"一流の母"ミセス・パンプキンの「ためになる後悔」とは? 後編
子育てに絶対的な自信を持っている母親なんて、いるでしょうか。みんな多かれ少なかれ、「これでいいのかな?」と迷いながら日々子どもと向き合っているものです。
一方で、ミセス・パンプキンのように、子どもたちが立派に成人したあとも、「私のあそこはいけなかった」と潔く反省できる人も珍しいかもしれません。そんなミセス・パンプキンだからこそ、一生懸命な姿が子どもたちに伝わったともいえます。
最終回の今回は、息子のムーギー・キムさんに、ミセス・パンプキンの「感謝される」子育てについて聞いてみました。
感謝① 勉強は体当たりで教えてくれた
——勉強をせず、ザリガニ採りに夢中だったというご長男ムーギー・キムさんですが、中学から京都の難関名門校に入学し、優秀な成績で一流大学を卒業され、今では何ヵ国語もの言葉をマスターし、自ら希望してMBA留学までされています。いつから、そしてなぜ変わっていったのでしょうか?
(ムーギー)姉たちと同じように中学受験をする、という段になって、母が突然、勉強を教えてくれるようになったんです。
(パンプキン)いくら言っても勉強しないなら、私がやって見せるしかない、と私自身が受験勉強をまずやってみました。重要な問題を理解した上で、それをわかりやすいように説明したんです。「これ、簡単やからやってみ?」とか言って。実際はすごく難しくて、冷や汗をかきながら夜中に勉強していたんですけれど(笑)。息子は「ほんまや、簡単やなあ」と少しずつ勉強するようになりました。子どもは親が口だけで言っても言うことは聞かないけれど、不思議と親のマネはするものですね。
(ムーギー)当時はそんな母の努力は知りませんでした。本当に、いつそんな時間があったんだろう、と思いますね。休憩しているところを見たことがなかったから。ずっと家族のために、とやってくれました。
(パンプキン)長女が、学校の「お母さんの絵を描く」という課題で描いたのが、夜、ベッドに寝転んで朝刊を読んでいる私の姿だったんです。それが貼り出されて、すごく恥ずかしかった! なかなか新聞を読む時間もなくてね、ベッドにいるときだけわずかな時間が作れたんです。でも今は本当に、家事をサボってでも1時間ほど、4人の子どもたちと部屋にこもって本でも読んであげたらよかった、と思うわ。
(ムーギー)そういうけれど、童話を読んでくれたのはよく覚えていますよ。主人公を僕たちに変えて、作り話みたいなのを話してくれたじゃない。
感謝② いろんな大人と触れ合う機会を作ってくれた
(ムーギー)忙しいというのに繋がっていますが、本当に来客が多い家で。母の作る料理を食べに来るものだから、食堂みたいでしたね。いろんな大人と接する機会があったおかげで、社交的な性格になりました。それはすごく今も役立っているし、感謝しています。
(パンプキン)皆さんすごくありがたいことに、子どもたちにいつも話しかけてくれるんですね。そこに大人とのコミュニケーションがあったから、礼儀やマナーや人間的な力を育むことができたと思っています。
(ムーギー)何か面白いことを言って注目されよう、という、練習にもなりましたね。
(パンプキン)子どもたちが中学生に上がると、ますます家のことが忙しくなり、ほとんどかまってあげられなくなって、放任になりました。でも結局は、社会の中で子どもは育っているので、結果としてそれがすごく本人たちにとってよかったのだと思います。
(ムーギー)逆に、母は、親戚や僕らのいとこたちの相談ばかり受けていました。母は7人きょうだいで、甥や姪が30人いるんですが、みんななぜか母のところに相談しにくるんです。昔からずっとそうでした。だから、僕自身が東洋経済オンラインで連載コラム「グローバルエリートは見た!」を書いていた関係で、人生相談を受けてみたら、と提案して「ミセス・パンプキンの人生相談」(東洋経済オンライン)が始まったんです。
(パンプキン)おしゃべりだけど口だけは堅いから。あなたたち(4人の子供)が知らないこともたくさん知ってますよ(笑)。
感謝③ いつも信じて愛してくれた
(パンプキン)振り返って思うと、4人子どもがいて、それぞれみんな興味や性格が違ったのに、同じようにしてしまったというのも後悔している部分ではあります。でも、きょうだい4人を比較したことは不思議となかったわね。
(ムーギー)「お姉ちゃんはやってるのに、あんたは全然勉強せえへん」とは、よく言われてたよ。
(パンプキン)それは比べているんじゃなくて、事実ですからね(笑)。でも、心の奥底では、この子は大丈夫だろう、と思っていました。きっと賢い子だ、勉強でもなんでも、やればできる、というふうに信じてはいました。根拠のない自信でしたけど(笑)。
(ムーギー)確かに、そういうふうに思ってくれているんだろうな、というのはなんとなく、わかっていましたね。なんでしょう。にじみ出ていたんですかね。僕自身、自分は賢くて、やればなんでもできると思っていましたから(笑)。そのことはすごく感謝しています。
——後悔だらけ、失敗だらけ、今もぶつかってばかりですよ、と言いながらも、親子仲良く、一緒に本まで出すお二人。ムーギー・キムさんがミセス・パンプキンに感謝をし、尊敬をしている様子はひしひしと伝わってきます。帰り際、ミセス・パンプキンを先に部屋に返してから、ムーギーさんはこう言いました。
「母の前では言えませんが、母親からの愛情の深さだけでは一度も疑ったことはありません。それだけは自信を持って言えます」
いかがでしたでしょうか。ミセス・パンプキンの「ためになる後悔」。今日から、わが子への接し方が少し変わってくるかもしれません。
ミセス・パンプキン、ムーギー・キムさんの共著はこちら
『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』
ムーギー・キム/ミセス・パンプキン著 ダイヤモンド社

撮影・田渕睦深
取材・文 玉居子 泰子(たまいこ・やすこ)編集・翻訳・ライター。
翻訳出版編集部、育児雑誌編集部を経てフリーランスに。アメリカのド田舎、ベトナムの大都会に暮らした経験から、いろんな価値観をまずはフラットな目で見つめることを大切にしている。現在6歳男子と4歳女子の母、育児の息抜きは本をよむこと。子ども・教育関係の記事制作を多く手掛ける。
※この記事は「たまひよONLINE」で過去に公開されたものです。