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「自分は愛されていない」長女の言葉にハッとして…。ユニークな道を生きる人を支える、小児科医の思い【インタビュー】

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小学1~6年生と保護者を対象に、こころのメンテナンスについて講演をしている鈴木先生。こころの状態を色水とコップを用いて説明しています。

香川大学医学部附属病院の小児科医を経て、同大学医学部衛生学教室で助教を務める鈴木裕美先生。鈴木先生は、NPO法人親の育ちサポートかがわを設立し、“子育てについて学ぶ機会をすべての親へ”をキャッチフレーズに活動をしています。
また「ユニパスさん」という言葉を作り、不登校や精神疾患、自傷、長期入院などを経験している子どもとその家族をサポートする活動も行っています。
鈴木裕美先生に、「ユニパスさん」を支える活動などについて聞きました。
全2回インタビューの2回目です。

不登校、精神疾患などの言葉のイメージを払拭するために生まれた「ユニパスさん」

鈴木先生のグループが、2024年2月に発行した冊子「ユニパスバンク 不登校編」。

「ユニパスさん」は、ユニークな道(パス)を生きる人という意味。鈴木裕美先生が作った言葉です。

――「ユニパスさん」という言葉を作った理由を教えてください。

鈴木先生(以下敬称略) 「ユニパスさん」は、不登校や長期入院、逆境体験(虐待や厳しい家庭環境)、精神疾患、依存症、自傷や自殺未遂を経験した人たちのことを指しています。不登校、精神疾患という言葉は重く、ネガティブなイメージがありますよね。そうしたイメージを払拭したくて、「ユニパスさん」という言葉を作りました。
「ユニパスさん」の意味は、ユニークな道(パス)を生きる人という意味です。

ユニパスさんたちは、とてもつらい経験をしていますが、同じ悩みをもっている人の支えになれるんです。これはユニパスさんだからこそ、できることです。私は不登校や長期入院、逆境体験(虐待や厳しい家庭環境)、精神疾患、依存症、自傷や自殺未遂などのつらい経験を活かしてほしいと思っています。

――「ユニパスバンク 不登校編」という冊子も出しています。

鈴木 2024年2月に冊子「ユニパスバンク 不登校編」を出しました。不登校という状態にいる子どもの理解と、子どもをサポートするママ・パパ、先生に知ってほしい情報を提供する目的で作成した冊子です。当事者や保護者の体験談も掲載しています。同じ経験をした人の言葉が救いになることは多いものです。

小学1年生は、新しい環境への不安感から不登校になる子も

鈴木先生が定期的に発行している子育て通信。かるた形式で、ママ・パパたちにメッセージを届けています。

文部科学省が2023年10月に発表した「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によると、小学1年生の不登校児童数は全国で6668名でした。小学6年生は3万771名で、小学1年生の約4.6倍です。

――子どもたちの不登校の増加が社会問題になっています。

鈴木 学年や小学校、中学校問わず不登校の子は増加しています。不登校の原因の1つは、学校という枠が小さすぎて、息苦しく感じる子どもたちが多くなっているということです。

また小学1年生は、新しい環境への不安から不登校になりやすい傾向があります。

――小学1年生の不登校を防ぐには、どうしたらよいのでしょうか。

鈴木 まず大切なのは、幼稚園・保育園のころから、ママ・パパが「〇〇できないと、小学校に入れないよ!」「××できないと、小学校で困るよ」などと不安になるようなことを言わないことです。
また「小学校=楽しいところ」というイメージを過度に押しつけるのもよくありません。
「何か困ったときは、ママ・パパに言えばいい!」と思えるような親子関係を築くことが第1です。

ギリギリまで頑張ってしまう‟過剰適応”の子は注意

「小児科医、母としての経験が子育て支援につながっている」と鈴木先生。

鈴木先生は、不登校は真面目で手がかからない子ほど注意が必要と言います。

――不登校になりやすい子もいるのでしょうか。

鈴木 さまざまなストレスを受けながらも、ギリギリまで頑張ってしまう過剰適応の子は、不登校になりやすい傾向があります。真面目で頑張り屋さんだったり、手がかからないいい子に多いです。
こういう子は、ママ・パパが「大丈夫?」と聞けば、本当は限界でも「大丈夫!」と言ってしまいがちです。そのため限界がきていても、見逃されやすいのです。
気になるときは「10がこのぐらいなら、どのぐらいキツイ?(どのぐらい大丈夫?)」と手で大きさを示して、子どもの心の状態を確認しましょう。「大丈夫」or「大丈夫でない」の2択で選ばせないことが大切です。

――夏休み明けに、不登校になる子も多いと思いますが・・・。

鈴木 子どもたちは、どの子もママ・パパに「愛してほしい」「見てほしい」「認めてほしい」と思っています。この三つが満たされると安心感と信頼感が生まれて、生きる力につながります。

具体的には、
●愛してほしい=笑顔であいさつ、優しい声で返事、ぎゅっとハグ
●見てほしい=最後まで話を聞く、理解しようと努める、困ったときに手を差し伸べる
●認めてほしい=「何がどうよかったか」を具体的に伝える、頑張ってトライする姿勢など、結果ではなく過程を認める
ことです。

子どもに気になるサインが見られたら、まずはこの3つのことを見直して、親子関係の土台を再構築してください。

長女とは、19歳で親子関係を再構築。親子関係の立て直しに手遅れはない

夫の仕事の都合で、小学生のとき長女は夫と台湾に住んでいた時期が。写真は夫と長女を訪ねて、台湾に行ったとき。

鈴木先生が子育て支援を始めた理由の一つは、自身の子育て経験の苦い思いからです。

――先生自身の子育てのことを教えてください。

鈴木 私には3人の子どもがいます。長女は、第1子ということもあり厳しく育ててしまいました。幼いころは、何かと長女を怒ることが多かったです。

高校卒業のときに、みんな保護者に感謝の手紙を渡していました。しかし、娘は手紙を準備していたのに渡しませんでした。卒業からしばらくして、長女は台湾に行きました。台湾を選んだのは、小学生のころ夫の仕事の都合で、夫と2人で台湾に住んでいたことがあったからだと思います。

しばらくして本棚の中で、本と本の間に紛れるようにして封筒があるのを見つけました。ふと中を見たら私に渡すはずの手紙が入っていました。手紙を読んだら「妹や弟のことばかり母はかわいがっていて、自分は愛されているとは思えなかった」「家庭の中に、自分の居場所はなかった」と書かれていて、ハッとしました。

それからは別に住むことになったとはいえ、折にふれ長女との親子関係を再構築しようと決めました。これまでは起きるのが遅く、片づけが苦手で、勉強にも部活にも力が入らず、下の子たちに対して冷たいところもある長女のことを怒ることが多々ありました。

ですが、家を出てからは否定的なことを言うのをやめました。寂しいのか毎日電話がありましたが、長女のいいところや頑張っているところを見つけて言葉にしたり、失敗しても励ましたり、できるだけ前向きな言葉をかけるようにしました。
帰省すると楽しそうに会話をし、夜、私の布団に入ってきたり、手をつないできたりもしました。2人で日帰り旅行をしたり、楽しい時間を過ごすように努めました。19歳になってから、「愛してほしい」「見てほしい」「認めてほしい」の気持ちを満たせるようになったのです。
それから長女も変わり始めました。大学での勉強も頑張っていましたが、それに加え、語学の資格試験を受けたり、ボランティア活動をしたり、クラブの部長に立候補したりと、別人のように積極的に活動するようになりました。
社会人になってからは毎月複数のボランティア団体に1万円を寄付し、骨髄バンクにも登録しています。また私は、香川県里親会理事も務めていますが、うちで預かった里子に優しく接してくれたりもします。
子どもは愛され、話を聞いてもらい、認めてもらうと、こんなにも花開くのだなと驚いています。親子関係の立て直しはいつでもできます。親が気づいたときが始めどきです。手遅れはありません。

お話・写真提供/鈴木裕美先生 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

鈴木先生は、子どものコミュニティは地域、家庭、学校と限られていて、つらくても逃げ場がありません。だから、せめて家庭は子どもにとって居心地のいい場所にしてあげてほしいと言います。

鈴木裕美先生(すずきひろみ)

PROFILE
医学博士、 小児科専門医。1995年ハワイ大学マノア校大学院公衆衛生学部国際保健学科卒。2010年香川大学医学部医学科卒。同大学医学部附属病院小児科医員などを経て、同大学医学部衛生学助教。NPO法人親の育ちサポートかがわ理事を務める。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年8月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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