わたしたちは未来を育てている ―新妻聖子の子育て論
(C)中村和孝(まきうらオフィス)
2018年7月に男の子を出産した女優・歌手の新妻聖子さん。つらい産後を乗り越え、家族ぐるみでわが子を育てる新妻さんに、子育ての中で日々感じることや、これからの育児(#ミライ育児)に必要なことを伺いました。
※「ミライ育児」は、たまひよ創刊25周年を記念して実施しているプロジェクトです。これからの育児について、著名人のインタビューをはじめ、”#ミライ育児”のハッシュタグで投稿を募集しています。詳細はこちら
つらかった産後。痛みと寝不足で心身ともにボロボロに!
妊娠中から出産の大変さは覚悟していたんですけど、産後がこんなにつらいなんて想像していませんでした。体中が次から次へと痛みだすし、授乳もうまくいかない。頻回授乳による寝不足もあって、3週間は心身ともに疲弊していましたね。
夫は子育てに積極的に参加してくれています。出産後は病院に泊まってくれて、初めての夜間授乳を一緒にしたんです。大変さを共有できたことで、同時に子育てのスタートラインに立てました。今は、私が仕事のある日は彼や両親がサポートしてくれて、家族ぐるみで育児をシェアしています。
赤ちゃんに愛を惜しみなく注げる世の中に
子育てをしていてあらためて思うのは、赤ちゃんって本当に天使なんだなと。もちろんギャン泣きされて心が折れそうになるときもありますが、赤ちゃんが笑顔になると、無条件に顏が緩みます。かわいいを通り越して感動で込み上げてくるものがあるくらい。邪気のまったくない美しいあの笑顔は、天使としか思えないんです。「赤ちゃんはよく泣くから欲の塊だ」と言う人もいますけど、あんなに無垢(むく)な命がただ愛だけを欲して泣いているのだから、そこは大人が惜しみなく愛を与えてあげなければいけないと思うんです。生まれたばかりの赤ちゃんに必要なのはミルクだけではなくて、ぬくもりや愛、大好きだよという語りかけや、優しくなでてくれる手、そういったものがないと絶対にダメなんだと思います。
でも、大人が1人で赤ちゃんに十分な愛を注ぐのは難しいこと。社会全体が「自分たちの子ども」という思いで、子育てをサポートし、見守ってくれたらうれしいなと思います。保護者が心に余裕を持ってわが子に愛を注ぐためには、身近な人の助けはもちろん、公共の場での生きやすさも大きく影響してくるはずですから。少し大げさかもしれませんが、赤ちゃんが愛情たっぷりに育てられて、優しい心を持って成長できるかどうかで、その国の未来が変わると思うんです。赤ちゃんは希望そのもの。みんなで育てていくべきです。
マイナス感情ではなく感謝の気持ちを発信したい
子育てをしていて、たとえば公共の交通機関などでネガティブなことを言われたり、冷たい視線を向けられることもあるかもしれません。そんなときは、まずこちら側に失礼がなかったか、マナー違反をしていないかを謙虚に考える視点を持つこと。とっさには難しいかもしれませんが、子連れであろうがなかろうが、その思考回路は必要な気がします。それでもどう考えても今のは意地悪だったなぁと感じた場合も、いろんな価値観の方がいるんだなと、気持ちを切り替えるようにしています。気持ちがへこんだままのときは家族に電話したりはしますが(笑)。それよりも「ベビーカー手伝いましょうか」と優しく声をかけていただいたり、「あら赤ちゃんかわいいわね」と話しかけてもらってほっこりしたりと、そういうエピソードのほうがむしろ多いですね。そちらのほうを「うれしいなぁ、ありがたいなぁ」としっかりかみしめるようにしています。
SNSなどでも「悲しい」とか「悔しい」思いを発信するより、よかったことや感謝の気持ちをシェアしたほうが、目にした人の心にポジティブなものが広がって、巡り巡って自分にも回ってくるんじゃないかなと思うんです。
今は仕事にも少しずつ復帰していて、育児とのバランスがうまく取れずに落ち込んだりすることもあるんですが、何よりも息子が健康で、毎日私に笑顔を見せてくれていることがただただ幸せ。たりないものをカウントするのではなくて、ありがたいと思うことに目を向けて、これからもいろんなことを発信していきたいですね。
プロフィール
新妻聖子(にいづませいこ)さん
1980年生まれ。2003年に5000倍のオーディションを突破し、「レ・ミゼラブル」で初舞台に立つ。その後、数多くのミュージカルに出演。情報番組のコメンテーターなどテレビ出演も多数。2019年3月より全国11ヵ所13公演のコンサートツアーを開催。
撮影/花盛友里 取材・文/川辺美希