【小児科医監修】『湿潤療法』などで使われる治りやすい絆創膏で傷が悪化、どうして!?
子どもが転んだりして、すりむいたり、切ったりしてしまった傷に貼ることがあるばんそうこう。使い方を間違えると、かえって傷の治りを遅くしてしまうことがあるって知っていますか?
赤ちゃんやママ・パパにいつもやさしく寄り添う陽ちゃん先生こと、小児科医の吉永陽一郎先生が、日々の診察室で起きた、思い出深いできごとをつづります。育児雑誌「ひよこクラブ」でも長年監修として活躍中。「小児科医・陽ちゃん先生の診察室だより」#9
転んだ傷が治らないと来院した親子
転んだあとの傷が治らないと、2歳の男の子を連れてお母さんが来院しました。
保育園の帰りらしく、服はちょっと汚れており、ほっぺには鼻水のあとが水平についています。見るからに元気そうな子です。白い靴下の裏は真っ黒に汚れています。
右のひざに傷があるようですが、そこには肌色のハイドロコロイドばんそうこうが貼ってあります。そのばんそうこうの横から、黄色い滲出(しんしゅつ)液があふれてきています。
―このばんそうこう、取ってもいいですか?
「はい、もちろんです」との答えなので
ばんそうこうを取ると、下にある傷はどろどろに黄色い浸出液にまみれていました。
―傷にばい菌が入っていて、それが繁殖したんですねえ。
「傷の治りがいいというばんそうこうを貼っていたのですが」と驚くお母さん。
―このタイプのばんそうこうは、きれいな傷はとてもよく治るのですが、ばい菌がいるところに貼ってはいけないんです。
「え、そうなんですか!」とお母さんの驚きは続きました。
きれいな傷は乾燥させないほうが早く治る
近年、きれいな傷は消毒しないほうが治りがよいということがわかってきました。けがをしたら水道水でよく洗い、その後ワセリンを塗った食品用ラップを貼っておくと、かさぶたも作らずにきれいに治ります。やけども同様の方法で治療する試みが行われています。以前のように、ガーゼで滲出液を吸って傷を乾燥させると、かさぶたができたり、ガーゼが傷に貼りついたりします。
早く治すには、滲出液を吸い取らないこと、傷が乾かないようにすることがポイントで、『湿潤療法』とか『ラップ療法』とかと呼ばれています。市販の傷用ばんそうこうも、肌色の樹脂のようなものでできた、ハイドロコロイドばんそうこうが人気です。数日おいておくと、傷の浸出液を吸って、傷の治りがよいという製品です。こうした湿潤療法は、確かにけがが早く、きれいに治るのですが、それには、そこに細菌がいないことが絶対の条件なのです。
細菌の繁殖をばんそうこうが 手助けしてしまうことが…
土のところや、あまり清潔でない場所でのけがで、傷に細菌がいる可能性がある場合には、水道水で洗うだけでは不十分で、消毒して細菌を殺しておかないといけません。傷を保護したものの下で菌が繁殖しないようにときどき貼り替える必要があります。細菌がいるのに、そこをばんそうこうやラップで封をしてしまうと、菌の繁殖を助けることになってしまうのです。
ほかにも、自宅でラップ療法をせずに、病院を受診したほうがよいケースには以下の場合のようなものがあります。
1.動物や人にかまれた傷
2.骨や筋肉が見えるような深い傷
3.傷がジグザグしていたり出血がなかなか止まらない場合
4.傷の中に木くずやジャリなどの「異物」が残って取れそうにない場合
5.大きな水ぶくれができていたり、破れていたりするやけど
6.電気カーペット湯たんぽによる低温やけど
さて、この患者さんには、抗生剤の内服と、塗り薬を出しました。ガーゼに抗生剤を塗って傷に貼ること。滲出液や膿(うみ)がひどい間は、傷口にくっつかないように、特殊なガーゼやラップのほうがよいかもしれません。必ず1日に2回くらい貼り替えることを伝えました。
3日ほどたって、この患者さんが再来しました。もう膿や滲出液は出ていません。傷もつるりと治ってきています。この男の子が待合室ではしゃいでいる声を聞きながら、また大きなけがをしなきゃいいけど…と気になるほどでした(笑)。
初回公開日 2019/09/29
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