ついにインフルエンザ流行期に突入。子どもにはNGな解熱剤があるって知っていますか?【小児科医】
新型コロナやインフルエンザ、アデノウイルスなど、高い熱が出やすい病気が流行っています。
「高い熱が出ると、このまま下がらなければどうかなってしまうのではないかと、何とか熱を下げたくなりますが、子どもには使わないほうがいい解熱剤もあります」と小児科医の太田文夫先生は注意喚起をしています。とくにインフルエンザ流行期には気をつける必要があるそうです。「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」連載の#38です。
解熱剤を効果的に使うにはどうしたらいい?
熱が高くてつらい、食欲がない、ぐっすり眠れないときなど、熱が下がれば楽になりつらい症状が改善されることがあるので、解熱剤が処方されることがあります。でも、解熱剤の効果は一時的でしかありません。
また、生後6カ月以下の乳児には、原則として解熱剤は処方しません。低体温症を起こすリスクがあるからです。
解熱剤には、シロップ、粉薬、坐薬などの種類があります。
私のクリニックでは低年齢の子どもには坐薬を使うことをすすめています。熱が高く上がるのは夜間が多いので、寝ている子どもを起こしてシロップや粉薬を飲ませる大変さよりも、おむつをはずしておしりに坐薬を入れてしまえば済んでしまうので、保護者にとっても子どもにとっても負担が少ないと考えているからです。
解熱剤を使っても熱が下がらないことも
熱が上がっている途中は薬の効果が表れにくいので、解熱剤を使っても熱が下がらないときもあります。
体温計では高熱を示していても、手足が冷たいとき、悪寒で震えているときは、まだ熱が上がっている途中です。こういうときは、子どもがつらそうな様子でも使うのを少しがまんして、様子を見て、熱が上がりきってから使うと熱が下がります。ちょっとがまんして、あわてず騒がず、効果が出るタイミングで使いましょう。
子どもにはアセトアミノフェンを
熱を下げる薬にはいろいろな薬剤がありますが、子どもは大人と同じようにいくつもの種類を使えるわけではありません。
小児に安全に使えるとわかっている薬剤はアセトアミノフェンです。
コロナワクチン接種後の痛み対策にも使えると説明されていた薬ですので、ママ・パパで使われた人も多いのではないでしょうか。
インフルエンザ脳症を起こさないために
解熱剤の薬剤の中には、インフルエンザ脳症の発症と関連が疑われているため使わないようにと厚生労働省、小児科学会、小児神経学科などから要望や通知が出されているものがあります。
小児科医や薬剤師さんならだれでも知っているかと思うのですが、ママ・パパも知っておいてほしいと思います。
これらのことは、インフルエンザ脳症の発症原因の調査でわかったことで、大きな話題になったのは2000年のことです。ある種の薬剤を解熱剤として使うことでインフルエンザ脳症を起こすことが増える、ということがわかったのです。インフルエンザの感染から脳症を起こすことが大人より多い子どもたちには普段からそれらの薬剤は使わないようにと警鐘が鳴らされました。その見解は今でも変わっていません。
最近、私のクリニック近くの調剤薬局の薬剤師さんが、4歳児に解熱剤として処方されるはずがないと思っていた薬剤(ポンタール®)が処方されていた履歴を見つけ、「子どもに処方されているけど、大丈夫になったんですか?」とびっくりして相談に来ました。
実は、当院の病児保育室で預かった1歳児のお薬手帳でも同じことを見つけたばかりでした。しかも、調剤薬局の薬剤師さんが見つけた4歳児とは異なる医療機関の処方だったのでより深刻だと感じました。不適切な処方が1カ所の医療機関だけではないという現実に悩みました。
なぜ、小児に推奨されていない薬が処方されたのか
最近いろいろな薬剤の不足が起きています。アセトアミノフェンもその中に含まれているそうです。そのためか、「アセトアミノフェンが手に入りにくいなら、違う薬でもいいかな」と、小児の医療には詳しくない医師が、軽い気持ちで処方したのかもしれませんが、間違った処方です。
とくに、今がインフルエンザ流行中ということもあり、解熱剤の処方が増えていることが想像できます。小児に使わないほうがいい薬剤があるということをママ・パパとも共有したいと考えて、ここで発信したいと思います。
小児の解熱剤には使わない薬剤とは?
メフェナム酸(ポンタール®など) ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®など)サリチル酸系医薬品(アスピリン系、サリチル酸系)、幼児用P L配合顆粒(2歳未満禁忌)などです。ここにあげた薬剤は、子どもには処方しないように厚生労働省も通知を出しています。
調剤薬局で薬剤師が気づけば、通常は、安全性を確認するために処方理由を医師に問い合わせしますが、ママ・パパも処方された薬が今までに出たことがない薬の場合は、薬局で安全な薬か確認しましょう。
上に紹介した薬剤でも、子どもの治療に使うことがあります。解熱剤としては使わないということです。これらの薬剤を使用が必要な際には主治医から説明があるので、使用する目的をよく聞いて理解してください。
安全に治療をするために、適切な量や、使うタイミングや、この病気にはこの薬なら安全に使えるということだけでなく、もし処方されていても使うことがすすめられていない薬剤もあるという知識を持っておきましょう。
構成/たまひよONLINE編集部
「熱が高くなるのは心配ですが、治療目的で使った薬剤が別な病気を引き起こすことはあってならないこと」だと太田先生は話します。『子どもの解熱剤はアセトアミノフェン』と、覚えておいて、気がかりがあったらしっかり質問をしましょう。
●記事の内容は2023年10月24日の情報であり、現在と異なる場合があります。