合いを続けています。チャットでも対面でも手をさしのべることができる。そんな意味を込めてこの活動を「ハイブリッドソーシャルワーク」と呼んでいます。
現在日本では約9人に1人の子どもが相対的貧困に陥っています(※) 。困りごとを抱えたご家庭が、社会に対して固く扉を閉ざしてしまうことで、さらなる悲劇が起こらないために、私たちは歩みを進めていきます。さらにそうしたご家庭を生み続けてしまう社会構造に対しても、事業者として、そして変革者として声を上げ続けていきます。
※出典:厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査(所得水準などに照らして、貧困の状態にある18歳未満の子どもの相対的貧困率は11・5%)
文/酒井有里(認定NPO法人フローレンス) 構成/たまひよONLINE編集部
【10/2から!ぜひ投票にご参加ください】
「子育てのミライ応援プロジェクト」では、ほかにも、妊娠育児の社会課題に取り組む団体をご紹介しています。妊娠中・0歳1歳のママパパのみなさま、「これからの子育ての未来を広げる」ため、ぜひ応援したいと思う活動や団体に投票をしてください。投票は10/2(月)からスタートの予定です♪
プロフィール
◆認定NPO法人フローレンスについて
こども達のために、日本を変える。フローレンスは未来を担う子どもたちを社会で育むために、事業開発、政策提言、文化創造の3つの軸で、社会課題解決と価値創造をおこなう国内最大規模のNPOです。 日本初の訪問型・共済型病児保育事業団体として2004年に設立し、ひとり親支援と子どもの貧困防止、子どもの虐待や親子の孤立防止、障害児家庭支援など、日本の子ども・子育ての領域で総合的な活動をおこなっています。
待機児童問題解決のための「おうち保育園」モデルが、2015年度に「小規模認可保育所」として国策化されたほか、障害児に専門的に長時間保育を提供する日本初の「フローレンスの障害児保育・支援」や、子どもの虐待問題解決のため「フローレンスのにんしん相談・赤ちゃん縁組」、子どもの貧困を解決する「こども宅食」などの取り組みを全国で加速しています。 たくさんの仲間と共に、社会に「新しいあたりまえ」をつくるNPO法人です。
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※記事の内容は2023年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。