【耳鼻科医が解説】「鼻血が出たらティッシュを詰め込む」「チョコレートを食べすぎると鼻血が出る」は、ウソ?ホント?
鼻を強くぶつけたわけでもないのに「子どもの鼻から唐突に血が出て驚いた」という経験があるママ・パパは少なくないでしょう。子どもが突然鼻血を出したら、親はどうケアしたらいいのでしょうか。子どもの鼻血の原因や出たときの対処法、受診の目安について、自身のYoutubeチャンネル「はるか耳鼻咽喉科」で医学情報をわかりやすく発信している、耳鼻科医の中西悠先生に聞きました。
子どもの鼻血は、ほとんどは自分自身の行動が原因
子どもが鼻を強くぶつけたわけではないのに、突然鼻血を出した場合、ママ・パパは原因がわからなくて戸惑ってしまうことも。チョコレートなどの食べ物が原因で鼻血が出ることもあるのでしょうか。
「鼻血とは、鼻の穴から出てくる血の総称で、ほとんどの場合、鼻の粘膜が傷ついたことによる出血です。『チョコレートやアーモンドをたくさん食べると鼻血が出やすい』と耳にすることがありますが、医学的根拠はありません。
未就学児~小学生の子どもに限れば、鼻血の原因は、自分で鼻を触った刺激によるものがほとんどです」(中西先生)
一般的に、子どもが自分で鼻の穴に指を入れられるようになるのは1歳前後といわれているようです。そのころに鼻血を出す子が多くなるのでしょうか。
「たしかに1歳くらいから鼻の穴に指を入れる子が出てきますが、それと同じ時期に鼻血を出す子が急に増えるかというと、そうではありません。個人差はありますが、繰り返し鼻を触るくせがついてくる3~4歳ごろから鼻血を出す子が増えてくる印象です。鼻を頻繁に触ると粘膜がこすれ、出血しやすくなりますし、せっかくかさぶたができてもはがれることを繰り返しがちだからです。乳幼児から小学校低学年の子は大人よりも顔がかなり小さく、鼻の穴自体も小さいです。そのため、指が入る範囲も入り口の同じ部分にかたよりがちで、そこから出血することが多いです。
鼻を触る理由は子どもによってさまざまです。単純にくせの場合もありますし、かゆみや鼻詰まりが気になって触ることもあるでしょう。また、子どもはおもしろがって鼻の穴に指を入れてしまうこともよくあるもの。ただ、未就学児に触らないほうがいいよと言ってもまだ理解できないんですよね。そのため、鼻を刺激して鼻血を出すことを繰り返してしまう子もいます。個人差もありますが、指導して効果が出るのは小学校に入ってからくらいでしょう」(中西先生)
子どもが鼻血を出したら、「上を向かせる」「ティッシュを詰め込む」どちらも必要なし
子どものころに鼻血を出して、血で服や床が汚れないように「上を向いて!」と言われたり、鼻にティッシュを詰めたりした経験のあるママ・パパもいるのではないでしょうか。また、鼻血が出たときの対処法として、「首の後ろをトントンたたく」などの方法を聞いたことがある人もいるかもしれません。
「鼻血の対処法は圧迫止血が基本です。子どもの鼻の穴の前方部分を両側からしっかりとつまむように持ち、10分ほど待ちましょう。それでほとんどの場合、血は止まります。前方部分を押さえるのは、鼻血の9割はその部分から出ているためです。血管がたくさん集まっていて、指で触るのはだいたいそこに集中するんですね。
上を向かせると鼻血がのどに流れてきて気分が悪くなることも。可能なら椅子などに座らせ、少しうつむき加減で鼻をつまむといいでしょう。きちんと止血すれば、血がたれることはないので、鼻の穴にティッシュを詰め込む必要はありません。『首の後ろをトントンたたく』というのは、なぜそのようなことが鼻血のケアとして広くいわれているかわかりません。とくにする必要はないです」(中西先生)
受診は必要ないことがほとんど。心配なら医師に相談しても
子どもが突然鼻血を出した場合、受診したほうがいいのか迷ってしまうママ・パパもいるでしょう。
「鼻血は大量に出ているように見えても、命にかかわることはほぼありません。あわてなくても大丈夫。ママ・パパは、まず落ち着くことが大切です。止血ができれば、とくに受診する必要はないでしょう。ただし、鼻血が頻繁でママ・パパが不安に思っている、子どもが『鼻がかゆい』などと訴え、しょっちゅう鼻を触って鼻血が続いているなどの場合は、医師に相談することをおすすめします」(中西先生)
医師に相談した結果、治療が必要になることはあるのでしょうか。
「『とくに心配はありません』と伝えることが少なくないです。
ただ、アレルギーが一因の場合は、治療で改善を試みます。今は小学生の半分近くが何かしらのアレルギーを持っているといわれています。アレルギーのある子全員が必ずしも鼻を触るわけではないですが、アレルギー性鼻炎の鼻詰まりやかゆみから鼻を触って鼻血が出ている子もいます。その場合、アレルギーの症状をやわらげる薬を処方することで、鼻に手が行くことが減り、鼻血の改善につながることも。もっとも、アレルギーは10歳ぐらいになるまでにどんどん変化もしていくので、継続的に見ていく必要はあります。
また、治療が必要ないときも、私は『毎日の食事でまんべんなくいろいろな野菜を食べてくださいね』とアドバイスをしています。本来、健康な体には止血に必要な成分は十分ありますが、鼻血が多いときは、出血をおさえたり、体の調子をととのえたりする効果があるビタミンCを豊富に含む野菜を意識して摂取してほしいと思っているからです。『鼻血ぐらいで病院に行ってもいいの?』と遠慮せずに、心配なときは医師に相談するといいでしょう」(中西先生)
監修/中西悠先生 取材・文/永井篤美、たまひよONLINE編集部
子どもが鼻血を出したら、あわてず正しい方法で止血することが大切です。「よく鼻血を出すタイプの子もいます。私も小学生のときは、毎朝顔を洗うときに日課のように鼻血を出していました。ただ、成長してからもずっと出続けるという子はほぼないので、あまり心配することはありません」と中西先生。栄養バランスのいい食事にも気を配り、心配な点があれば、遠慮せずに医師に相談しましょう。
中西悠先生(なかにしはるか)
PROFILE
医学博士。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本抗加齢医学会認定専門医(アンチエイジング)認定補聴器相談医。宮崎大学医学部卒業。宮崎大学耳鼻咽喉科を経て2017年より耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院医員、2019年よりその分院のはるか耳鼻咽喉科院長。自身のYouTubeチャンネルで、医学情報をわかりやすく発信している。
●記事の内容は2023年9月の情報であり、現在と異なる場合があります。