SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 赤ちゃんの病気・トラブル
  4. 発達が気になる子をサポートするために、5歳児健診が大切。不登校予防にもつながる可能性も【セミナーリポート】

発達が気になる子をサポートするために、5歳児健診が大切。不登校予防にもつながる可能性も【セミナーリポート】

更新

公園で走っている小さな子供たち
●写真はイメージです
maroke/gettyimages

昨今、5歳児健診のあり方が見直されています。5歳児健診は、5歳の誕生日を迎える子が対象で、年中の間、または年長の前半に受けることができます。
国立成育医療研究センターでは、現在およそ月に1回、子どもを取り巻く健康・社会的課題について理解を深めることを目的に「成育こどもシンクタンクセミナー」を開催しています。第9回は「5歳児健診再考」をテーマに、2023年12月15日に開催されました。講師は、同センター小児内科系専門診療部統括部長 小枝達也先生です。セミナーの一部をリポートします。

5歳児健診の補正予算が成立。自治体からお知らせが届いたら健診へ

上記は、5歳児健診でよく見られるちょっと気になる子の様子。

乳幼児健診は、母子保健法で市町村において1歳6カ月児、3歳児に対する健診の実施が義務づけられています。また乳児期(生後3~6カ月ごろおよび生後9~11カ月ごろ)の健診が全国的に実施されています。
2023年11月29日、生後1カ月ごろの乳児および5歳ごろの幼児の健診の実施に係る費用の補正予算が成立しました。

「5歳児健診の大切さについては、以前から専門家の間では言われていたので、今回の補正予算の成立はよかったと思っています。健診補助率は国が1/2、市町村が1/2です。自治体から5歳児健診のお知らせが届いたら、ぜひ受けて欲しいと思います。

現在でも一部の自治体では行われています。私が5歳児健診を担当していた自治体では保健師さんに『先生、ちょっと気になる子がいるのですが』とよく相談されます。
ちょっと気になる子とは、言葉がちょっと遅い、会話になりにくい、落ち着きがない、すぐにかんしゃくを起こす、お友だちに乱暴をする、こだわりが強い、過度に不器用であるなどです。なかには発達障害の疑いがある子もいますが、3歳児健診では発達障害かどうかの見分けはつきにくいものです。しかし就学後に、気づいては少し遅いのです」(小枝先生)

小枝先生は、年長さんで受ける就学前健診よりも前に受ける5歳児健診で、ちょっと気になる子どもたちを見つけて、適切にサポートしていくことが必要だと言います。

5歳児健診では、やりとりなどを通して言語発達や知的発達を確認

上記は、5歳児健診で確認する主な項目。

5歳児健診は5歳前後で受ける健診で、主に上の表のようなことを問診で確認します。
「こうした問診を通して、体を大きく動かす粗大運動や手先を使った動き、知的発達などを確認します」(小枝先生)

さらに
「なんていう保育園?」
「何組ですか?」
「先生の名前は?」
「保育園のカレーはおいしい?」
「お母さんのカレーはおいしい?」
「保育園のカレーとお母さんのカレーどっちがおいしい?」などの質問をします。

「こうした質問をすることで言語発達や対人関係などがわかります。さらに“帽子って何をするもの?”“時計って何をするもの?”と質問したり、しりとりをして知的発達や言語発達を確認することもあります。
もし発達に未熟さが認められた場合は、さらに詳しく調べます。そのときは保護者だけでなく、担任の保育士さんにも聞き取りを行うといいでしょう。そして保護者とよく話し合い、事後相談や療育機関へとつなげていきます」(小枝先生)

適切なサポートをすることで、不登校児が減少した自治体も

上の図は、学習のつまずきや行動面で気になることがある子が、不登校や問題行動を起こすようになるまでの一例。

わが子の発達がゆっくりだと5歳児健診に不安を抱くママ・パパもいるかもしれませんが、小枝先生は「5歳児健診は保護者の不安をあおる場ではなく、就学前に適切なサポートにつなげて、その子の力を伸ばす環境を整えてあげることが目的」と言います。

「気になる子が適切なサポートを受けられないと就学後、不登校や問題行動を起こすことがあります。
上の図は、そのサイクルの一例です。学習や行動面に苦手なことがあると、ママ・パパ、先生にしかられます。でも子ども自身は、どうにかしようと頑張っているのです。でも、なかなかうまくいかずにイライラしてママ・パパに当たったり、家にこもることが多くなったりします。

そのうち登校を渋るようになったり、問題行動を起こしたりするようになることもあります。
発達に特性がある子の場合は、しかったからといって苦手なことができるようになるものではありません。大切なのは、その子に合ったサポートです」(小枝先生)

大分県竹田市の5歳児健診の実施についても紹介されました。

「この自治体では、気になる子を適切なサポートにつなげたところ、不登校の小学生が減ったというデータがあります。
また、ある自治体ではその子の特性に合ったサポートをすることで、特別支援学級から通常学級に移った子どもは
平成19年度 1名
平成20年度 2名
平成21年度 5名
平成22年度 18名
平成23年度 10名 と増加傾向にあります。

自治体によっては、特別支援学級に入学したら卒業するまで在籍するという決まりがあるようですが、文科省ではそうした決まりは設けていません。
文科省では子どもの様子を見て、通常学級に移ってもいいですし、通常学級が不安ならばまた特別支援学級に戻ってもいいとされています。そうしたシステムの構築で、子どもの状況に合わせて柔軟に対応することができれば、親子ともに安心して登校できると思います」(小枝先生)

また乳幼児健診では気になることがあると「少し様子を見ましょう」と言われることがありますが、経過観察は推奨されていないと言います。

「もし乳幼児健診で“様子を見ましょう”と言われたら、いつまで様子を見ていいのか確認してください。たとえば“半年ぐらい様子を見ましょう”と言われたら、半年後どこに行けばいいか確認して、そのタイミングが来たら必ず相談するようにしましょう。

また5歳児健診には、課題もあります。健診から適切な支援につなげられる医師の不足や、保健師の業務量が多くなりすぎないか、ということです。健診後の受け皿を十分に用意することが難しい自治体も、まだあるかもしれません。
しかしママ・パパの子育て不安に寄り添い、子どもの力を伸ばす支援が大切だと思われます」(小枝先生)

お話・監修・図版提供/小枝達也先生 協力/国立成育医療研究センター 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

子育ては、切れ目のない支援が大切と言われています。その要となるのが乳幼児健診です。小枝先生は「5歳児健診が、発達の課題に気づくきっかけとなるように。また健診後は、子育て相談、発達相談、栄養相談、教育相談などのフォローアップ体制を充実させて、就学につなげていくように再構していくことが必要」と言います。
これからは1カ月健診と5歳児健診が強化されます。ママ・パパも、受けられる乳幼児健診は受け忘れがないようにしましょう。

次のセミナーは「こども大綱について」をテーマに、2024年1月17日に行われます。

第10回 成育こどもシンクタンクセミナーのお知らせ

●記事の内容は2023年12月の情報であり、現在と異なる場合があります。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。