かむ刺激により、脳への血流量が増える!「カミカミ食べ」がいい理由
幼児がよくかんで食べる「カミカミ食べ」をすることには、五感が刺激されることによるメリットがいくつもあるそうです。毎日の食事にぜひ取り入れたいところですが、それが簡単にできれば苦労はありません…。子どもにカミカミ食べをしてもらうために、苦戦しているママ・パパも多くいるのです。
カミカミ食べにはいったいどんなメリットがあるのか、そして、どのようにすれば、子どもはカミカミ食べをしてくれるようになるのか。おっぱい・ミルクから離乳食、幼児食へと移行していく1歳ごろからのカミカミ食べについて、幼児を対象とした食事学・調理学に詳しい柳沢幸江先生(和洋女子大学・家政学部教授)にお話を聞きました。
カミカミ食べを今すぐ始めたくなる 3つのメリット
柳沢先生によると、よくかんで食べることには、主に3つのメリットがあるそうです。
メリット1 五感が豊かになり、食べることが楽しくなる!
よくかんで食べているとき、人間は五感をフル稼働させています。まず、盛りつけを見て楽しむ(視覚)。香りを感じて、「おいしそう」と思う(嗅覚)。口に入れてからは、舌触り(触覚)、おいしさ(味覚)、かんだときの音(聴覚)まで楽しみます。五感を通して、食べることの気持ちよさが満たされるので、かむことで食べることが楽しくなっていくのです。
メリット2 かむ刺激で脳が活性化! 体の機能もアップ!
かむ刺激により、脳への血流量が増えます。それがなぜいいのかというと、血液には、体に必要な栄養や酸素も含まれているからです。つまり、かめばかむほど脳への血流量が増え、より栄養や酸素が脳へ送られることになります。
メリット3 唾液が出て、むし歯予防や消化吸収促進効果も!
よくかむことで唾液がたくさん出ますが、実はこの唾液には体を守る効果もあります。たとえば、むし歯予防効果。だ液はむし歯菌がつくり出す酸を中和する効果があります。だ液が出ていないと、その酸が歯を溶かしてしまいます。ほかにも、細菌の力を弱めたり、減らしたりする殺菌効果があるので、食べ物についている細菌から体を守ってくれます。さらには、だ液によって消化吸収が促進される効果もあります。食べ物を胃に送り込むこともスムーズになり、効率的に栄養をとることができます。
かんで食べるまでの5つのステップ
かむことのメリットがわかっても、子どもがすぐにカミカミ食べをしてくれるわけではありません。カミカミ食べにも順序があります。一つ一つのステップを確かめながら、子どもにカミカミ食べを覚えてもらいましょう。
ステップ1 目で見る
まずは視覚から。食べることの第1ステップは、子どもが目で見て楽しむことです。食べ物の彩りや盛りつけを見て、「おいしそう」「食べてみたいな」と食欲がそそられます。
ステップ2 食べ物を口に運ぶ
食べ物を口に運ぶまでが次のステップ。手づかみで、あるいはスプーンやフォークを使います。口を開けて食べさせてくれるのを待っているのではなく、子どもが自分で食べることが大切です。
ステップ3 前歯でのかみ取り
とくに手づかみ食べの場合、口に運んだ食べ物が大きく、前歯でプチッとかみ切ることになります。この経験を重ねることで、子どもは自分の一口サイズを覚えたり、敏感な前歯で食べ物の食感を感じたりすることができます。
ステップ4 舌で奥歯や歯ぐきの上にのせる
口に入れた食べ物を、奥歯(奥歯が生えていないときは歯ぐき)でかむために、舌を前後左右・上下に動かして奥歯(歯ぐき)の上にのせます。
ステップ5 奥歯でカミカミ
上下の奥歯が生えそろっていれば、食べ物を歯でかんで、すりつぶして食べることができます。奥歯が生えていない場合は、歯ぐきで押しつぶします。
カミカミ食べを覚えてもらうためには、ママ・パパがお手本を見せてあげることも大事。ママ・パパが食べ物を食べながら、「ほら、カミカミだよ~」とほっぺを動かして食べている様子を見せてあげると、子どももカミカミ食べをイメージしやすいでしょう。カミカミ食べを覚えると、五感がフルに刺激されることによる脳の活性化、さらにはむし歯予防など、さまざまなメリットを享受できます。子どもに「かみなさい!」と言うだけでなく、親子で一緒にカミカミ食べして、食事の時間を楽しみたいですね。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/柳沢幸江先生
和洋女子大学 家政学部 教授
専門は食事学と調理学。乳幼児や高齢者を中心に、栄養学の観点から咀しゃくが体やおいしさに与える効果を健康的な食生活と結びつけて研究。
参考/「1才2才のひよこクラブ」2015
年冬春号「1才になったらカミカミ食べをしよっ!」