赤ちゃんの頭の形 これって大丈夫? Q&A
赤ちゃんの頭はやわらかく、生まれてきたばかりのころは、形が変わりやすいのが普通です。また、頭の大きさなども人それぞれ。それでもほか子と形や大きさが異なると、「これって大丈夫?」と気になってしまいますよね。赤ちゃんの頭の形や大きさがどのように変化していくのか。小児形成外科が専門の、国立成育医療研究センター副院長・金子剛先生に聞きました。
頭が大きいけど大丈夫?「絶壁」だけど大丈夫?
赤ちゃんの頭の大きさや形について、ママ・パパたちから質問をいただきました。Q&A形式でお届けします。
Q1 ほかの子と比べて頭が大きいようです。問題ありませんか? (6ケ月・男の子)
A1 頭囲成長曲線に沿って成長していれば問題ありません
母子健康手帳の頭囲成長曲線に沿って成長していれば、多少頭が大きくても心配ありません。頭囲成長曲線から大きく外れていたり、1~2ケ月で急に大きくなったりした場合は、ごくまれに病気が隠れていることがあるので受診しましょう。
Q2 「絶壁」といわれる頭の形やゆがみは遺伝と関係ありますか?(1歳・男の子)
A2 遺伝だけではなく生活環境が大きく影響します
頭の形については、遺伝の影響のほか、生活環境の影響が考えられます。とくに赤ちゃんは、頭の骨がやわらかいために、あお向けなどで同じ姿勢が続くと、寝具や床に接している部分が平らになり、後頭部がいわゆる「絶壁」になることがあります。こうした絶壁や、向き癖による頭の形のゆがみは、寝るときの向きを変えてあげるなどすれば改善していきます。対策としては、①ジムやメリーなどのおもちゃを使って、向き癖とは逆の方向に好きな人形をつるすなどして、赤ちゃんが頭の位置を変えるのを促す。②寝るときに向き癖の方向に壁がくるようにして、反対側を向くように促す。③首がすわってきたらママ・パパとの遊びにうつぶせの姿勢を取り入れてみる。こういった方法が考えられます。形が気になるからといってうつぶせのまま放置すると、窒息の危険があります。絶対にやめましょう。
Q3 頭の形のゆがみは、成長とともになおるものなのでしょうか? (5ケ月・男の子)
A3 多くの場合は成長とともに目立たなくなってきます
赤ちゃんは同じ姿勢のままで寝ていることで、頭の形が平になったりゆがんだりすることがあります。けれど、しだいにおすわりやはいはいをするようになり、やがて立ち上がるようにもなると、必然的に寝ている時間は減り、頭の形の平らな部分やゆがみはだんだんとなくなっていきます。自然な丸みを帯びた形に近づいていくので、多少のゆがみなどは残ることがありますが、髪の毛が生えそろってくるころには目立たなくなるので心配しすぎる必要はありません。しかし、ゆがみや絶壁の程度が強い場合は、赤ちゃんの頭の形の専門外来を設置している医療機関がありますので、かかりつけの先生とよく相談してみましょう。最近では医療機器の承認を取得したヘルメットもあります。
Q4 右のこめかみあたりがややへこんでいるように思います。ドーナツ枕を使ったほうがいいでしょうか?(2ケ月・女の子)
A4 2ケ月以降はドーナツ枕の効果はあまり期待できません
こめかみがへこんでいるように見えるのは、向き癖により左右どちらかの後頭部が平になっているためだと考えられます。真ん中部分がへこんでいるドーナツ枕は、「絶壁」を防ぐために赤ちゃんに使っている方もいるでしょうが、そもそも赤ちゃんに枕は必要ありません。ドーナツ枕は、1ケ月ごろまでは向き癖をつけない効果があるようですが、2ケ月以降は頭が大きくなるためあまり効果は期待できないようです。
Q5 頭の形のゆがみは脳の発達に影響を及ぼすのでしょうか?(10ケ月・女の子)
A5 向き癖によって頭の形がゆがんでも脳の発達に影響ありません
向き癖によって頭の形がゆがんでも、脳の発達に影響を及ぼすことはありません。ただし、ごくまれに頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)という病気を発症し、頭蓋骨の拡大が起こらずに形がいびつになり、脳の発達が妨げられる場合があります。頭の形のゆがみが強かったり、進行していると感じられたりする場合は、小児脳神経外科や形成外科など専門の科を受診してください。
頭の形にはさまざまな「ウワサ」があります。「頭が大きいとIQ(知能指数)が高い」、「後頭部が出っ張っていると運動神経がいい」、「頭の形がゆがんでいる子はまっすぐ歩けない」といったウワサはいずれも、医学的根拠のある話ではありません。こういった話を聞くと、最初は「そうなの?」と思ってしまいがちですが、医学的に根拠のある話なのかどうか、冷静な判断を。情報の発信元をきちんと確認し、根拠のない情報に振り回されないように注意しましょう。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/金子剛先生
国立成育医療研究センター副院長、感覚器・形態外科統括部長、日本形成外科学会専門医、日本頭蓋顎顔面外科学会専門医。
慶應義塾大学医学部卒業。米国ワシントン大学形成外科留学、慶應義塾大学専任講師などを経て現職。専門は小児形成外科。2011年11月より「赤ちゃんの頭のかたち外来」を開設し、赤ちゃんの頭の変形の診断と診療を行っています。
参考/ひよこクラブ2016年10月号「0~2才 うちの子の頭の形・髪の毛 これって大丈夫?」、一般社団法人日本頭蓋顎顔面外科学会ウェブサイト(頭蓋骨縫合早期癒合症の説明)