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育休480日~なぜスウェーデンの職場は同僚への「しわ寄せ」なしで回るのか?~

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「ワンオペ」「孤育て」など育児の大変さを象徴する言葉が次々と生まれてしまう日本…どうすれば子育てしやすい環境を作ることができるのでしょうか?
そのヒントを手に入れるべく、子育てに優しい国として有名なスウェーデンへ家族で移住したのは、『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』の著者である久山葉子さん。
育児・共働きを経験して感じたことを、自身の言葉で綴ってもらいます。連載【スウェーデンでのくらしが気づかせてくれた、大切なこと】第一段は「育児休暇制度」についてです!


スウェーデンに思い切って移住!

わたしたちは2010年にスウェーデンに移住しました。
東京で共働きをしていた日本人夫婦が、なぜいきなり移住…? 
その理由は、特に夫のほうが「もっと子どもと一緒に過ごす時間がほしい」と望んだから。移住先は、今よりも楽に子育てができるのではないかと思ってスウェーデンに決めました。実際に移住してみて感じたことを、今月から6回にわたってお話したいと思います。

■こちらもおすすめ→子どもと笑顔でいるために!外勤から在宅へと模索した、私の働き方改革と保活

480日のスウェーデン育休、パートナーとわけっこしないと消えてしまう!?

写真1:冬の長いスウェーデン。東京で使っていたベビーカーは雪の積もった中ではタイヤが回らず、苦労しました。

スウェーデンに移住したとき娘は2歳になる直前で、親であるわたしたちはスウェーデンの育児休業480日をまるごといただきました。日本ですでに1年2ヶ月育休を取っていたので、「え、またもらっていいの⁉」と驚いてしまいました。夫はここスンツヴァルの会社に雇われているとはいえ、わたしのほうは当時はスウェーデンではなんの職歴もない失業者。それでも、最低限の育児給付金(1日250クローネ)をもらうことができました。(1クローネ=約11円 ※2019年8月現在)
 この480日というのは、週に5日取得すれば、約1年10カ月分になります。日本のように一気に取る必要はなく、子どもが8歳になるまで何度でも分けて取得できるんです。一般的なのはパパとママが順番に1年ちょっと取得して、保育園に入るパターン。余った分は残しておき、保育園に入ってから毎日1時間ずつ取得して日本で言う〝短時間勤務〟をしたり、子どもと長く(2ヶ月以上)夏休みを過ごしたりします。子どもが8歳になる頃には、480日をすっかり使い果たしているのが普通です。
 ただ、480日すべてを一方の親だけが取得することはできないんです。90日間は、もう一方の親が取得しなければ消えてしまう仕組みになっていて、それがパパの育児休業取得率のアップにつながっています。わたしの周りのパパたちは、三カ月~半年ほど、がっつり育休を取っている人が多いです。
 スウェーデンの保育園は基本的に1歳児からしか預かりませんが、前述の通り、育休と給付金の制度がしっかりしているため、それで困ったという意見は聞いたことがありません。1歳を過ぎるまでは子どもは親と一緒にいるのが普通だという感覚です。

育休は他の人にもメリットをもたらす!?スウェーデン人の価値観とは

 男女とも、みんな堂々と育休を取り、会社や同僚に対して申し訳なく思っている様子はありません。なぜだろう、日本ではあんなに周りに気を使っていたのに……。よく考えてみると、どこの職場でも、いつも誰かが育休中。子どものいる人は性別に関係なく育休を取るし、まだ独身の人たちも「いずれは自分も」と思っているから、お互いさまのようです。
 育休を取ることは、実は他の人にもメリットがあります。スウェーデンでは誰かが育休を取る場合、〝ヴィカリエ〟と呼ばれる期間限定の代理スタッフを雇うのが一般的。だから職場の他のメンバーに仕事のしわ寄せなどがいくことはありません。それに、このヴィカリエに応募してくるのは、まだ仕事の経験の浅い若手や、いままで正社員で雇われたことのない人。期間限定とはいえ、普通ではなかなかつけないポジションの職歴を得られる、またとないチャンスなんです。働きぶりがよければ、その後も働き続けられる可能性もあります。
 企業の管理職や学校の校長などの責任あるポジションの人たちだって、しっかり育休を取ります。その場合は組織内でヴィカリエを募集します。そうすることで、今まで管理職の経験がなかった人がそれを期間限定で経験することが可能に。本人も会社も、管理職としての適性を見極める機会にもなります。男女関係なく、どれほど責任のあるポジションについている人でも育休を取れるのは、このヴィカリエ制度がうまく機能しているからだと感じます。
 わたし自身も育休中、様々な場面で〝スウェーデンは子育て中の親に優しい社会〟だというのを感じました。例えば、市が提供している無料の起業コンサルティングに連絡を取ったときです。「まだ育休中なので、子どもが保育園に入ってからアポを入れさせてもらいますね」と言うと、男性コンサルタントの方が「お子さんを連れてきてもらってもまったく問題ありませんよ」と言ってくれました。行ってみると、なんと子どもを遊ばせるプレイルームの片隅のテーブルでミーティングをしてくれたんです。子どもを連れた親のためにフレキシブルに動くという発想に感動しました。他にも、日本では思ってもみなかったような暮らしやすさが色々とあり、社会全体が子どものいる共働き家庭を応援しているのを感じました。 
そんな子育てのしやすさからか、周りのファミリーはたいてい子どもが2、3人います。ずっと一人っ子だったお友達も、今年になって10歳離れた弟や妹ができました。

写真2:娘の友達メイヤちゃんは、今年になって10歳下の弟が誕生。こんなふうにタイヤの大きなベビーカーなら、雪の中でもへっちゃらです。

移住したからこそ気づいた『仕事だけの人生』よりも大切なこと

 下の兄弟が生まれれば、その人数分×480日の育休を取得できます。そんなに何度も育休を取って、キャリアに支障がでないのかなと思われるかもしれません。確かに、仕事だけに邁進する人に比べれば、出世は遅れるかもしれない。でも、それが何か?――というのがスウェーデン人の反応。「人生で大事なのは仕事だけじゃない」という、当たり前のようで忘れがちなことを教えられました。最近よく聞く「ワーク・ライフ・バランス」をうまく取っている人こそが、この国では勝ち組のようです。
 育休期間を有効に使って、その後のキャリアに活かす人もいます。わたしの知っているママたちは、育休に入ったことを機に大学に通い直していました。例えば、高卒でショップ店員をしていたママは、大学に通ってデスクワークに転向。そこのおうちはパパがバーテンダーだったので、子どもができたことを機に、ママのほうは仕事が平日のみで5時に帰れるようにしたかったのでしょう。ありがたいことに大学は無料だし、大人が通うことを前提にしているコースも多くあります。特に看護師や教師は深刻な人材不足なので、キャリアチェンジをしたい大人が多く通っています。スウェーデンの大学生は、実に5分の1に子どもがいるそう。わたし自身も教師の資格を取るために大学に通っていますが、ベビーカーを押して通学してくるクラスメートは必ずいますね。
 育休という制度が、今後のワークライフバランスを考え直すための機会になり、同僚たちのキャリアアップにもつながる――そんな好循環が生まれているのを感じました。自分も周りも我慢しなくていい社会。だからこそ、暮らしやすいのかなと感じています。
(文・久山葉子)

■関連: 脳医学者・瀧先生に聞く「人生は楽しい」と思える子に育てるために、親ができること



子育てしやすい社会をつくることは、結果的に「自分にとって本当に良い人生」を追求することにつながる、というのがスウェーデンの人々の考え方であるようです。
スウェーデンの育休制度が生む好循環を参考にして、日本でも取り組めることがあるのかもしれません。
【スウェーデンでのくらしが気づかせてくれた、大切なこと】第二段は、「家事も得意なスウェーデンの男性!その秘密は…?」についてです。どうぞお楽しみに!


Profile●久山葉子(クヤマヨウコ)
1975年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部英文科卒業。スウェーデン在住。翻訳・現地の高校教師を務める。著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない(移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし)』を執筆、訳書にペーション『許されざる者』、マークルンド『ノーベルの遺志』、カッレントフト『冬の生贄』、ランプソス&スヴァンベリ『生き抜いた私 サダム・フセインに蹂躙され続けた30年間の告白』などがある。

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