地域を盛り上げる一助にもなりたい。「ベビカル」は子育て世代を中心に、さらに他の世代にも必要なサービスへ
子どもを産み育てやすい社会の実現に向けて頑張る団体を「たまひよ」がピックアップし、子育て世代の投票で応援する「子育てのミライ応援プロジェクト」。2024年10月に行われた投票で、“予約ができる、外出先でのベビーカーレンタルサービス”の「ベビカル」が見事1位に。「ベビカル」を運営するジェイアール東日本企画の森 祐介さんと伊左治 萌さんに1位に選ばれたことへの思いをはじめ、「ベビカル」を通じて解決したい日本の課題をうかがいました。
1位を獲得したことで、社内で応援してくれる人が増えるように
――「子育てのミライ応援プロジェクト」で応援投票1位を獲得した時の心境を教えてください。
森さん(以下敬称略) 意外でした。横浜で行われたイベント「たまひよ ファミリーパーク 2024」に出展した際「いつも使っています」「『ベビカル』に投票しました」など、お客様から生の声をいただいてはいました。ただ他の団体さんはたくさんのスタッフで参加されていたのに、うちは僕含め2人だけでの参加でしたからマンパワーに圧倒されていたのが正直なところで。嬉しい結果をいただいて驚いたのが正直なところです。
――1位になったことで社内からの評価も変わりましたか?
森 1位をいただいたことで社内でも得意先に紹介したいとか、紹介したい企業があるとか、ありがたい話をもらうことが増えてきました。
こんな用途でベビーカーを!? サービスイン前の実証実験で知った意外だったこと
――2021年4月にサービスインしてから今までを振り返っていかがですか?
森 サービスを開始して3日後に新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が発令されて、お出かけする人が激減し、2022年10月頃まではずっと苦戦していました。現在は順調に伸びていますが、当初は3人チームで、今は4人と相変わらず少人数で運営しています。営業も事務対応もお客様対応も、ベビーカーが壊れたら直しに行くし(笑)。元駅勤務で弊社に出向している女性社員は、弊社オフィスが恵比寿なのでキラキラOLになるつもりだったらしいのですが、実際はドライバー持ってベビーカーを修理しに行っている。「こんなことまでするんですか!?」って結構言われています(笑)。
大企業だと分業制になることが多く、各分野のエキスパートになっていきます。ただ社内新規事業ではじめた事業なので、「ベビカル」チームは小規模な会社のように、一人がいろいろなことを担当できるのがいいと思っています。メンバーがどう考えているのかは、わからないですけど(笑)。
伊左治さん(以下敬称略) 私は前職で営業でしたが、今は新幹線型ベビーカーを個人のお客様向けに販売するECの立ち上げを担当しています。サイトの立ち上げ・構築、物流を含めたオペレーション、納品された商品の管理・出荷という一連のシステム構築まで担当しています。経験のない業務なので手探りの部分もあって大変ではあるものの、いろいろな挑戦ができる今の方がやりがいも感じて楽しいです。
――「ベビカル」に関わることで最も思い出深いエピソードを教えてください。
森 「ベビカル」が新規事業として事業化審査を通過した後、2度実証実験を行っています。1度目は、立川駅の改札にベビーカーを5台並べたら、人はどんな反応するのか、無償で貸し出す実験を2019年の夏にしました。
最初借りてくれたのは、遠方から立川にあるお墓へお参りに来た家族。お墓まで遠いのでベビーカーを使いたい、と。そうかこういうニーズもあるのかと印象深かったです。アンケートを取ったりする定量調査は実証実験より簡単ですけど、現場で声を聞いた方が実態を掴めますよね。お墓参りが理由でベビーカーを借りたいなんて答え、定量調査だと結果に現れないですよね。実証実験では 3日間で20人ほど使っていただきました。そこで「ベビカル」の事業はいけるかも、って思いましたね。
外出が大変な方々向けの2次交通サービスとして地域の課題も解決したい
――今後力を入れていきたいのは、何でしょうか。
森 今(2024年12月)、「ベビカル」の貸出箇所は240箇所超ありますが、当初、2024年3月までに320箇所にするのが目標でした。ご要望もいただいているのにまだ設置できてない場所がたくさんあるので、今はスポットを増やすことが当面の目標です。
またチャイルドシートや車椅子といった他の移動用アイテムの貸出もしており、ベビーカー以外でもお役に立ちたいと考えています。
自治体さんと一緒に課題を解決していくことにも取り組んでいます。子育て世代に喜んでほしいというお声をよく聞きますので、まずはその地域に家族連れに遊びに来てもらうためにどんなサービスできるかが一つ。もう一つの課題が観光地としていかに活性化させられるのか、です。例えば、今は日帰り観光の方が大けど、1泊してもらえるようにしたいというようなご相談をいただいたりしています。データなども応用しながら「ベビカル」を通じて解決する方法を模索しています。
――子育て世代を中心に、さらにそれ以外の方にも活用してもらえるサービスとして、今後「ベビカル」をどう育てていきたいですか?
森 「ベビカル」は口コミと検索で見つけてご利用いただくお客様が多いです。お客様が求めている場所にベビーカーの貸し出しスポットがあれば自然と使われるでしょうし、知ってもらえるサービスだと信じています。地道に周知して育てていければと考えています。
「ベビカル」が掲げているのは「子供とのお出かけをもっと自由に」です。今後は子育て世代を中心にさらにその周りの人たち、地域まで巻き込んで、「お出かけの自由」を提案していきたいです。
新幹線のベビーカーを前にした時のお子さんの笑顔が癒やし
「ベビカル」のサービスは駅や施設などで利用することができます。「ベビカル」のスポットを設置している「駅たびコンシェルジュ新宿(新南)」の井出さんと松井さんにもお話を聞きました。
――駅たびコンシェルジュ新宿(新南)は2022年10月から「ベビカル」のスポットを設置されています。お客様の反応はいかがしょうか?
井出さん(以下敬称略) 休日の朝9〜10時ぐらいの時間帯からお借りになって、そこから2時間程度か、夕方まで使われるご家族が多い印象です。新宿に遊びに来たご家族が利用してくださっているんでしょうね。
駅たびコンシェルジュ新宿(新南)は主にインバウンドのお客様を対象にした店舗のため、外国の方の利用も多いです。事前に予約されている方もいらっしゃいますが、チケット購入のために並んでいる間に「ベビカル」の存在を知って、その場で会員登録して利用される方もいらっしゃいます。海外の方は滞在中の数日に渡って借りられることが多いです。
ーー利用者の反応はいかがでしょうか?
松井さん(以下敬称略) 新幹線デザインのベビーカーを出してくると子どもたちは喜んでくれますね。新幹線モデルのベビーカーを借りたお客様から「他の家族連れの方から『子どもが新幹線のベビーカーに乗りたいんですけど、どこで買えますか?』と尋ねられた」と、おっしゃる方がいらっしゃいました。
――今後「ベビカル」のスポットとして挑戦したいことはありますか?
松井 新幹線のベビーカーを前にした子どもたちの笑顔に本当に癒やされるんです。現状は1種類だけご用意しているので、こまちやかがやき、はやぶさなどいろいろな種類を用意して、お客様が選べるようにすると鉄道好きのお子様にもっと喜ばれる気がしています。
■駅たびコンシェルジュ新宿(新南)
「駅たびコンシェルジュ」は、JR東日本の駅にある観光情報発信や各種旅行相談を行う拠点です。「駅たびコンシェルジュ新宿(新南)」は主に訪日旅行のお客さまをサポートする店舗です。JR新宿駅の新南改札を出てすぐのところにあります。
営業日:年中無休
営業時間:8:00~19:00(ベビカルの営業時間は9:00~18:00)
取材・文/たまひよONLINE編集部
撮影/川本史織
プロフィール
「株式会社ジェイアール東日本企画」jeki-X部長 森 祐介さん
2002年株式会社ジェイアール東日本企画入社。イベント・キャンペーンを担当する部署でスポーツイベントやキャラクター関連業務を担当した後に、不動産デベロッパーの担当営業として商業施設の販促に従事。現在は、新規事業開発部門で新規事業の企画推進を担当。プライベートでは、反抗期の中2とゲームにしか興味のない小4、イヤイヤ期の2歳の3人の男児を子育て中。