【専門家監修】赤ちゃんのげっぷは「いつまで?」「コツは?」 “出ない・しない”はどうする?
新生児期のときや、まだ赤ちゃんのお世話に慣れないうちは、授乳後にげっぷをさせることが本当に大変ですね。「何をしても出ない…」「こんなに吐いて大丈夫?」など心配する場面も多いでしょう。でも、母乳育児の赤ちゃんは、げっぷをさせても出ないことが大半のようです。一方で、げっぷをさせることに慣れてくると、「げっぷはいつまで続けるの…」とモヤモヤし始めることもあるのでは? そんな悩みを解決すべく、げっぷが必要な理由や正しいげっぷの出し方、「いつまで?」「出ない原因は?」など、げっぷに役立つ対処法について、助産師の小澤千恵先生に伺いました。
新生児や赤ちゃんにげっぷをさせる理由は? 正しい出し方&出ないときの対処法までマルッと解説!
お産入院先で教えてもらった気もするけれど、小さくてふにゃふにゃの赤ちゃんのお世話に日々追われるうちに、「とにかくげっぷをさせなくちゃ!」ということばかりが頭に残りませんか? 「なぜ、授乳後にげっぷさせるのだろう…」ということが抜け落ちてしまっていることもあるでしょう。ここでは、赤ちゃんにげっぷをさせる理由と正しいげっぷの出し方について解説します。
新生児や赤ちゃんにげっぷをさせる理由とは?
生後28日未満の新生児も0歳代の赤ちゃんも個人差はありますが、母乳やミルクと一緒に多くの空気を口から吸い込んでしまい、余分な空気を胃の中にためてしまいがちです。おなかに空気がたまると、苦しそうにしたり、飲んだ母乳やミルクが逆流して吐き戻すこともあります。そのため、授乳後は赤ちゃんにげっぷをさせて、吸い込んだ余分な空気を出すことが必要です。ただし、母乳オンリーの赤ちゃんは、ママの乳首から直接おっぱいを飲むため、空気を吸い込みにくく、げっぷをさせても出ないことがほとんどです。
とは言え、赤ちゃんの胃は大人の袋状の胃と異なり“とっくり”のような縦長の形状。母乳やミルクが入り込む部分などの機能も未熟なので、一度にたくさん飲んだり、なんらかの刺激があると吐きやすいことは共通しています。すぐにコツをつかんで上手にサポートできるママやパパは多くはないので、まずは正しいやり方を知り、授乳のたびに繰り返しながら徐々に慣れていきましょう。
背中を伸ばすのがコツ♪ 正しいげっぷの出し方をチェック!
新生児や赤ちゃんの正しいげっぷの出し方を見ていきましょう。生後28日未満の新生児向けと、1ヶ月健診を終えた赤ちゃん向けの方法を解説します。赤ちゃんの中には、空気をそれほど吸い込まない子もいて、げっぷが出ない場合もありますが、「授乳したらげっぷ」が基本です。飲んだ母乳やミルクを吐いてしまうこともあるので、あらかじめタオルなどを用意しておくといいでしょう。
生後まもなくの新生児向け!げっぷの出し方
赤ちゃんをたて抱き→背中をスリスリ
(1)ママやパパが赤ちゃんの首を支え、たて抱きする。
(2)ママやパパの肩に赤ちゃんをもたれかけさせ、胃に入った空気が口に上がってくるように、背中を下から上へやさしくさすったり、トントンします。
1ヶ月健診を終えた赤ちゃん向け!げっぷの出し方
ママやパパのひざに座らせる→背中をスリスリ
(1)ママやパパは椅子に座り、自分のひざの上に赤ちゃんを横向き寝させ、片方の手で赤ちゃんの首と胸部を支えながら上体を起こす。上体を片方の手にもたれさせながら自分のひざの上に座らせる。
(2)片方の手で赤ちゃんの胸部を軽く圧迫するように支え、胃に入った空気が口に上がってくるように、赤ちゃんの背中を下から上へスリスリする。
「げっぷが出ない…」そんなとき、どうする?
上手に飲めている子や母乳育児の赤ちゃんは、ママやパパがサポートしてもげっぷが出ないことはよくあります。体重増加が順調、機嫌がいい、眠れている、おなかの張りがそれほどないなどの場合は心配なくていいでしょう。でも、出ないからと、赤ちゃんの背中を強くたたくのは厳禁。縦抱きで室内を少し歩いたり、5分くらい背中をさすって様子を見てもげっぷが出ないときはサポートしなくて大丈夫です。ただし、げっぷが出ないままで寝かせて吐いてしまうと、のどを詰まらせることがあります。げっぷが出ないことが病気の症状になることはありませんが、赤ちゃんの様子や症状によっては、病気が潜んでいる場合も。次の「げっぷが出ないときの対処法」をしっかり確認して対処しましょう。
【げっぷが出ないときの対処法】
1:右半身を下にして寝かせる
体の右側を下にして、丸めたバスタオルを背中に挟んで寝かせると、消化を促すので試してみてもいいでしょう。
2:横向きに寝かせる
赤ちゃんの顔と体を横向きにして寝かせましょう。布団にバスタオルなど敷いておくと安心です。
3:この様子があったら受診して!
以下の様子や症状があったり心配なことがある場合は、小児科医に相談することをおすすめします。
(1)体重が増えない
(2)機嫌が悪く眠れない
(3)元気がない
(4)おなかが張って苦しそう
(5)母乳やミルクを噴水のように大量に吐く
(6)母乳やミルクを吐き戻す回数が頻繁
(7)便の量が少ないなど
先輩ママに学ぶ! げっぷが出ないとき、どうした? 赤ちゃんの様子は?
「たて抱きしても背中をさすっても全然出ない…」という赤ちゃんは少なくありません。育児に関する口コミが満載の「ウィメンズパーク」でも盛んにやりとりされている、このテーマ。先輩ママたちはいったいどのように対応したのでしょう。そのときの赤ちゃんの様子も交えた実体験を紹介します。げっぷが出ない赤ちゃんは、ほかの方法で余計な空気を出していることもあるので、その点についても見ていきます。
教えて! 先輩ママ 赤ちゃんのげっぷが出ないとき、どうした?
その1
うなって苦しそうな時期もあったけれど、横向き寝&大きなおならで解決!(4ヶ月のママ)
どれだけ背中をトントンしてもげっぷがうまく出ず、ずっとうなっていました。横向きで寝かせてあげると、うなることが減り、げっぷの代わりにおならが出るように。でも、おならも上手に出せないころはいきんで苦しそうだったな。今は、赤ちゃんとは思えないほどの大きな音でおならをします(笑)。結局、げっぷはほとんどせずに成長し、現在に至ります。
その2
首まわりにガーゼを常備して授乳。吐いてしまってもあわてず安心!(4歳のママ)
背中をさすっても上手にげっぷは出ず、よく吐いていました。生後3ヶ月ごろまで続いたかな。洗濯は1日2回しないと着せる服がたりないほど。何度も着替えさせるのは大変だったので、ガーゼを息子の首まわりに置き、即席スタイのようにしてしのぎました。吐いてばかりだったので栄養不足を心配しましたが、今では幼稚園で1、2位を争うほど元気でやんちゃな男子に成長中です。
その3
1ヶ月健診で相談。4~5カ月ごろから改善してスクスク成長中(3歳と6ヶ月のママ)
上の子はげっぷを出すのが上手だったのですが、下の子は苦手みたいでほとんど出ず、よく吐き戻していました。1ヶ月健診で相談したら、「元気だから大丈夫! 今はたくさん飲みすぎているのだろうけれど、満腹中枢(まんぷくちゅうすう)がしっかりすると飲む量も落ちついてくる」とのこと。うちは、4~5ヶ月ごろから吐かなくなりました。体の機能が少しずつ整ってきたのかな? 医師の言うとおり、だんだんと落ち着いてきましたよ。
しゃっくりやおならで!? げっぷ以外にも赤ちゃんは余分な空気を逃がします
母乳やミルクと一緒に空気を吸い込むと、胃の上部にある「横隔膜(おうかくまく)」のあたりを圧迫させることがあります。「横隔膜」がけいれんして「しゃっくり」をする赤ちゃんもいます。赤ちゃんを見ていると「苦しそう…。大丈夫かな」と心配になりますが、大人のしゃっくりよりも苦しくはないと言われています。長時間続く子もいますが、病気ではありません。また、吸い込んだ余分な空気はおならでも外に出します。どちらも原因はげっぷで出しきれない余分な空気を逃がすだけではありませんが、赤ちゃんの体は素晴らしいしくみを持ち合わせているのです。しゃっくりもおならも心配しすぎないようにしましょう。
卒乳までずっと? 赤ちゃんのげっぷは“いつまで”が正解?
「いつもの習慣で授乳したら背中をさすっていたけれど、最近全然出ないし、吐くこともないし…」赤ちゃんにげっぷをさせることに慣れてくると、こんなギモンを抱くママやパパもいるでしょう。果たして、げっぷをさせるサポートは“いつまで”が正しいのか、確認していきましょう。
7ケ月ごろになるとげっぷは自分で出せるように
首がすわり始める3~4ヶ月ごろになってくると、赤ちゃんの背中をトントンしたり、スリスリしてもげっぷが出ない子がグンと増えます。自分の意思で体を動かせるようになると、母乳やミルクと一緒に飲み込んだ空気をおならなどで出せるように。7カ月ごろになると、自分でげっぷを出せるようになります。ただし、げっぷを出したいのに出なくて苦しそうな様子や、不快そうにしていたら、背中を下から上にさするなどのサポートをしましょう。
“ダラ~ッと吐く!””噴水のように吐く…”これって病気?
「赤ちゃんが母乳やミルクを吐きやすいのはわかっているけれど、ダラダラと吐くのは大丈夫?」「勢いよく噴水のように吐くのは病気?」。背中をさすっても出ないげっぷは心配いらないとは言え、赤ちゃんが吐いてしまうと、苦しそうだし、心配になりますよね。そんなママからのお悩みにアンサーします。
ママのお悩み1:ダラダラと吐く
Q:服がビショぬれになるほどダラダラ吐きます。様子見でいいの?(2ヶ月のママ)
たて抱きにしたり、ひざの上に座らせて背中をスリスリなど、げっぷが出るようにサポートしていますが、ダラダラと服がビショぬれになるまで吐きます。しばらく様子を見ている間にも吐くし、落ち着いたと思って寝かせても吐くし…。体重は増えているから問題ないと医師に言われましたが、これは“いつ乳”というものですか? このまま様子見でいいの? 着替えも洗濯も頻回だから、イライラして子どもに八つ当たりしそう。気持ちが沈みます。
A:おそらく「いつ乳」でしょう。心配なら受診を
何をしてもげっぷが出なくて、赤ちゃんが何度も母乳やミルクを吐いてしまうと、ママは心配が募るだけでなく、その後のお世話も大変ですね。吐いたあと、赤ちゃんが眠れていたり、元気で機嫌がよければ様子を見ていても。いつ乳は、赤ちゃんの口の端から母乳やミルクがダラダラと垂れてくる状態のことを言います。元気で健康な赤ちゃんでもよくあることですが、このときは抱っこして様子を見ましょう。ただし、授乳のたびに吐いてしまって毎日のように続く、元気がない、体重が増えないなどの様子がある場合は小児科を受診しましょう。
ママのお悩み2:激しく吐く
Q:上の子は「急性胃腸炎!?」と思えるほど激しく吐いていました。これは“吐乳?”(4歳・2歳・生後2週間のママ)
上の子2人は、「ノロウイルスに感染しているのでは?」というほどの勢いで7ヶ月くらいまでよく吐いていました。家族で出かけるときは、吐いたときに必要なタオルや子どもの着替えだけでなく、大人の着替えも持参するほどでした。第一子のときはとても心配で、病院に連れていったりネットで調べたりしましたが、体重が増えていたので様子見でいいと言われました。2人ともぽっちゃり体形でスクスク育っていますが、これは、“吐乳(とにゅう)”というものだったのでしょうか?
A:赤ちゃんの体質が吐いてしまう原因かも
吐乳(とにゅう)は、噴水のように勢いよく母乳やミルクを毎回吐くことを言います。吐いたあとにケロッとしているなら、赤ちゃんの体質によるものか、飲みすぎが原因かもしれません。ただし、飲むたびに吐く、噴水のように吐く、体重の増えが悪い、元気がない、便の量が少ないなどのときは小児科医を受診することをおすすめします。
ママのお悩み3:便秘がひどい
Q:姉妹とも飲んで吐いての繰り返し。下の子は便秘がひどかったです(2歳5ヶ月と8ヶ月のママ)
2人とも本当によく吐いていました。でも、上の子は体重増加が著しく健康優良児。下の子は便秘もひどくて浣腸(かんちょう)しないと便が出ない状態でした。小児科で相談して、お腹のレントゲンやエコーを撮ると、“胃軸捻転症(いじくねんてんしょう)”という診断がつきました。胃の軸がねじれていたんです。どうやら上の子もこの症状があったみたい。寝返り期やはいはい期は圧迫されるのか多少吐いていましたが、おすわり期はほとんど吐かなかったです。気づけば、いつの間にか吐かなくなり、元気に過ごしています。
A:げっぷが出ない、よく吐く、おなかが張っているなどの症状があるときは、胃軸捻転症かも
胃軸捻転症(いじくねんてんしょう)の赤ちゃんはそれほど多くはありません。成長とともに自然に治ることもありますが、急性期(症状が急激に現れる時期)は治療が必要です。新生児や赤ちゃんは胃の発達が未熟なため、胃を固定しているじん帯や腸間膜(ちょうかんまく)などの力も弱いことから、胃がねじれやすく、それが一因となって便秘になる子もいます。便秘がひどいと感じる場合は受診します。新生児のころは吐いてしまうことが多い傾向にありますが、体重の増えが順調で、吐いたあとに機嫌がよければ大丈夫でしょう。
母乳育児もミルク育児も、赤ちゃんが飲んだあとにげっぷが出なくて苦しそうにしているのを見ると、いてもたってもいられない気持ちになりますよね。「何がなんでも出させなくては!」と頑張りすぎてしまうとイライラして赤ちゃんに愛情が届きにくくなるかもしれません。ママの気持ちは想像以上に赤ちゃんに伝わり、機嫌が悪くなることもあるようです。”困った! どうしよう…”と思ったら、家族の協力を得たり、医師や助産師さんなどにアドバイスをもらうなど、ママ1人で悩みを抱え込まないようにしてくださいね。(取材・文/茶畑美治子)
■文中のコメントは口コミサイト『ウィメンズパーク』の投稿を再編集したものです。
初回公開日 2019/02/10
育児中におススメの本
最新! 初めての育児新百科 (ベネッセ・ムック たまひよブックス たまひよ新百科シリーズ)
大人気「新百科シリーズ」の「育児新百科」がリニューアル!
新生児から3歳まで、月齢別に毎日の赤ちゃんの成長の様子とママ&パパができることを徹底紹介。
毎日のお世話を基本からていねいに解説。
新生児期からのお世話も写真でよくわかる! 月齢別に、体・心の成長とかかわりかたを掲載。
ワンオペおふろの手順など、ママ・パパの「困った!」を具体的なテクで解決。
予防接種や乳幼児健診、事故・けがの予防と対策、病気の受診の目安などもわかりやすく紹介しています。
切り取って使える、「赤ちゃんの月齢別 発育・発達見通し表」つき。