身近な人でも、自分の体への接触には「NO」と言える練習をしておきたい【ママ泌尿器科医】
関心が高まっているとはいえ、日本における「性教育」は、まだまだ欧米に比べて遅れているといわれています。オランダでは「NO」を伝える練習をする性教育があるとか。男の子と女の子2人のママで、泌尿器科医である岡田百合香先生の連載、「お母さん・お父さんのためのおちんちん講座」#49です。
プライベートゾーンについての大切な話
先日、放課後等デイサービスの利用児童とその支援者を対象とした性教育勉強会の講師をさせてもらう機会がありました。
発達に特性や障害のある子どもたちに対し、男の子と女の子の体の違いや、プライベートゾーン、同意をテーマに話をしました。
最初に「おちんちん」や「たまたま」というワードが出たときにはクスクス、にやにやしている子どもたちも少なくありませんでしたが、とても大切な場所であること、どのようにケアしていくといいかを真面目に伝えているうち、みんなとても真剣な表情になっていきました。
普段親しくしている人でも、自分の体への接触については「NO」と言う権利がある
今回の勉強会で私がとくにやりたかったのが、「NO」の練習です。
性教育に関して世界的にも先進的な取り組みをしているオランダでの事例を調べている際に、「NO」を実践するロールプレイングの授業があることを知りました。
たとえば、学校の先生が「久しぶりに会った親せき」という設定で、小学校の生徒に「ひさしぶり!(あいさつ代わりに)キスしてもいい?」と問いかけます。
それに対して子どもたちは「キスは嫌だ」とまず「NO」を伝えたあと、「ハグならいいよ」「握手にしよう」といった提案をする、というものです。
この授業のすばらしいところは、まず「知り合いに対してNOと言う」という設定です。
日本における防犯指導では「知らない人に突然声をかけられる」というシチュエーションがまだ大半ではないでしょうか。
しかし実際には知っている人からの性暴力も非常に多く、知り合いだからこそ、今後も関係が続くからこそ「NO」が言いにくいという状況があります。
身近な人や、普段親しくしている人であっても、自分の体への接触については「NO」と言う権利があることは声を大にして子どもたちに伝えたいです。
表現のバリエーションはさまざまでも「NO」と言えるように練習を
また、知識を伝えるだけではなく実際に練習するというのがとても重要だと感じます。
どれだけ「プライベートゾーン」や「同意」に関して取るべき行動を知っていても、いざというときに「NO」と言うのは大人でも難しいことです。
普段から繰り返し練習をして身に着けておくスキルであるという意識が大切だと思います。
この取り組みを広げたいと思い、早速勉強会でオランダでのやり方を参考に子どもたちと練習をしてみました。
「嫌だ!」「お断りします」など、表現のバリエーションはさまざまありましたが、みんな真剣に自分なりの「NO」を伝えてくれました。
事後アンケートでは、放課後等デイサービスの支援員さんから「研修に参加した子どもが、ふざけて股間を触ろうとする子に対して『僕のプライベートゾーンに触るな』としっかり言えるようになっていました」といううれしい報告を聞くこともできました。
夏休み、子どもと過ごす時間が増える家庭も多いと思います。
ぜひ、紹介した「NO」のロールプレイングを試してみてください。子どものスキルとして確実に身についていくはずです。
構成/たまひよONLINE編集部
「実際には知っている人からの性暴力が非常に多い」という岡田先生の言葉、とても気になります。「NO」「嫌だ」と、しっかりと言えるようになるように考えていきたいものです。
●記事の内容は2024年7月の情報で、現在と異なる場合があります。