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よーく「かむこと」で食べることが好きな子に!

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キッチンで野菜を食べて赤ちゃん。健康食品。
FamVeld/gettyimages

せっかくごはんを用意しても、子どもがなかなか食べてくれない――。そんな悩みを抱える親のみなさん、「かむこと」に着目してみませんか? 実は、「よくかんで食べる」ことで、食べることが好きになるかもしれないのです。

幼児を対象とした食事学・調理学に詳しい柳沢幸江先生(和洋女子大学・家政学部教授)に、よくかんで食べることが好きな子になるための秘訣を聞きました。

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さまざまな“食感経験”で興味が増していく

――まず基本的なことからお聞きしますが、まだ完全に歯の生えそろっていない1~2歳のうちから、「よくかんだほうがいい」と言われるのはなぜですか?

柳沢先生:「飲み込む」ことは、生まれたときから反射でできます。しかし「かむ」ということは、生まれつきできることではありません。食べるという経験で獲得できるものなのです。そのため赤ちゃんは、生まれてすぐおっぱいやミルクを飲むことができますが、かむことについては食べる経験がないため、最初はできません。まったくかまないままでいると、いつまでもかめないままなので、離乳の後期ごろから、そしてそれ以降の1~2歳のころも、ちゃんとかんで食べる経験を積んでおいたほうがいいでしょう。また、よくかむほど唾液が出るというメリットもあります。唾液がたくさん出ることにより、食べ物がスムーズに胃に運ばれる、口の中の細菌が減るなどの効果もあります。

――「よくかむ」というのは、具体的に何回くらいかむことを言いますか?

柳沢先生:年齢や食べ物によって、かむ回数は変わるので、回数を気にする必要はありません。そもそも、かむ回数を増やしたからといって、かむことが好きになるわけでもありません。子どもは、かむことで「起きる変化」に興味がわいて、かむことが好きになります。最初は、しゃりしゃり、ふわふわといった歯触りを感じてもらいながら、食感に興味をもってもらうといいでしょう。また、「よくかみましょう」と言われたときに、「あごを動かせばいいんだな」と思われる方もいると思いますが、かむという動作はあごだけではなく、奥歯の上に食べ物をのせるために舌を前後左右・上下に動かすことも含まれます。舌を動かしたり、唾液を出したりと、いろんな器官を動かして「かむ」という動作になっているのです。

――かむ経験を重ねてかむことが身についた後、小学生以降もずっと、「よくかみましょう」と言われ続けます。大人でも言われます。なぜですか?

柳沢先生:よくかんで食べると、食べ物の味やにおいが引き出されて、満腹中枢が刺激されます。食べ物の性質を感じるためにも、そして食べ過ぎを防ぐためにも、よくかむことは生涯大事なことなのです。

――幼児のときのよくかむ習慣が、将来的な肥満予防にもつながるわけですね。では、よくかんで食べてもらうためには、どんな工夫が必要でしょうか?

柳沢先生:1~2歳だと、まだ言って聞かせられない年齢なので、その子にとって無理なく食べられるものをあげるのがポイントです。奥歯の本数も、まだ第1乳臼歯しか生えていない状態ですので、奥歯の数は大人の4分の1です。それだけかむ力は弱いので、野菜などをやわらかく煮たものがいいでしょう。大きさについては、あまり細かくしすぎず、少なくとも親指程度の大きさがあったほうが食べやすいと思います。肉や野菜の繊維も残っていると、よくかむようになります。もう一つ大事なのは、同じテーブルに大人がいることです。

――親子で一緒に食べるということですね。どんな効果があるのですか?

柳沢先生:子どもは、大人がかんでおいしそうに食べているのを見て、それをまねします。毎食一緒に食べるのは難しいかもしれませんが、一緒に食べる機会をなるべく増やすといいでしょう。

――かむことを覚えて、そこから「よくかんで食べることが好き」になるには、どんな工夫が必要でしょうか?

柳沢先生:「よくかむとおいしいんだな」という経験をくり返すことで、食べ物への興味を引き出すことが大切です。たとえば、りんごを食べるときも、かまなくても飲み込めるようなジュース状ではなく、ある程度の大きさのものを用意して、シャキシャキした歯ごたえ、じゅわっと果汁が広がる様子を感じてもらうことがいい経験になると思います。また、まだ言葉の意味はわからなくても、一緒にごはんを食べながら「かむとおいしいね」と、会話を通じてかむことの刺激のおもしろさを伝えるのもいいと思います。

――食べ物の工夫ポイントはありますか?

柳沢先生:食感に変化をもたせてみるといいと思います。たとえば、卵の中に刻んだきのこを入れて調理すれば、卵のフワフワの中に、違う食感のきのこが入っていることが感じられます。

――納豆ごはんが好きな子もいますが、そのような組み合わせはどうですか?

柳沢先生:納豆とごはんだと、どちらも食感が似ていて、そんなにかまなくても飲み込むことができてしまいます。そこにきゅうりなどの漬物を刻んだものなどを入れたりして、シャリシャリした食感を加えるといいかもしれません。好きなものをベースに、別の食感をプラスしていくと、今よりもかんで食べることに興味を持つと思いますよ。

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食感の違う具材を入れる、かむことができるくらいの大きさにする、歯ぐきでつぶせるくらいのやわらかさにする。こういった調理の工夫でカミカミ食べを促す努力は、すでに実践している人もいるかもしれません。しかし、「一緒に食べる」ということも重要なポイントだというのは、見落としがちではないでしょうか。わが家の食卓に遅れて参加することもしばしばである筆者も、これからはなるべく、食べ始めから子どもと一緒にいて、モグモグと、おいしく食べる姿を見せなければ…と思いました。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)


監修/柳沢幸江先生
和洋女子大学 家政学部 教授
専門は食事学と調理学。乳幼児や高齢者を中心に、栄養学の観点から咀しゃくが体やおいしさに与える効果を健康的な食生活と結びつけて研究している



参考/「1才2才のひよこクラブ」2015
年冬春号「1才になったらかみかみ食べをしよっ!」

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