落合陽一の♯ミライ育児「幼い頃からのお受験は必要ない」
独特の未来ビジョンを提言し「現代の魔法使い」と呼ばれ、テレビなどメディアに引っ張りだこの落合陽一さん。メディアアーティスト、大学教授、実業家といった顔のみならず、最近はコメンテーターとしても注目を集めていますが、実は1才の男の子と誕生したばかりの女の子のパパでもあります。そんな落合さんが語る#ミライ育児に必要なこととは? 日常的に色々なことを「言語化」させていくことの大切さや、「小・中学校の私立受験は必要ない」といった持論を伺いました。落合さんの「#ミライ育児」企画は、『たまごクラブ』1月号(12月15日発売)にも連載として掲載中です。
※「ミライ育児」は、たまひよ創刊25周年の記念キャンペーンです。これからの育児について、著名人へのインタビューを実施。一般の方からも“#ミライ育児”のハッシュタグで意見を募集しています。
詳細はこちら。
第1回 現代の魔法使い落合陽一「これからは尖った人間が生き残る」
第2回 落合陽一の#ミライ育児「息子は幼稚園に通わせない」その理由
第3回 落合陽一の♯ミライ育児「幼い頃からのお受験は必要ない」(本記事)
親の希望を押し付けず、子どもの好きなことを支える
自分の子どもに、「こうなってほしい」「こういう職業に就いてほしい」といった考えを持つのはやめたほうがいいと思います。今ならユーチューバーになるという夢だっていい。子どもが何かに興味を持ったら止めないことです。小さいころから、その子が何をしたいのか、何をしているのかを親は見守って、支えてあげればいい。言葉を話すようになる前からだって、子どもにはちゃんと意思があります。たとえば、うちの息子は今なぜか、常に右手にパンを持ちながら行動していますが、それだって今の彼のアイデンティティーなんです。右手にパンを持って、幼児向けのスクーターに乗って家中を走り回っています。
スクーターは当然大人のものは与えられないし、楽器なんかは体のサイズの問題があるので子ども向けにしていますが、できる限り本物を与えたほうがいいです。コンピューターも子ども向けの簡易的なものがあるけれど、与えるならちゃんと大人用のものがいい。カメラやスマホも、うちは大人用を渡しています。
親が質問を重ねることで、自ら考え、表現する力が身につく
言葉を話すようになってきたら、“ちゃんと聞いて”対応してあげることが大切。そして意識的に、色々なことについて「言語化」させていったほうがいい。たとえば、幼稚園から帰ってきた子が「今日は楽しかった」と言ったとき、「よかったね」で終わらせるのではなく、「何が楽しかったの?」「いつもとは何か違ったの?」などと「楽しかった」という抽象的な感覚を言語化するための質問を重ねてあげるんです。
そうしていくことで、自ら考える力、思考能力が身に付き、ひいては自分の考えを人にプレゼンできるようになる。何かを実現したり、獲得するためには、他人にきちんと伝える能力が必要ですからね。
他人がつくった目標をクリアする受験は必要ない
僕は日本の集団教育に抵抗があるので、うちの子どもを幼稚園に通わせるつもりはないのですが、小さいころからの受験勉強についても必要ないと思います。わざわざ受験に最適化された子をつくってもしょうがない。本人がその学校に入って楽しいのならいいけれど、小学校や中学校の私立受験は、親の好みで決まるのがほとんどですよね。そしてその学校に合格することが目的になってしまう。
最終的には大学受験で合格することがゴールになって、達成したら目標がなくなってしまう。僕は他人が定めた目標をクリアすることが人生だとは思ってほしくない。小さなころから自分で考えて、自分でやりたいことに向かってどう動いていけばいいのかを、きちんと考えられる子になってほしい。そうでないと、大学を出たあとに、どうしていいかわからなくなってしまう危険性があると思います。
これからの社会は、何かをやり始めることのコストが低くなり、何かしようと思うか思わないかの勝負になる。何もしたくないという人と、何かしようと思っている人の差が、ますますついていきます。そうした社会をサバイブしていく子のために親ができることは、とにかくその子が何かしようとするプロセスを邪魔しないこと。ぐうたらしているのがすべてだと思っていると駄目ですよ。親自身がね。
落合陽一さん プロフィール
メディアアーティスト、博士(東京大学・大学院学際情報学府)。筑波大学准教授・学長補佐。1987年東京生まれ。近著に『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館)、『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』(PLANETS/第二次惑星開発委員会)など。
(撮影/有坂政晴<STUH>、取材・文/望月ふみ、撮影協力/BLOSSOM&BOUQUET秋葉原UDX店)