家計の負担をおさえつつ、リスクを減らす住宅ローンの選び方
子どもができるなどしてこれから住宅取得をお考えの方は、住宅選びだけでなく、住宅ローンの借入先、団信保険、火災保険、引越業者など選ばなければならないことが数多くあります。
特に住宅ローンや保険は金融商品ですので、どのように選んだらいいかわからず、ついつい勧められた 商品を選んでしまうのではないでしょうか。
しかし住宅取得の負担は、借入先や保険の選び方で大きく変わってきます。無駄に負担を増やさないためにも、住宅ローンの基本的な選び方をファイナンシャルプランナーの藤孝憲さんに解説いただきました。
藤 孝憲
FPオフィスベストライフ
CFP(R)認定者・宅建士・住宅ローンアドバイザー・証券外務員2種・エクセルVBAエキスパート
商品販売をしない消費者目線のファイナンシャルプランナーとして、家族に合ったライフプランニングをもとに資産運用を含めたお金の使い方や住宅ローン・保険の選び方などアドバイスしている。
住宅ローンの基本的な選び方
ここで解説する住宅ローンの選び方は、できる限り家計の負担を抑えつつ、リスクを減らす方法です。保険料を考えると分かりやすいですが、リスクを減らすためにはコストがかかりますので、団体信用生命保険(団信)の保障を充実させる(特約を付ける)と、金利に上乗せして保険料を支払うことになり、支出額が増えてしまいます。
1.必ず自分の借入条件でシミュレーションして比較検討する
ウェブサイトの情報や営業のおすすめだけで借入先を決めてはいけません。借入条件が異なれば、総支払額も異なります。
特に金融機関の公式サイトに記載されている金利などは 、審査や借入条件で変わることがあります。たとえば不動産会社と提携している借入先であれば、金利が下がることがあります。公式サイトの金利より下がると説明されると、お得感からその場で契約したくなりますが、必ずシミュレーションをし直すか、見積もりを受け取って比較し直し、再検討しましょう。
2.住宅ローンの比較検討で確実な負担軽減を目指す
変動金利型や固定金利期間選択型は金利の上昇による影響を受けます。将来の金利の動きを予測することは不可能です。当初の返済額が少ないため、変動金利型を選び、金利が上昇すれば全期間固定金利型に借り換えようと考えているかもしれません。
しかし、金利は上昇し続けると思っても下落したり、突然、急激に上昇したりすることもあります。変動金利型よりも固定金利型の方が先に上がるため、思っていたよりも高い金利になる可能性があります。そもそも金利の変動が激しくなり、将来の金利予測が難しくなると、金融機関は審査を厳しくするなどして現在のような借り換え対応をしないかもしれません。
このように総返済額の上限が決まっていない変動金利型を選び、金利の動向で借り換えを考えているかもしれませんが、時間をかけて借入先を厳選すれば、固定金利型であっても返済負担の軽くなる金融機関はあるはずです。負担の軽い借入先選びは、手に入る情報だけで判断できるため確実です。
3.住宅ローンの借入先の特徴
借入先選びを十分にしていれば気づきますが、同じ商品でも中身が違う場合があります。いくつか例を挙げておきます。
例えば全期間固定金利型のフラット35は機構型と保証型の2タイプあります。ほとんどの金融機関では機構型しか取り扱っていませんが、保証型を取り扱う金融機関もあります。これらは全く違う商品で、機構型は住宅金融支援機構が指定した金利の範囲から金融機関が金利を決めているのに対し、保証型は住宅金融支援機構が保証会社の役割をしているだけで、商品は金融機関ごとに設計しています。金利の範囲のうち最低金利を採用している金融機関が多い機構型は金利での差が付きにくいですが、保証型は商品が異なりますので、金利でも差が付きます。
他の金融機関の住宅ローンを取り扱う金融機関もあります。たとえばフラット35しか取り扱っていない金融機関が商品選択の幅を増やすために、他の金融機関で取り扱う変動金利型商品を販売するようなケースです。手数料など諸費用が異なる可能性があります。
同じ金融機関内でも諸費用が異なる場合もあります。同じ商品でも店舗とネット経由とでは諸費用が異なったり、借入条件によって金利が変化したりします。
挙げればきりがないですが、公式サイト上でも小さい文字でしか書いておらず、気づかないこともあります。問い合わせて初めて気づくこともあるでしょう。しかし、最後に必ずシミュレーションや見積もりで比較検討するようにしておけば、勘違いして契約する可能性は小さくなります。
4.住宅ローンの負担に差が出る比較の方法・注意点
同じ住宅を取得するにしても、借入先をどこにするかによって、最終的な支払額は異なります。支払額に影響する主な費用は、金利(利息)、保証料・事務手数料、団信保険料、火災保険料です。これらがシミュレーション対象となりますが、引越割引や買い物割引などの特典が付く場合があります。これらの特典は金額にできれば比較しやすいですが、金額にしても総返済額に影響がない(優劣が変わらない)場合もあります。重視しすぎると本末転倒になることもあり、除外したほうが比較しやすいでしょう。
住宅ローンの借入先選びでは、最初は難しく感じるかもしれませんが、将来の金利を考えたり、住宅ローン減税の金額を計算したりするより、時間をかけさえすれば誰でも負担の低い金融機関を見つけることができます。
住宅ローンや保険は難しいから営業まかせ、金利は当初の返済額が少ないから変動金利、しかし万一が心配だから団信は充実させる、という方向性だと負担ばかりが増え、リスクも高くなります。
金額には表れないリスクをしっかりと確認しながらご家庭に合った住宅ローンを選びましょう。