救急医療の現場から#8〜ポテトサラダのマヨネーズでじんましんが!~食物アレルギー
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ママやパパにアレルギーの病気があると、赤ちゃんのアレルギー発症を気にして、卵などアレルギーの原因になりやすい食材を初めて食べさせるときは慎重になりがち。ところが、実際は初めてのときより、2回目のほうがアレルギー反応が強く出ることもあるそうです。
今回は、2回目に食べさせたマヨネーズで、じんましんが広範囲に出てしまった症例を、北九州八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長である市川光太郎先生に、紹介いただきました。
パパがアレルギー体質なので、授乳にも食事にも気をつけていたのに・・・
「10カ月の女の子です。夕食後1時間ほどたったところで、じんましんが胴体部分に広く出て、機嫌も悪いとのことですが、搬入してもいいですか」とホットラインから救急搬送の連絡があった。
その後、すぐに救急車が到着して、救命士に女の子の様子を聞くと、「最初は顔に発赤(ほっせき)・じんましんが出ていたけれど、冷やしたら少し減って、代わりに胴体に赤く発疹が浮き出て、地図様に腫れて膨隆(<ぼうりゅう>局部的に盛り上がってふくらむこと)している感じ」とのことだった。発疹の中心部に赤みはなく、典型的なじんましんであるとのことだった。「食物(しょくもつ)アレルギーだろうな」と思いながら、念のために点滴、採血、そして抗ヒスタミン薬、ステロイド薬の投与、そして抗アレルギー薬を内服させるように研修医に指示して、母親に話を聞くことにした。
「家族にアレルギー体質の人がいますか?」と尋ねると、
「主人が小さいときはアトピー性皮膚炎がひどく、幼稚園のころからは気管支ぜんそくで、入退院を繰り返していたそうです。今、主人は30歳ですが、今も気管支ぜんそくの薬を飲んだり吸入したりしています。私は、まったくアレルギーはありません。
妊娠中、産婦人科で助産師さんに『お父さんがアレルギー体質なら、子どももアレルギー体質になるかもしれないね』と言われて、母乳のほうがいいと思って、母乳で頑張って育ててきたんです。そのせいか、まったく皮膚もきれいで、アトピー性皮膚炎も起こさなかったので、この子はアレルギーはないのかなと思っていました」と一気に話してくれた。
母親は、アレルギーのことはかなり自分なりに勉強している印象であった。夕食に食べさせたものを挙げてもらうと、白ごはん、豆腐のみそ汁、牛肉とかぼちゃを煮たもの、そして、ポテトサラダだった。
マヨネーズは生卵並にアレルギーを起こしやすい
「ポテトサラダはじゃがいもをしっかりつぶして、さらにマヨネーズをかけて食べやすくしてあげたのですが、とてもおいししそうに、たくさん食べました」と話した。
「マヨネーズは今までもよく食べさせましたか?」の質問に、母親は即座に「いえ、2回目です」と答えた。
マヨネーズは生卵と同じぐらい抗原性(アレルギー反応を起こす力)が高い。この場合のじんましんの原因も、マヨネーズの可能性が高いので、「本日の採血血液で、卵アレルギーなど食物アレルギーの有無を検査しておきましょう」と話した。
今回はじんましんの皮膚病変のみで、嘔吐などの消化器症状や、せき込み・喘鳴(ぜいめい)など呼吸器症状もないため、アナフィラキシーではなく、単純な食物アレルギーに伴うじんましんと判断した。
救急外来で3時間ほど観察し、新たに症状を認めないことを確認して、帰宅・再診とし、別途アレルギー検査の結果も聞きに来てもらうようにした。
母親は、「パパがアレルギー体質だからしかたないですね。今後気をつけます」と言いながら帰って行った。
食物アレルギーは2回目に与えるときに反応が強く出ることも
親にアレルギー歴がある場合はとくに、初めて与える食材には気をつける必要があります。ただし、初回よりも2回目のほうが、アレルギー反応が強く出ることもあるので要注意。じんましんなどの皮膚症状のほか、消化器症状や呼吸器症状などもある場合は、アナフィラキシーと考えて、緊急受診が必要です。
★赤ちゃんにじんましんが出たら…
1.じんましんは、冷やすとかゆみが減ります。冬場以外は、しっかり冷やしてあげましょう。
2.じんましんなどの皮膚症状が起きたときは、呼吸状態や嘔吐などの消化器症状も確認しましょう。
3.とくに呼吸が苦しそうな場合は、迷わず救急車を呼びましょう。
市川先生が、赤ちゃんがかかりやすい病気や起きやすい事故、けがの予防法の提案と治療法の解説、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスしてくださった「救命救急センター24時」は、雑誌『ひよこクラブ』で17年間212回続いた人気連載でした。2018年10月市川光太郎先生がご逝去され、連載は終了となりました。市川先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます(構成・ひよこクラブ編集部)。
■監修:(故)市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会名誉理事長。長年、救急医療の現場に携わり、子どもたちの成長を見守っていらっしゃいます。
※監修者情報を補足・修正しました。(2021/11/10)