0歳から大人のような大きないびきがあった娘。3歳で「睡眠時無呼吸症候群」と診断され手術治療に【体験談】
イラストレーターのABEKAさん(35歳)は、都内で夫と娘のこころちゃん(仮名・4歳)と暮らす3人家族。「こころちゃんのいびきは0歳のころから気になっていた」とABEKAさん。こころちゃんは3歳で「睡眠時無呼吸症候群」と診断され、2023年7月に扁桃腺切除の手術を受けました。病気の症状や、手術が決まるまでのことについてABEKAさんに話を聞きました。
生後5カ月ごろから続くいびき。寝起きは毎朝不機嫌だった
妊娠38週の正期産で、3254g、50cmで生まれたABEKAさんの長女こころちゃん。生後5カ月のころからから眠ると大人のようないびきをかいていたそうです。
「娘は生後5カ月になって夜にまとめて寝るようになったころから、大きないびきをかいていたと思います。『あ、眠った』という感じで寝たタイミングがわかりやすいし、おじさんみたいでおもしろいな、程度にしか思っていなくて、夫も私もとくに気にはしていませんでした。初めての子育てで、赤ちゃんも寝るといびきをかくんだな〜と、自然なことだと思っていました」(ABEKAさん)
こころちゃんは、その後もひと晩中いびきをかいている状態が続き、2〜3歳のころになると夜中に息苦しさで何回も目覚めるようになりました。
「思い返すと、成長するにつれ、いびきで呼吸が少し止まることが目立ってきていたように感じていました。あお向けで寝ていると苦しくなるようで、自分で横向きに寝るように体の向きを変えているようでした。
また、娘は寝起きがいつもすごく不機嫌でした。朝起こそうと声をかけるだけでも『いやだ!』と暴れて会話が成り立たない状態になるので大変です。朝、起こしてからは15~30分程度のアニメなどの動画を見せて、機嫌が少しよくなってから食事や着替えなど朝のしたくの声がけをしていました」(ABEKAさん)
こころちゃんが3歳を過ぎたある日、ABEKAさんの夫がX(旧Twitter)で、ある耳鼻科医による投稿を見つけました。「いびきをかく子どもは高確率で睡眠時無呼吸症候群である」というものです。
「夫から送られてきた投稿を見て驚きました。すぐに睡眠時無呼吸症候群について調べると、“子どもは扁桃腺(へんとうせん)やアデノイドが大きいことが原因でのどがふさがれて、睡眠時にいびきをかいたり無呼吸になることがある”ということや、“成長発達の大事な期間に十分な睡眠が得られないため、放置すると将来的に身体の発達と学力の伸びに問題が出ることが”などの情報が見つかりました。
そんな病気があることも知らなかったし、それまで風邪などで耳鼻科を受診しても扁桃腺が大きいと指摘されたこともありませんでした。これは大変だ、と思いすぐに睡眠時無呼吸症候群の専門医がいる耳鼻科を探しました」(ABEKAさん)
専門外来を受診。特別な器具で、睡眠時の状態の検査も
調べたところ、偶然にも赤ちゃんのころから通院しているクリニックで無呼吸症候群専門の外来があることがわかりました。
「夫から送られてきた情報を見た数日後には、娘は耳鼻科を受診することができました。耳鼻科で、鼻から入れる細長いカメラのような検査器具でののどの様子の診察の結果、扁桃腺が普通の子よりかなり大きく、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと言われました。さらに睡眠時の酸素量を調べる検査をする必要があるということで、自宅に検査キットを送ってもらい数日間データを取ることになりました。その検査は、子どもが夜寝るときに鼻にカニューレというチューブのようなものをつけて睡眠時の酸素量の状態を調べるものです。ただ、娘はそのチューブを鼻につけるだけでもものすごく嫌がったので、データを取るのに苦労しました。娘がぐっすり寝たのを見計らって、鼻にそーっとチューブをつけて、なんとか数分のデータを取りました。
その結果を持って再度受診したところ、やはり無呼吸があると確認できたため睡眠時無呼吸症候群だと考えられる、とのことでした」(ABEKAさん)
睡眠時無呼吸症候群というと、一般的には肥満や喫煙などが要因となる大人の病気というイメージがありますが、子どもの場合、多くは扁桃腺やアデノイドの大きさが原因のケースが多いそうです(※)。
「人によっては成長にともなって扁桃腺の大きさは落ち着いて、無呼吸も状態も落ち着いてくることもあるそうですが、3〜7歳という重要な発達期間に無呼吸の症状があると、成長に影響を及ぼすこともあるのだそうです」(ABEKAさん)
検査のチューブをつけるのも嫌がった娘。選んだ治療法は?
耳鼻科の医師から提示された治療法の選択肢は二つ。一つは、毎晩就寝時にマスクを装着して空気を送り込むことによって、ふさがっている気道を開くCPAP(シーパップ)という治療法。もう一つは扁桃腺除去・アデノイド切除の手術をする方法でした。
「娘は検査のためのチューブをつけるだけでも嫌がるほどで、毎晩マスクをつける治療は現実的ではありませんでした。それに、娘のいびきは一時的な症状ではなく、赤ちゃんのころからずっと続いていたので迷わず手術をする治療法を選びました。扁桃腺を切除すると免疫が落ちないのか心配でしたが、先生の話では扁桃腺やアデノイドを摘出する手術を行っても、免疫が下がるといった心配はないとのことでした。
そこで、手術ができる大学病院への紹介状を書いてもらうことに。手術前までの並行治療として病院からアレルギー用の点鼻薬と飲み薬を処方されました。扁桃腺の腫れはアレルギーが原因のこともあるためです。そのほかに、娘が夜間に呼吸がつらそうなときは、少しでも紛れるように市販の呼吸がラクになる塗り薬を胸に塗っていました」(ABEKAさん)
こころちゃんはその後、2023年の2月に大学病院を受診し、6月に手術を受けることになりました。
「娘が受けた手術は、アデノイド切除術、口蓋扁桃腺摘出術です。アデノイドは鼻のいちばん奥のほうにある扁桃腺で、空気の通り道で邪魔になっている部分のみを切除するとのことでした。さらにのどの奥のほうにある扁桃腺の左右二つともまるごと摘出する手術だということです」(ABEKAさん)
子どもにわかりやすく伝えようと、絵本を作った
大学病院で手術を受けることが決まると、看護師さんに『入院や手術についてお子さんによく説明してください』と言われたというABEKAさん。しかし、「どう説明すればいいのか戸惑った」のだそうです。
「私自身も子どもの手術は初めての経験です。『どう説明すればいいですか?』と聞いてみたら、看護師さんもちょっと首をかしげて『娘さんがいちばんわかりやすい伝え方で話してあげてください』と・・・」
子どもがわかりやすい方法・・・と考えて、ABEKAさんの頭に真っ先に思い浮かんだのが絵本の読み聞かせでした。
「調べてみると、入院や手術、病院をテーマに描いた絵本は意外とあることがわかり、それらを毎日読み聞かせることから始めました。それだけでも娘は病院に対してかなりポジティブにとらえてくれるようになったと思います。
でも、絵本の内容は少し古い情報もあって、もっと娘が実際に受ける医療の内容にあった絵本を読んであげたい、と思ったんです。それなら自分はイラストレーターですから、絵本を作ってみよう、と決意しました。
娘の体のどこが悪くて、何を治すのかといった自分の状況を理解してもらうこと、これから娘の身にどんなことが起こるかといった入院・手術・退院の流れ、周囲の人たちはみんないい人で娘の味方だ、ということ。これらを少しでも理解してもらうことを目的に絵本を作りました」(ABEKAさん)
ABEKAさんが作った絵本をこころちゃんはとっても気に入り、毎日読み聞かせてたことで、手術を楽しみにわくわくしてくれるようになったそうです。
お話・イラスト/ABEKAさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
「夫がSNSで子どもの睡眠時無呼吸症候群の情報を見つけなかったら、きっと今も知らないままだった」とABEKAさん。小さな子どもも鼻風邪をひいているときなどにはいびきをかくことがありますが、日常的にいびきをかいて寝ているようなら、注意が必要かもしれません。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年8月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
ABEKAさん(あべか)
PROFILE
イラストレーター。1988年宮城県生まれ。東京在住、1児の母。子ども、ファミリーに向けたイラスト制作・まんが制作・キャラクター制作を行う。