子どもが生まれて「貯める」だけでいいの? 投資? 必要なのは「リスク」の理解
今回のテーマは、「投資のリスクってなに?」。
将来のお金が不安。投資も気になるけど、子育てが忙しくて手が回らない……という新米ママ・パパに伝えたいのが、手間をかけずにできる、ほったらかしインデックス投資。
ブログで投資経験を綴り、著書も出版、インデックス投資家のバイブル的存在として知られる投資ブロガー・水瀬ケンイチさんが、超カンタンガイドしてくれます。「新米ママ・パパむけインデックス投資講座。教えて!ほったらかし投資家・水瀬さん」第4回。
いくらまでなら損しても耐えられるか?
こんにちは、水瀬ケンイチです!今回は、投資のリスクについてお話したいと思います。
投資にリスクはつきもの。経済ショックが起こり、投資した100万円が50万円になってしまう……なんてことも、たまにですが、あります。ええ、ありますとも!
実際、私はリーマンショックが起きたとき、それまで順調に殖えていた資産が、一気に半分になりました……。
ですが、「え、そんなのイヤ!じゃあやらない!」とページを閉じるのは、ちょっとお待ちを。
連載中何度も繰り返していることになりますが、子育てで超超忙しい世代にとって、ほったらかしでできるインデックス投資は、本当にぴったりだと思うのです。
そして、マイナスになる局面はあっても、インデックス投資は自分が耐えられるくらいにリスクを調整しやすいのも、実は大きなメリット。
どういうことかと言いますと、「最大で損をしても元金の20%まで」という感じで、損する範囲を「想定内」にコントロールできちゃう、というわけ。
そして、実はこの「私・僕はいくらまでなら損していても耐えられるか」を最初にきちっと考えること、つまり「自分が耐えられるリスクの範囲」(リスク許容度)を決めることが、インデックス投資成功のカギ。
ここさえ押さえれば、あとは本当にほったらかしでできますので、もう少しだけ聞いてくださいね。
ちょっと前になりますが、連載第2回「貯蓄だけでいいの? 教育費は? 老後は? 新米ママ・パパはお金をどう学ぶ?」で、インデックス投資で何を買うかについてお話したのを覚えていますか?
そう、「全世界株式」と「国内債券」のインデックスファンドでしたね。何を隠そう、自分が損する範囲は、この「国内債券」をどのぐらい買うかで決まります。
下に紹介する表をご覧ください。100万円を投資した場合の、最大損失金額の目安が並んでいます。ここでまず、1年でいくらまでなら損しても耐えられるか。その金額を見つけてみてください。
それが「自分が耐えられるリスクの範囲」(リスク許容度)になります。
え?この数字はどうやって出したのかって?ご安心ください。私が適当に考えた数字ではありません。
債券は安定した値動きをする資産で、大暴落がきても痛手は少ない傾向があります。つまり、債券の量を多くすれば、最大で損する金額は減らせるのです。しかも、先人たちの研究のおかげで、債券の量と損する金額の関係は計算が可能、というわけです。
リスクは「国内債券」で調整できる
●債券の割合と最大損失金額、およびリターン金額の関係(100万円投資した場合の1年後)
例えば、年間100万円を、国内債券0%、全世界株式100%で投資した場合、最大で32.5万円のマイナスになる可能性があります。期待できるリターンは5.4万円、最大で43.3万円になる可能性も。
国内債券を50%にすると、損する金額は最大でも16.2万円と約半分。
その分、期待できるリターンも少なくなりますが、実はそこまで大きく減りません。つまり、債券を賢く調整すれば、リターンをあまり下げずに、リスクを減らすことができるのです!
迷ったら、「年齢」を目安にしよう!
どうでしょうか?「数字は苦手!」と思った新米ママ・パパのみなさん。大事なことですので、なんとか読み解いてください。この連載は入門編ですので、できるだけ難しい話は省いて説明しています。が、もっと詳しく理解したいという方は、私の本「お金は寝かせて増やしなさい」(フォレスト出版)も参考にしてみてくださいね。
さて、リスクについてはわかった。わかったけど、それでも債券の量をどうするか迷った方のために、インデックス投資大国であるアメリカのセオリーをご紹介しましょう。それは、
100ー年齢=株式の比率
とするものです。現在30歳なら、100-30=70。毎月1万円を投資する場合、70%の7000円を株式、残りの3000円を債券にするというわけです。
インデックス投資は、長期投資が前提。若いうちは積み立てできる期間も長く、途中でマイナスになっても、復活する時間があるので、リスクの高い株式が多めでもよし。でも、年齢が上がって投資できる期間が短くなったら、リスクを減らしていく必要がある……というのが王道の考え方です。
この式は、年齢が高くなるほど、債券の割合が増え、より安全な運用になる仕組み。簡単で、とても理にかなった式と言えるでしょう。
リスクを制する者が、インデックス投資を制す!
リスクの話、いかがでしたか?インデックス投資は、毎月ほったらかして積み立てるだけと、とてもお手軽です。ですが、せっかく投資したお金がマイナスの局面になってしまうと…どうしても辛くて、やめてしまいたくなるのが人情というもの。これが厄介なんです。
かつて、ともにインデックス投資をしていた仲間たちも、リーマンショックや東日本大震災の大暴落で、マイナスの辛さに耐えきれず、去っていきました……。
でも、そこで「自分が耐えられるリスクの範囲」(リスク許容度)をわかっていた人は、投資を続けられ、その後のV字回復の波に乗り、大きく資産を殖やすことに成功できたのです。
つまり、続けられなくなるほどのリスクにしないことが、インデックス投資で成功する大原則。投資はつい、儲けることばかり考えてしまいがちですが、リスクから考えることこそ、成功の秘訣なのです!
次回は、そもそもなぜ「積み立て」なのか、続けると何がいいのかを解説したいと思います。
ではまた!
監修・水瀬ケンイチ イラスト・おぐらなおみ 取材・文 大上ミカ
1973年生まれ。IT企業に勤める会社員であり、個人投資家。2005年より、ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」で自身の投資経験を綴り、インデックス投資家のバイブル的存在として認知される。著書に「お金は寝かせて増やしなさい」(フォレスト出版)など
お金は寝かせて増やしなさい
参考文献:水瀬ケンイチ著書
お金は寝かせて増やしなさい(フォレスト出版)
全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド(朝日新書)
投資は元本保証がありません。資産運用はあくまでもご自身の責任で行ってください。本連載の内容を実践したことによって被る損害については、いかなる理由があろうとも、監修者、運営社、執筆者ともその責任は負いません。