“悪魔の3歳児”のいたずらの度が過ぎる! みんなはどう対処してる?
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2歳のイヤイヤ怪獣を卒業すると、悪魔のいたずら3歳児に!なぜいたずらをやめられない?子どもの興味関心を伸ばしてあげたいが危険なことは避けたい・・・。親としてはどのように対処するのがよいのでしょうか。ウィメンズパークに寄せられたママからの悩みについて、接し方・しかり方・対処法を教育学の専門家である、汐見稔幸先生にアドバイスをいただきました。
ママの悩み①:いたずらっ子の3歳児。大惨事の毎日でどう対処したらいい?
子どもが早朝に一人で起きて悪さをします。本人は悪いことをしている自覚があり、私が起きてくると逃げます。隠そうとした痕跡もあります。今までしたいたずらは数えきれず…部屋の壁紙を破って剥がしたり、ポーチの中をあさってクリーム類でベタベタにしたり、、、その他多数大惨事を起こしています。
子どもの目を見て、静かにやめてほしいことを伝えたりもしました。その場では「やめる」「反省する」「ごめんなさい」と言いますが、翌朝はまた大惨事です。他にも様々な方法(怒る・共感・悲しむ等)で伝えてみましたが、どれも無駄でした。どのように対処するのがいいでしょうか。
3歳児のいたずらは2歳児と少し異なります
ママたちからは、3歳児のいたずらについての悩みが多くみられます。「3歳」がとくにいたずらっ子なのでしょうか?この時期特有の理由などあるのでしょうか。汐見先生に伺いました。
ーーー(汐見先生)「3歳児のいたずらというのは、育ちの過程である意味必然的に出てくるものです。子どもによる違いは大きいですが、発達的にはこの時期独特のものといえるかもしれません。2歳児は『魔の2歳児』という言葉があるようにとても扱いにくくなる時期ですが、自覚的にいたずらをするというよりは自我の育ちが未熟で、自己主張と自己抑制のバランスがうまく取れない時期といえます。それに対して3歳児のいたずらは、ある程度の社会性が育ち始め、物事の善悪もわかり始めているので、2歳児のイヤイヤとは少し質が異なります。
その背景にはまず、認知能力と身体能力、何でも試してみたいという意欲が強く出てきたということがあります。認知能力の育ちというのは、あれしたら面白いだろうな、これは動かせるのかなといったことがどんどん増えてきたということです。人間は10の力が身につくと、11,12の力が必要なことに勝手に挑もうとするようになります。その意味で、今までできなかったけど僕はもうできるんだ、と試してみたがるタイプの子はあれこれどんどん試します。わが家では、息子がドライバーを持って外せるネジは全部外して回っていました。ダメといっても、目の前のネジの魅力にすぐ負けてしまうのですね。
ただこの時期は、何かが起こってもママやパパがフォローしてくれるはずというある種の甘えが前提になっています。僕、私、こんなことできるようになったよ、パパ、ママ見て、ということも隠れた動機になっているのです。だから、失敗してもフォローしてくれるはずと思ってやりますので、子どもによっては向こう見ずなことをしてしまうことがあります。いたずら好きな子は、そうした性格ですから将来も試したがり屋になりますし、人が驚くのを楽しむいたずら好きな子になる可能性が大です。そんなことをしても認めてくれるわけではないよ、ということの理解力すなわち社会性の育ちがまだ不十分なだけで、一種の面白い個性です」
ママたちの対処法:わが家のいたずら対処法!荒療治も時には必要かも?
様々な手法でいたずらを繰り返すわが子。ママだってあらゆる手を使って阻止!考え方を変えたり、接し方を変えてみたり、いろいろやってみる手はありそうです。
思わぬいたずらにびっくり!でもそれはギリギリチャレンジだと思って!
私は子どもの「なんでこんなことするの?!」の行動をギリギリチャレンジと表現しています。「できるかな?どうかな?おお!できたー!見つからずにできたぞー!」と遂行した事が、イタズラなんだよ…って。
「私はあなたを見てますからね」という姿勢を見せればギリギリチャレンジも終わるんじゃないですかね。
あと、うちは賃貸ですが「もう退去の時に金を払う!だから好きにする!」と粘着系、ネジ系の対策グッズは付けました。一旦不便にはなりますが触られたくない物は全部キッチンの上の扉収納に、という事もありました。万年筆のインク、化粧品、ペン類も全部キッチンの扉に。できる対策、できる態度の見せ方はまだまだある!と思っています。
少々不便でも大人が我慢。固定することで移動させない、という工夫も。
うちは、小さい頃は椅子と机を紐でくくりつけていました。椅子を机に入れた状態で紐で固定。ハサミは椅子を持ってしてもとれない高さに置く。椅子は全て紐などで柱などに固定。大人のおやつは買い置きしない。めんどくさいけど危ない事態にならないようにと。
あまり真剣になりすぎず、でもときどき笑ってあげる。
では、いたずらをしたときに、親はどう接するのがよいのでしょうか?親が実践できそうな接し方・しかり方について汐見先生は・・・
ーーー(汐見先生)「あまり真剣に相手にならないことが大事です。真剣に相手をすると、自分には親を真剣にさせる力があるんだと思ってもっとやりたがる可能性があるからです。その上で、あぶないことにならないように環境を整えるとか、これ以上やるとママも怖いわよ、ということを必要に応じて伝えることです。そしてときどき笑ってやってください。笑われると、あまり親を驚かせる効果がないなと思ってしばらくするといたずらが減っていく可能性があります」
ママの悩み②:いたずら対策がトラウマになってその後、影響することもある?
「番犬ガオガオ」「バイキンマンを歯磨きする?」というオモチャをもらったのですが、子どもがかなり怖がるので遊べませんでした。そこを逆手にとり、入ってほしくないスペース二箇所に置いたところ、全く近づかなくなりました。スイッチを入れるとリアルな音が出ますが、スイッチ入れなくてもいつか鳴き出すと思うらしく、置くだけで効果がありました。たまに、両親で噛まれる演技をしたりも。その間、時間をかけて「良い」「悪い」を教えていきました。トラウマになるかも?なども考えましたが、今は4歳になり楽しく遊べています。
子どもが怖がるもので注意するのが有効なことも
ママたちの苦労がみえるいたずら防止策。汐見先生も有効な方法はないと言います。ママたちができることとは?
ーーー(汐見先生)「いたずらを防止する、有効で一般的な方法はありませんが、子どもが怖がることが何かあれば、いたずらをするとその怖がることが起こる、怖がるものが来る、というような脅しが有効なことがあります。また危険なものはよけるとか動かないようにしておくなど、親として防止策をしていることを示すことも必要でしょう。
ちなみに、私が3、4歳の頃、高いところから飛び降りるのが好きで、布団を高く積み上げてそこから遠くへ思い切り飛び降りたときにおでこが鴨居に見事に直撃し、おしりから落ちて一瞬気を失った記憶があります。今でいうむち打ち症になったのだと思います(その後、後遺症がないか今でも心配しています)が、だからといってその後、飛び降りをやめたわけではありませんでした。子どものいたずらとはそういうものです」
いたずらは一種の個性なのですね。そう思えば常にイライラ!っとしていたママの気持ちも少し落ち着くかも…? 絶対に危険なものは避けておくなど防止しつつ、今の時期特有のいたずらを楽しむ!くらいの気持ちで見守れるように、気持ちを切り替えられたらいいですね。
(取材・文/真山りせ)
■汐見 稔幸先生
東京大学名誉教授・白梅学園大学名誉学長
1947年 大阪府生れ
東京大学教育学部卒、同大学院博士課程修了。
東京大学大学院教育学研究科教授を経て、2007年4月から白梅学園大学教授・副学長、
同年10月より2018年3月まで学長。
■文中のコメントは『ウィメンズパーク』の投稿を再編集したものです。