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5歳の息子がある日、原因不明の病気を発症。1型糖尿病を多くの人に知ってほしいと活動を続ける母【体験談】

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花を持った生野さん

愛知県在住の生野優季さんは、息子の真浩(まひろ)くん(10歳)と、娘の千尋(ちひろ)ちゃん(7歳)、パパの4人家族です。

真浩くんは5歳で1型糖尿病を発症。1型糖尿病の根治の方法は見つかっておらず、現在は毎日のインスリン注射が欠かせない生活を送っています。

そんな中、生野さんは自身の経験から1型糖尿病にかかわるさまざまな人々の思いを支援するためのボランティア団体「Type1Dreams」を立ち上げました。2回目のインタビューでは、Type1Dreamsを立ち上げたきっかけとその思いについてお話を聞きました。

▼<関連記事>前編を読む

1型糖尿病について知ってもらいたいし、自分も楽しみながら活動をしたい

Type1Dreamsを立ち上げたころ
Type1Dreamsを立ち上げたころ

真浩くんが1型糖尿病になったあと、1型糖尿病に関連するボランティア団体に5年ほど参加していたという生野さん。もっと自分らしく活動をしたいと、2024年に1型糖尿病にかかわるさまざまな人々の思いを支援するためのボランティア団体「Type1Dreams」を立ち上げました。

「血糖を管理する生活にだんだん慣れてきたとはいえ、やはりつらいときもあるんです。健常児とはやはり生活も悩みも違うので。

たとえば夜間の血糖の見守りもあるので慢性的な寝不足などの身体的なつらさだったり、生活習慣が悪いからという誤解や偏見に苦しんだり。

そういったことも含めて、もっと世の中に知ってもらいたいという思いがありました。5年ほど別の団体でボランティア活動にも参加していましたが、もっと自分が楽しめるかたちで活動をしたいという気持ちが大きくなって…。私の思いに賛同してくれた方と一緒に新しく『Type1Dreams』という団体を立ち上げました。

真浩も以前のボランティア団体に私が参加していることは知っていましたし、ときどき一緒に参加することもあったので、いったん辞めると言ったときは心配してくれましたが、また自分で新しく活動を始めるんだよと伝えたらとても喜んでくれました。夫も遠方に行く際は車を出してくれるなど陰ながら応援してくれています」(生野さん)

まわりの人も巻き込んで楽しいことを。そんな思いで始まったラムネスタンド

週末マルシェでラムネスタンドを出店
週末マルシェでラムネスタンドを出店

「小児がん支援の『レモネードスタンド』は有名ですが、私がまだ新しく団体をつくりはじめようと思ってもいなかったときに、とあるマルシェでレモネードスタンドをしている方に出会ったんです。その方に話を聞いたら、身近にそういった小児がんの子がいるわけでも自分の子どもが小児がんであるわけでもなく、本当にただ『人のために何かをしたい』ということでその活動をされていたんです。

そのときに、そういう一般の人々も巻き込んでやれたらすごいことだな、力になるだろうなぁと感じて。やはり当事者や1型糖尿病をすでに知っている人だけでは、なかなか認知が広がっていかないので、外に向けて広く発信することが大事だなと思いました。

病気や障害がなくても、そういった何かをしたいという思いがある一般の方と一緒に活動をしたいと思い、そこからいろいろと調べました。それが自分で団体をつくるきっかけにもなったと思います。

そして考えついたのがラムネスタンドです。ラムネのびんを見るとなぜかワクワクしませんか?そうした楽しい気持ちを持ちながら、いろいろな方に1型糖尿病やそのほかの糖尿病についても関心をもっていただけるようにできたらと思いました。

糖尿病のイメージカラーの青色だったり、ラムネには糖尿病で治療をしていると必ず隣り合わせになる低血糖を改善するブドウ糖が含まれていることだったり、糖尿病を連想するさまざまなことの意味も含んでいます。

1型糖尿病はまだ根治の方法が見つかっていませんが、根治に向けて研究してくださっている先生方がいっぱいいます。ラムネスタンドの売り上げはそういった方々に寄付しているので、そのような1型糖尿病に関する知識も広めていきたいです」(生野さん)

「ラムネを見たら1型糖尿病を思い浮かべる」そんな社会をめざして

ラムネ

「Type1Dreamsでは当事者やそのご家族たちの座談会や交流会も開催していますが、よりたくさんの人に知ってもらいたいので、ラムネスタンドの活動も積極的に行っています。何より自分たちがやっていて楽しいですからね。ボランティアはいいことばかりではないので、楽しんで続けられることも大事だと思っています。

Type1Dreamsを立ち上げてからは月1〜2回ほど、マルシェでラムネスタンドを出店しています。ラムネを見ると、子どもはもちろん、大人も興味を持って立ち寄ってくれる人が多くて。そのときに実はこういう活動をしているんです、とお話しすると真剣に耳を傾けてくれる方が多くてうれしいです。

今ではマルシェでの常連さんができたり、インスタグラムを見てラムネスタンドのためにこのマルシェに来たと言ってくださる方もいて。

ほかにも、たまたま見かけたという1型糖尿病の方が声をかけてくれて、『実は私も1型なんです』という話で盛り上がったり、『自分は2型なんだけど、同じように生活習慣が悪いと決めつけられたり甘いもの食べ過ぎたんでしょうって言われたりしてつらいよね』と苦労を聞いてお互いに共感し合ったり。ラムネを売るだけじゃなく新たな出会いの場所にもなっていて、この活動を始める前は思ってもみなかったうれしい発見がありました。

でも、やはり自分たちでできることには限界があるとも感じていて。これからは、企業の方や影響力のある方など、私たちの活動に賛同してくれる方がいたら、ぜひ力を貸していただきたいです。

最近ではプロのフットサル選手の方が私たちの思いに賛同してくれて、実際に自分でラムネスタンドをやってくださったんです。当事者やその家族たちだけではない、一般の人も巻き込んで広めたいという当初の思いが、少しずつですがかなえられています。

今後は、レモネードを見たら小児がんを思い浮かべるように、ラムネを見たら、『そういえば1型糖尿病を知ってもらうためにやっている活動があってね』とか、『1型糖尿病って知ってる?』とか…日常生活でそういった会話がでてきたり、思い浮かべてくれたりする人が増えたらうれしいなと思います」(生野さん)

1型糖尿病であっても、どんなことにも挑戦できる、自分らしく生きられる

最近の真浩くん
最近の真浩くん

Type1Dreamsをとおして1型糖尿病の啓蒙活動を続ける生野さん。1型糖尿病に関して現在どのような思いを持っているのかも聞きました。

「1型糖尿病の子どもたちも、大人になって発症した人も、それぞれに未来があります。その未来が楽しいものであってほしい、夢があるものであってほしいという思いで、メンバー、サポート医師とともに、この活動にType1Dreamsという名前をつけました。1型糖尿病であってもどんなことにも挑戦もできる、自分らしく生きられる、楽しい人生を送れる、というのを大きなテーマにしています。

1型糖尿病の人は、見た目では一般の人と変わらないので病気だとはわかりません。ちょっと食事の前に何かごそごそしているな、注射しているなとか、甘い物を食べているなとか、それくらいのこと。

この病気に限らず、世の中には私たちが知らない病気や障害を抱えていたり、診断はされていないけど実は障害を持っていたりする人もいると思うんです。今は多様性の時代になってきて、私たちはそういったいろんな人がいる社会で生きている。

社会にあまり多くのことは望んでいません。ただ、知ってほしいんです。目が悪い人が眼鏡をかけるように、1型糖尿病もただたりないところを補って生活しているだけなんだということを認識してほしい。

そして、生活習慣や不摂生で1型糖尿病になるという考えは、間違った認識だということも知ってほしいですね。そういった誤解や偏見から糖尿病と知られたくなくて、こっそり隠れて注射を打ったり補食したりしている人もいます。当事者たちが安心して暮らせるようになるには、1型糖尿病がどんな病気なのかを世の中に理解してもらうことが大事だと思っています。多くの方に知ってもらうことで、みんなが住みやすい社会になっていくと思います」(生野さん)

“困った”ことに気づいた、ということを大切に

Type1Dreamsで活動中の生野さん
Type1Dreamsで活動中の生野さん

最後に、たまひよ読者やお子さんを育てるママ・パパたちに伝えたいことを聞きました。

「育児をする中で、つらいことや嫌な思いをすることがあったら、そういった気持ちにふたをしないで声をあげてほしいです。ママ友でも、専門家の方や自治体の子育てサークルや保育士さんでも、だれでもいいので。親だから我慢しなきゃいけない、頑張らなきゃいけないというわけではない。つらいときは助けてって言っていいんだよというのは世の中のママ・パパたちに伝えたいです。

あとは、“困った”ことに自分で気づいたら、それを大切にしてほしいです。『たいへんなのに、どうしてだれも助けてくれないんだろう』とか、『なんで、こういう制度がないんだろう』という気づきから大事なことが見えることもあるからです。その気づきってほかの人も同じように困っていたり考えていたりすることなので、仲間を見つけたり、その人たちを助けてあげられるチャンスだと思うんです。

私は自分がつらかったことや苦しかったことを、次に同じ立場になった人がそのまま引き継ぐのは嫌だな、断ち切ってよりよいものにしていきたいなと思い活動を続けています。“困った”気持ちを大切にすると、それを解決したいと思う人が増えて、よりよい社会につながっていくように思います」(生野さん)

お話・写真提供/生野優季さん 取材・文/安田萌、たまひよONLINE編集部

自身の経験から「Type1Dreams」というボランティア団体を立ち上げ、自身も楽しみながら1型糖尿病の啓発活動に取り組む生野さん。私たち1人ひとりが関心を持ち、理解を深めることが、1型糖尿病の人もそうでない人も、みんなが暮らしやすい社会につながるはずです。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

生野優季さん

PROFILE
長男が5歳で1型糖尿病を発症した経験から、2024年に1型糖尿病にかかわるさまざまな人々を支援するボランティア団体「Type1Dreams」を設立。1型糖尿病の世間の認知度を上げるための啓発活動をはじめ、当事者である子どもたちやその家族が安心して暮らせる環境づくりをめざして活動中。

Type1DreamsのHP

Type1Dreamsのインスタグラム

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年12月の情報で、現在と異なる場合があります。

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