子どもの本屋さんに聞く、2歳以降の子どもが本好きになる本選びのポイント
本好きの子どもになってもらいたいと願いつつ、実際どうすれば子どもが本を好きになってくれるのか、わからないというママ・パパも多いでしょう。言葉の理解が進む2歳以降は、本の選択肢も増えるため、本選びはさらに難しくなります。子どもが本を好きになるために、どのような本を選んでいけばいいのか。東京・阿佐ヶ谷で25年にわたり児童書専門の書店を営んできた「子どもの本や」さんに、本好きの子どもを育む本選びの秘訣を聞きました。
本選びは子ども任せにしない
言葉の理解が進む2歳ごろ以降、本選びに悩む、ママ・パパが多いようです。
自分の子どもに合う本が「わからない」という親御さんはたしかに多くいらっしゃいます。私たちも同じような相談を受けることがありますので。「自分が選ぶ本と子どもが選ぶ本がマッチしない」といったご相談も増えています。
親が自分で選ぶ本と、子どもが選ぶ本、どちらを優先したほうがいいですか?
昔に比べて、子どもの本の選択肢が増えた一方、大事な部分をごまかしたり、子どもに迎合したりする本も増えました。そのため、書店の児童書コーナーで子どもに自由に本を選ばせると、見た目にも刺激の強い派手なものに釣られてしまいます。そういった本は、子どもの心の血肉にはなりにくいと思います。食べ物と一緒です。栄養がある魚や野菜とお菓子のどちらかを選ばせたら、多くの子どもはお菓子のほうを選びますよね。子どもが心から楽しめ、満足できる、そして成長につながる「本物の絵本」を選んでほしいと思います。
「本物の絵本」とは、どういう絵本ですか?
お話がおもしろく、そのお話にさし絵がぴったりと合っているかどうか。お話の表面だけでなく、奥に流れているものも描けているかどうか。作者が子どもの力を信頼して、ごまかしなく子どもに語りかけているかどうか。そして何よりもあたたかさと読み終わった後の満足感があるかどうか。そういったことが大切だと思います。絵本にも一冊一冊異なる個性があるので、「本物の絵本」を定義するのは難しいのですが、いい絵本の多くは、絵も言葉も美しいという共通点があります。絵本に出てくる言葉は、子どもにとっては初めて出会う言葉なので、大事にしてもらいたいですね。端正な日本語の文章は、大人が読んでも美しいと感じるものです。
子どもに本に興味を持ってもらうには、どうすればいいですか?
たくさんのいい本に触れることだと思います。そして、読み聞かせをする親自身も、楽しく読むことです。ごはんを食べるように、一日一冊でも読むように習慣化してもらえるといいなと思います。好きになると一冊では収まらないと思いますが(笑)。
どうすれば、物語の世界を楽しめるようになりますか?
知識だけつけても本を好きになるとは限らないので、子どもたちに心から本を楽しんでもらうことが大切だと思います。楽しんでもらう一番の方法は、親御さんも読むことを楽しむということ。子どもの絵本には、大人にはわかりにくいファンタジーもあると思います。でも子どもと読むと、その楽しさがわかってきます。あまり難しく考えずに、一緒にそのお話を味わうことが大切です。また、字が読めるようになってもすぐに「自分で読みなさい」と突き放すのではなく、小学1~2年生くらいまでは、親子で一緒に本を読むのがいいと思います。いい本に出会って、「本って楽しいんだ」と思うようにならないと、絵本から読み物には進みにくいので。うちは小さな店ですが、本当にすぐれた本を選んで、取りそろえるようにしています。お子さんが自分で字を読めるようになってからも、よい本とたくさん出会って本を好きになってほしいと思います。
今の時代、本だけでなく、テレビやDVD、スマホなど、子どもにとってもいろいろな選択肢が増えています。家事や仕事で忙しいと「ちょっと今、本を読むのは大変だから映画でも見せておこうか」となることもあるかもしれませんが、子どもの本選びに本腰を入れてみると、「本ってやっぱりいいな」と気づくはずです。子どもが本を心から楽しめる環境を作ってあげたいですね。(取材・文・撮影/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
取材協力/子どもの本や(東京都・阿佐ヶ谷)
多くの子どもに本を楽しんでもらおうと、小学生の子どもを持つママたち5人が1993年7月に阿佐ヶ谷で開業。子どもの本選びに困っている親のために、毎月1回、2~3冊の児童書を発送するサービスも行っています。本選びは一人一人の子どもの読書経験や成長に合わせて変えているとのこと。
住所:東京都杉並区阿佐ヶ谷南1-47-7
TEL/FAX:03-3314-3455
営業時間:11:00~17:00
定休日:水、木、祭日
ブログURL:「 子どもの本や 阿佐ヶ谷日記 」