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「消毒しない」「乾かさ ない」が新常識、今と昔で異なる“傷”の治療法を小児科医に聞く

悲しい小さな男の子彼の母親に囲まれています。
sjenner13/gettyimages

今回のテーマは、「今と昔で大きく変わった“傷”の治療法」について。2才と4才のお子さんを子育て中の小児科医・泰道麗菜先生が、日々の診療の中で、ママ・パパたちに伝えたいさまざまな情報を発信します。
実はここ10年ほどで、傷の治療に対する考え方が大きく変わりました。つまり、今のママ・パパたちが子どもだった時代にけがをして、「傷はこうして治す」と教えられていた治療法では、むしろ逆効果になるかもしれません。
[ママ小児科医の”コレが気になる”]#8

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傷の治療法は、この10年で真逆になっている!

今回はぜひ知っておきたい、傷の治療法についてのお話です。心地いい風を肌に感じる季節になり、外遊びを楽しめるようになる一方で、転んだりして顔や手足にけがをつくることもあるでしょう。元気いっぱい体を動かし、走りまわる子どもたちに、けがはつきものです。
実はここ10年ほどで傷の治療に対する考え方は昔と大きく変わりました。以前は転んだりして傷ができると、「消毒をしてガーゼを当てて傷を乾かす」という処置が当たり前でした。ところが最新の治療法は、「消毒はしない」、「傷は乾かさない」という全く真逆の考え方に変わっているのです。

傷口のばい菌や汚れは、「水道水」で洗い流すだけでOK

皆さんだれでもけがをした経験はありますよね。けがをすると、傷から血が出たり、血が止まると、次にジクジクとした黄色い液体=滲出液(しんしゅつえき)が出てきます。やがて傷の表面が乾燥すると“かさぶた”ができて、忘れたころに治っていく…という経験、何度も体験しているはずです。時には傷がなかなか治らず跡が残ってしまった…という悲しい過去もあるかもしれません。
私たちの体は、けがをすると傷を治そうとする自然治癒力を発揮させます。傷口から出るジクジクとした滲出液もその一つ。傷を治すために必要な成分をたくさん含んでいて、傷を治そうとする皮膚の細胞を助けます。けれどもその自然な力を邪魔するものがあれば、当然傷は治りにくくなるわけです。
これまで消毒は傷口のばい菌を殺して感染を防ぐために使われてきました。しかし、ばい菌だけではなく味方の皮膚の細胞も傷つけてしまい、かえって傷の治りを悪くさせてしまうことがわかり、今では消毒の必要性はほとんどなくなりました。
傷口のばい菌や汚れは、水道水で十分洗い流すこと。これで大丈夫なのです。汚れがひどいときには、石けんを使ってもいいですが、皮膚を刺激しやすいので、石けんが残らないようにしっかり洗い流しましょう。砂や土などの汚れは傷が治る過程で皮膚の邪魔になってしまうのできれいに取り除くことが肝心です。

“かさぶた”ができると傷の治りが遅くなる

通気性、吸湿性のいいガーゼは血を止めたり、滲出液を吸い取ったり、キズを乾かすために使われてきました。しかし、前述したように適度な滲出液がないと傷を治す皮膚の細胞はうまく働けません。また、人の細胞は乾燥にとても弱いのが特徴で、傷口が乾燥すると死んでしまいます。血や滲出液が固まってできた“かさぶた”は、治る前に必要なものだと思われていましたが、実は乾燥してできた結果であり、かえって傷の治りを遅くさせることがわかりました。また、皆さんも一度は経験があるとは思いますが、傷口に直接ガーゼを当てるとかさぶたがくっつきます。すると、はがすときに痛いだけでなく、かさぶたの下で働く元気な細胞も奪ってしまいますので、いいことがありません。
傷を早く治すためには、乾燥を防ぐこと。つまり潤いを与えることが必要で、この方法を「湿潤療法」と言います。かさぶたをつくらないで傷を治す方法です。傷に潤いを与えると、炎症が早く治り、痛みも少なく傷あとがきれいになるということが注目されています。最近はこの湿潤療法をもとに、市販のばんそうこうも改良されて、たくさん種類が増えました。傷口を水道水できれいに洗って、ハイドロコロイド素材を使用した高機能タイプのばんそうこう「家庭用創傷パッド」を貼れば、おうちで簡単に湿潤療法ができます。ポイントは以下の3点です。

1.傷口をきれいに洗うこと
2.ばんそうこうは傷よりも大きなサイズのものを使ってしっかり傷を覆うこと
3.滲出液が多いときには、こまめにばんそうこうを交換すること

滲出液は傷が治るために必要なものですが、過剰に多いと感染や湿疹(しっしん)の原因になります。
傷は浅ければ1週間程度で良くなっていきます。でも、時には医師の判断が必要な傷もあります。次の場合には、むやみに自分で治療をせず、病院を受診してください。

・傷が深い、傷の範囲が広いとき
・出血が止まらないとき
・傷が悪化している(治りが悪い)とき
・感染を起こしていそうなとき(赤く腫れている、熱感がある、痛みが強い、膿(うみ)が出ている)
・洗っても傷の汚れがひどいとき
・動物にかまれたとき

軽い傷の場合には、まずはかかりつけの小児科や内科を受診して傷の様子をみてもらいましょう。より専門的な判断や処置が必要であれば、形成外科や整形外科の受診をすすめられることもあります。

ちなみに男児2人がいるわが家では子どもたちがけがをすることがしょっちゅうです。つい先日も、二男が椅子から落ちて椅子の外枠に背中を擦ってけがをしました。縦に痛々しい傷跡がついた背中の真ん中には大きな家庭用創傷パッドが貼られて今日も傷を癒やしてくれています…。(構成/ひよこクラブ編集部)

日々、医療に関する情報は更新されています。自分たちが子ども時代のときの常識は、すでに「昔」のもの。育児をする上で、情報をアップデートすることは、結果として子どもを守り、笑顔にすることにもつながっていきます。
気をつけてはいたけれども、誤ってけがをしてしまったときなどにあわてず対処できるよう、お家での治療法や受診の目安を知っておくと安心ですね。

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■監修・文/泰道麗菜先生
神奈川県小田原市にある横田小児科医院の小児科医。アレルギー疾患を専門に、大学病院の小児科などを経て2018年より現職。2人のお子さんのママという目線からも、地域のママ・パパに寄り添った診療をしています。

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