どうする子育てにかかるお金。貯蓄?投資?まずは生活防衛資金が大事
第3回。今回のテーマは、「生活防衛資金ってなに?」。
将来のお金が不安。投資も気になるけど、子育てが忙しくて手が回らない……という新米ママ・パパに伝えたいのが、手間をかけずにできる、ほったらかしインデックス投資。
ブログで投資経験を綴り、著書も出版、インデックス投資家のバイブル的存在として知られる投資ブロガー・水瀬ケンイチさんが、超カンタンガイドしてくれます。
「新米ママ・パパむけインデックス投資講座。教えて!ほったらかし投資家・水瀬さん」第3回。
投資に欠かせない「生活防衛資金」
こんにちは、水瀬ケンイチです。連載3回目となる今回は、投資をする上で超・超・超!がつくほど大事な「生活防衛資金」のお話をしたいと思います。
前回予告した通り、インデックス投資を始めるのは、必ずこの回を読んでからにしてくださいね。それぐらい大事な回ですので、難しくてもおつきあいを。
投資を始める前に、必ず用意しておくべきと私が考えているもの、それが「生活防衛資金」です。
生活防衛資金とは、文字通り、生活を守るお金。大きな災害やまさかのリストラ、病気やケガなどで働けない……そんな万一の大ピンチがやってきた時、自分や家族の生活を守ってくれる備えの預貯金のことです。
投資は、誰も責任をとってくれません。最悪のケースが起きても、生活は絶対に壊さない。ましてや子どもの教育費を崩すようなマネはしない。何よりも大切な家族と暮らしを守る「鉄壁の守り」を確保した上で、行うべきです。
目安は生活費の2年分
では、どのぐらいの備えがあればいいか。
私は、目安として、1ヶ月の生活費の2年分をおすすめしています。
新米ママ・パパのみなさんからは「そんな大金、すぐ貯められない!」「いつまでも投資できないじゃない!」という声が聞こえてきそうですね……。ですが、もう少しだけ聞いてください。
この生活防衛資金ですが、半年分で良いとする専門家もいます。ただ、実際に震災や災害で被災された方々は、避難生活が長期化しているケースが少なくありません。
災害に限らず、病気やケガの治療などで、元の生活に戻るまで1年以上かかることもありますし、いい転職先が見つからず、収入が激減する場合も。私の投資ブロガー仲間は、リーマン・ショックの不景気でリストラされてしまい、転職までに10ヶ月かかったと言っています。
保険や国のフォローがあったとしても、「万一」の備えが3ヶ月や半年分では心もとないのが、多くの皆さんと同じ、ごくごく普通のサラリーマンである私の正直な気持ちです。
ちなみに、生活防衛資金は、年収ではなく生活費の2年分。毎月の生活費を小さくすれば用意する金額も少なくていいんです。工夫次第でハードルはいくらでも下がります!
ここで元浪費家の私から、貯め方のアドバイスを1つだけ。生活防衛資金は、お給料が入ったら先取りで貯めましょう!残ったら貯めようでは、貯まりません。銀行の自動積み立て預金などを活用して、先取りを「仕組み化」するのが継続のコツです。
生活防衛資金の「安心感」は絶大!
もう一つ、私がこの「生活防衛資金」を声を大にしてお伝えしたい理由があります。
それは、これがあるのとないのとでは、投資の「耐久力」が全く違ってくるということ。
私は、長いインデックス投資生活の中で、リーマンショックと東日本大震災を経験しました。100年に1度と言われるほどの株の大暴落と急激な円高が起こり、市場は大損した投資家たちで阿鼻叫喚の嵐。
もちろん、私の資産も大きくマイナスになりました。でも、そこまでの焦りはなく、夜もぐっすり就寝。むしろ「円高は海外旅行のチャンス」とばかりに、南はマレーシアでビーチを楽しみ、北はアラスカでオーロラを生まれて初めて見てきました。
なぜそんな余裕があったのか。それこそまさに、「生活防衛資金」があったおかげなのです。何が起きても生活は大丈夫という、絶対的な安心感があったからこそ、焦らずインデックス投資を続けることができた。そして、その後のV字回復で、大きく資産を成長させることができたのです。
もし、あの時、私に生活防衛資金がなく、怖くなって資産を売ってしまっていたら、その後のV字回復も損を抱えたまま、指をくわえて見ているだけだったでしょう。
そもそも、大きく損をしている時期に売却なんて・・・想像するだけで涙涙で、いてもたってもいられません。
十分な生活防衛資金は、投資的にも精神的にも強い支えとなるのです。
生活防衛資金を貯めながら、投資してOK!
「じゃあ、生活費の2年分が貯まるまでは投資はできないの……」と、がっかりする必要はありません。だって、新米ママ・パパは若い世帯の人が多いはず。貯蓄がそんなにたくさんある人のほうがめずらしいですよね。
また詳しく話しますが、ほったらかしでオッケーなインデックス投資は、長く投資するほど、大きく増えることが期待できます。若ければ若いほど長く投資でき、有利なのです。ああ、若さがまぶしい……。
つまり、生活防衛資金を貯めるために、投資する期間を削りすぎてしまうのは、もったいない。そこで、新米ママ・パパにおすすめしたいのが、生活防衛資金を「貯めながら投資する」方法です。
仮に、毎月2万円ずつ用意できるとしたら、1万円を生活防衛資金、1万円をインデックス投資に積み立てる。貯蓄と投資を同時並行で進めるのです。
ただし、生活防衛資金が貯まるまでは、少し保守的な運用を心がける必要があります。そこは常に覚えておいてくださいね。
え?うちは毎月赤字だがどうすればいいか、ですって? まるでそれは若いころの私のような・・・。こほん。
その場合は何よりもまず、家計の黒字化を!赤字は、穴のあいたバケツと同じ。どんなに投資でお金を増やしても、下から漏れていては意味がありません。
家計の黒字化と、生活防衛資金。この2つはインデックス投資には欠かせない準備です。ぜひ、お盆休みの間に家計の見直しと、貯蓄の整理を行ってみていただけたらと思います。
さて、次回はインデックス投資のリスクについてお話します。大丈夫。できるだけ簡単に説明します!
どうぞお楽しみに!
ではまた!
お金は寝かせて増やしなさい
監修・水瀬ケンイチ イラスト・おぐらなおみ 取材・文 大上ミカ
1973年生まれ。IT企業に勤める会社員であり、個人投資家。2005年より、ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」で自身の投資経験を綴り、インデックス投資家のバイブル的存在として認知される。著書に「お金は寝かせて増やしなさい」(フォレスト出版)など
参考文献:水瀬ケンイチ著書
お金は寝かせて増やしなさい(フォレスト出版)
全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド(朝日新書)
投資は元本保証がありません。資産運用はあくまでもご自身の責任で行ってください。本連載の内容を実践したことによって被る損害については、いかなる理由があろうとも、監修者、運営社、執筆者ともその責任は負いません。