赤ちゃんと意思疎通がとれるようになるのは、心・脳が育っているから!
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人間の一生の中で身体的にもっとも成長する時期は、赤ちゃんのころです。身体的成長は、身長が伸びたり体重が増えたりするので、見た目にもわかりやすいといえるでしょう。しかし心や脳の成長は、表面上は見えにくく、どのように育っているのかわかりにくいものです。赤ちゃんの心と脳の育ち方について、小児科医で赤ちゃんの発達に詳しい、本田真美先生に聞きました。
喜びを表現するのはいつごろ?
「ねえ、みてみて! 笑ったよ!」
生まれたばかりの赤ちゃんがほほ笑みを浮かべるその様子に、親としては喜びを感じずにはいられないでしょう。でも赤ちゃんは(こんなことを言うと気分台無しかもしれませんが)、うれしくて笑っているわけではありません。そのほほ笑みは、「生理的微笑(せいりてきびしょう)」と呼ばれる、生理的反応によるものです。
赤ちゃんが感情で笑うようになるのは、2ケ月ごろからです。ママを見て笑ったり、話しかけてきた人に笑ったり。うれしい、悲しいという感情もわくようになり、手足をバタバタさせながらそれを表現します。一方、6ケ月ごろになると、親しい人とそうでない人の顔の区別がつき始めて、人見知りをするようになる子も出てきます。
自己主張が出てくるのはいつごろから?
「うーん、何が不快なんだろう?」
生後しばらくのあいだ自己主張のない赤ちゃんも、はいはいなどで自分で移動したり、言葉も理解し始める9ケ月ごろからは、自己主張が出始めます。うれしい、悲しい、楽しい、嫌だ、といったさまざまな感情を表現するようにもなり、大声で泣いたり、怒ったりすることも出てきます。まだ話せないので何が原因がわからずに、困り果ててしまうこともよくありますよね。
その自己主張がさらに激しくなるのは1歳3ケ月ごろから。このころは遊びや着替えなどを、「自分(で)!」と主張して、自分でやらないと気がすまないこともあります。思うようにいかないと、すねたりやきもちをやいたりすることもあります。
そのころは、子どもの気持ちを尊重しながら、できないこともやらせてみたり、一緒に遊んだりしてみてください。なんでも「ダメ!」というのではなく、見守りながらサポートをすることが大切です。
言葉はいつから理解している?
「〇〇(名前)~、こっち向いて~」
8ケ月ごろからは、ママやパパの言葉にも反応するようになります。名前を呼ばれると振り向き、話しかけるとそれを一生懸命聞こうとして、自分でもまねして同じ言葉を出そうとします。「ちょうだい」や「どうぞ」など、もののやりとり遊びを覚えるのものこのころからです。
11ケ月から1歳にかけては、言葉の理解が進みます。また、1歳を過ぎると「ママ」「パパ」「ワンワン」など、意味のある言葉を発するように。
1歳以降はさらに言葉の発達が進みますが、言葉を発する時期は個人差が大きいものです。2歳ごろになると「お花、きれい」など、名詞と形容詞など単語を2つつなげる“二語文”を話すようになる子もいます。中には、ほとんどしゃべらない子もいますが、しゃべらなくても言葉の理解が進んでいる子は多いもの。「お片づけしよう」と言われれば、しゃべれなくても自分から片づけ始める子もいます。
赤ちゃんが新生児のころは意思疎通がとれず、どうかかわっていいかわからないママ・パパも多いもの。脳・心が育つと、だんだんと赤ちゃんが意思表示をするように。親と赤ちゃんのかかわり方も、双方向コミュニケーションに変わっていきます。
2歳ごろになると、自己主張はさらに強くなり、こだわりを持つようにもなります。いわゆる“イヤイヤ期”が本格的になってきますが、これも心・脳がきちんと発達している証拠。子どもとしっかり向き合って、心・脳をすこやかに育てましょう。 (取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/本田真美先生
みくりキッズくりにっく院長。小児神経専門医。東京慈恵会医科大学卒業。国立成育医療研究センター、都立東部療育センターなどを経て現職。おもちゃコーディネーターでもあります。
参考/ひよこクラブ2017年12月号「赤ちゃんの発育・発達ポイント&かかわり方新定義」より