子どもにどう伝える? プライベートゾーンのひとつ “口” について考えてみよう【ママ泌尿器科医】
最近5歳の息子が口と口のキスをしたがります。保育園で流行っているのかもしれません。
一度、「やったー!ママ嬉しい~」とつい喜びの表現をしたところ、それ以降「ママ好きだから、チューしてあげる」と頻繁にキスしてくれるように。
それを見た2歳の娘も「チュ~」と口をとがらせて真似をします。かわいい子どもからのキスは嬉しいばかりなのですが、性教育上どうなのかな・・・と悩みます。
今回は子どものキスについて、どう対応するのがよいか考えてみたいと思います。
「お母さん・お父さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医連載第41回です。
キスの持つ意味
自分の身体の中でも「性」に関する、特に重要な部分であるプライベートゾーンには胸、性器、お尻の他に口も含まれています。
とはいっても、口は普段食事や発声、呼吸をしたりするための役割が主で、胸や性器のように衣類で隠されているわけではなく、プライベートレベルは低めに設定されているように感じますよね。
ひとくちにキスと言っても、口と頬なのか、口と口なのか、口と性器なのかによってその意味や関係性はガラリと変わります。
口と頬であれば家族や友人との愛情の表現手段として、あいさつ代わりに行う文化の国もあります。口と性器は文句なしの性行為ですね。
口と口はどうでしょう・・・これが一番難しい。
では、法律的にはどうでしょうか。
相手の同意のない状況でキスをしたら、不同意わいせつ罪(法改正により「強制わいせつ」から「不同意わいせつ」となった)で刑事罰を受けることもあります。つまり、キスは、性欲や性的な羞恥心に関連した行為と言えそうです。
そうなるとやはりキスの前には、しっかりとお互いの同意を確認するのは必要不可欠ということになりますね。
わが子とのキス、子ども同士のキス
次に、医学的にはどうでしょう。
キスで性感染症にかかることはあるでしょうか。
可能性はそれほど高くありませんが、梅毒やヘルペスは口同士のキスでうつることがあります。また口と性器の接触によりクラミジア・淋菌が咽頭(のど)に感染することはよく知られています。(症状が出ないため気付きにくいのが問題です)
つまり、法律的にも医学的にも、キスは他の性行為同様リスクや責任が発生する行為だということが分かります。
子どもからキスをされたら、可愛くて嬉しくてつい受け入れてしまいます。子ども同士のキスはほほえましくスルーしがちですし、何より保護者がわが子のかわいい寝顔につい・・・ということも。
「キスは『大好き』の気持を表現する素敵なことだけど、嫌な気持ちになる人もいるし、必ずお互いの気持を確認してからしようね」ということを子どもには伝えていきたいですね。
また、性暴力としてのキスを「愛情表現」として違和感を感じずに受け止めてしまうことがあるかもしれません。性犯罪者から身を守るためにも、「〇〇くん/ちゃんにキスをしたがる人がいたら必ず教えてね」ということも伝えていきたいと思います。
文・監修/岡田百合香先生、構成/たまひよONLINE編集部
●記事の内容は2023年11月の情報で、現在と異なる場合があります。