産後ケア事業ってどんな制度か知っていますか?【小児科医】
ママと赤ちゃんの産後をサポートしてくれる産後ケア事業って知っていますか?産後ケア事業といわれても、ピンとこない人もいるかもしれませんが、体調や育児に不安があるママと赤ちゃんをサポートするシステムです。「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」連載の#39は、産後のサポート制度についての情報です。
ママと赤ちゃんを助産師さんがサポートしてくれるシステム
たとえば退院後、ワンオペのお世話が続き少し休みを取りたいママ、自分の健康状態を相談したいママ、赤ちゃんの授乳や体重増加などを相談したいママなどはいませんか?
そんなママたちと赤ちゃんを助産師さんがサポートしてくれる制度が、産後ケア事業です。
最近私のクリニックを受診している家族で、この制度を利用してもらったファミリーがあったので、様子を紹介します。
(事業の詳細は各自治体ごとに異なるので、千葉市の場合の説明になります)
このおうちの赤ちゃんはちょっと小さく生まれました。産科も体重の増え方を心配して、産院を退院後1カ月健診までにも受診を促してくれました。それでも母乳の与え方、乳房ケアなどをゆっくり聞く時間はなかったので、もっと具体的な指導が受けられないかと相談を受けました。
こんな場合こそ「産後ケア事業の利用をすると安心ですよ」とおすすめして、市の母子健康包括支援センターに利用申請をしてもらいました。
今回は、訪問型での利用となりました。以前当院からの紹介で、この制度を利用した際に対応してくださった助産師さんが、母乳育児支援に詳しい方だとわかっていたので、この方を指名するという形で訪問してもらうことになりました。
1カ月健診前に一度、1カ月健診後にもう一度の訪問。その際の助産師さんによる乳房ケアのおかげで、母乳もたくさん出るようになり、赤ちゃんも力強く飲めるようになって体重も平均以上に増加し始めてひと安心しました。
ママからも「利用できてよかった」と報告がきました。生後2カ月ごろのこの年末に乳房ケアの指導にもう一度来てもらってお正月を迎えたいそうです。
小児科からのすすめ以外に、産婦人科からの情報での利用も
赤ちゃんが初めて小児科医のもとを訪れるのはワクチン開始の生後2カ月以降のことが多いので、こちらから産後ケアを紹介するにはちょっとタイミングが遅くなって利用回数が限定されるためおすすめしにくいですが、早い時期の困りごとへの相談は、産婦人科が対応しておられるようです。
コロナ流行後に母親同士の交流が少ない状態が続いていて、ワンオペ育児の不安を解消するには産後ケア事業はとてもありがたい制度です。今後生後1カ月健診の公費化も検討されているようです。実現したら産後ケア事業の利用者はさらに増えそうですね。
千葉市の場合、利用可能期間は産後5カ月未満。対象者はママと赤ちゃんです。
産科や助産所などに泊まる宿泊型。泊まらないで通う日帰り型。自宅に来てもらう訪問型の三つのタイプがあります。(利用年齢と利用料金は自治体ごとで異なりますので各自治体のHPでご確認ください)
事前の申請が必要ですので、必要書類をそろえて登録に出向いてください。パパでもOKです。申し込みは、出産予定日の3カ月前から可能です。
(千葉市では、住民票のある地区の区役所の母子包括支援センターに申し出てください)
【千葉市の場合】
●宿泊型:契約医療機関(市内と近隣自治体の産科と助産院)12カ所
●日帰り型:11カ所(施設滞在/おおむね6~7時間)
●訪問型:24カ所(自宅へ訪問/おおむね90分)
●ケアの内容
ママ:健康状態チェック、産後の生活アドバイス、休息、乳房ケアなど
赤ちゃん:身体計測、発育状態の観察など
●利用回数・利用料金
千葉市の場合、宿泊は7日まで、日帰り・訪問型は7回まで
料金は、課税世帯か、非課税世帯かなどで異なります。制限回数を越えての利用は全額自費負担になります。
(利用料金は、自治体ごとに異なります)
構成/たまひよONLINE編集部
「産後ケア事業の利用者はどんどん増えているそうで、制度も利用しやすく改善されています」と太田先生は言います。住んでいる自治体の制度をホームページなどでぜひ確認してみてください。
●記事の内容は2023年12月19日の情報であり、現在と異なる場合があります。