【医師監修】赤ちゃんの歯ぎしり・歯並び・歯石と歯が生えてからの授乳の気がかり
赤ちゃんの歯が生えてくると、「歯ぎしりするけれど大丈夫?」「歯が斜めに生えてきて歯並びが心配…」「歯ぐずりが大変!」などなど、対処に困ることが起こりがち。赤ちゃんの歯ぎしり・歯並び・歯石や歯ぐずりの対処法、歯が生えてからの授乳の気がかりなどについて、日本小児歯科学会認定専門医で多くの保育園や小学校の歯科健診にも携わる、鈴木さち代先生に伺いました。
赤ちゃんの “歯ぎしり”の原因と対処法をチェック!
赤ちゃんの歯の気がかりで多い“歯ぎしり”。機嫌よく遊んでいるかと思ったらギシギシと音を立てて歯ぎしりしていると、「ストレス?大丈夫かな」と心配になりますよね。考えられる原因と対処法を解説します。
原因1:自分で生えてきた歯を確認している
自分の歯があることを歯ぎしりで確認している可能性がいちばん高いでしょう。低月齢の赤ちゃんは、手足の感覚をつかむために自分の手で自分の足をつかみ遊ぶことがあります。歯ぎしりもこれと同様で、乳歯をかみ合わせてギシギシさせることで、“上の前歯も下の前歯も生えてきた!”などと楽しんでいるのでしょう。成長するにつれて、しだいになくなっていくことがほとんどですが、歯固めのおもちゃを与えてみてもいいですね。
原因2:歯ぐきがムズムズする
歯が生え始めると歯ぐきがムズムズして、自分の手指やタオルやおもちゃなど、なんでも口に入れて違和感を解消しようとします。赤ちゃんによっては、グズったり夜泣きなどをする「歯ぐずり」することも。小さなものを誤飲しないように注意し、口に入れそうなものは衛生面に気をつけるといいでしょう。
原因3:学年が上がると緊張感から歯ぎしりする子も
幼稚園の年長クラスなどに進級すると、「おにいちゃんだから頑張らないと!」「うまくやらないと!」などと緊張したり、疲れを感じやすくなります。体が緊張していると口まわりもこわばって歯ぎしりをすることがあります。顔まわりをマッサージしてほぐしてあげると、歯ぎしりが減ることもあるのでいいでしょう。
対処法のポイント!
乳歯は永久歯よりもやわらかいので、すり減りやすいですがトラブルは出にくいものです。心配であれば一度歯科医に相談しましょう。顔まわりのマッサージをしたり、アロマをたくなどして就寝中にリラックスできるような環境を整えてあげるのもいいでしょう。
赤ちゃんの歯並びが気になるときのかかわりポイントは?
赤ちゃんの歯が順調に生えてきたと思ったら、斜めに生えてきたり、歯と歯の間が空いてたり…。「矯正歯科に行ったほうがいいかな」などと、歯並びに気がかりをかかえるママやパパもいるのではないでしょうか。かかわり方によって改善することがあると言います。かかわり方のポイントを見ていきましょう。
運動遊びや生活習慣の見直しで歯並びは改善することも
赤ちゃんの歯並びの良し悪しは、遺伝や個性だけでなく、ママのおなかの中の環境や、母乳・ミルクの飲ませ方、離乳食の食べさせ方や食事のときの姿勢、運動遊びが十分にできているかなど、さまざまなことが関係しています。そのため、一概に「赤ちゃんの歯並びが悪くなる原因はコレ」とは言えません。
とはいえ、運動遊びをたくさんしたり、あご・舌・歯ぐき・歯を十分に使って食べるなどの習慣を見直すと、歯並びが改善していく子も多くいます。以下のかかわりポイントを確認し、今からできることを実践していくといいでしょう。
気になったら要確認! いい歯並びにつながるかかわり方ポイント
授乳の姿勢と飲ませ方を見直す
赤ちゃんに授乳するときは、足とおしりを持ち上げ、背中が丸くなった姿勢で飲ませましょう。乳首は深くくわえさせ、あごや舌をうまく使って飲めるように。ミルクの赤ちゃんもしっかり抱っこして姿勢に気をつけ、舌でしごくように飲んでいるか確認しましょう。それほど口を動かさず、ミルクを流し込んで飲んでいるようなら、哺乳びん乳首の穴の大きさを変更します。
体幹を養う運動遊びをする
はいはいやおすわりをたくさんしたり、歩けるようになったらできるだけ歩かせることを心がけて。走る・体を回転させる・鉄棒などにぶら下がる・ジャンプする・白線の上などを渡るなどの体幹を養う遊びも取り入れましょう。口と歯の成長は、体の発育発達とつながっています。積極的に体を動かすことで、あごの成長なども促します。
おなかをすかせておいしく食べる
空腹で食べる食事のおいしさが経験できるように、規則正しい食事リズムに。食に対して意欲的な子に育ちます。そういった子は口と歯の成長も順調に進みやすいです。おやつは「補食」。1日3食の食事でたりていれば不要です。おやつを与える場合は、甘いものである必要はまったくありません。食事でたりていない分を補う感覚であげましょう。
喉が渇いたら水かお茶で水分補給する
水分補給はとても大切ですが、喉が渇いていないときに水を飲んでも特別においしく感じるものではありません。いつ飲んでもおいしいジュースやスポーツドリンクを飲ませると、水を飲めない子になってしまうことが。トラブルも起こりやすくなるので、喉が乾いたら水かお茶を飲ませましょう。
一口量が最適か確認する
食べ物を口に詰め込んでしまう子は、一口量を減らしたり一口分をかじり取る練習を。そして、口を閉じてよくかんで食べるように促しましょう。しっかりかんで飲み込んだことを確認してから、次を食べるように声かけしたり、ママやパパが口に運ぶようにします。食事中にお水をたくさん飲んで、食べ物を流し込まないように注意して。
しっかりかんで食べる
しっかりかんで食べると、むし歯リスクの低減や歯周病予防につながるだけでなく、あごが横に広く成長していい歯並びになりやすいです。さらに、唾液がしっかり出るので食べ物の消化・吸収をアップさせ、栄養が十分に取り込めます。よくかまないと、たくさん食べているのにあまり栄養を吸収できず、やせていたり、逆に吸収する影響が行き偏りl太りやすくなることもあるので注意しましょう。
早寝早起きの生活リズムを整える
朝は6時ごろに起こして朝日を浴び、日中たくさん体を動かすとしっかり食べられる上、夜の寝つきもよくなります。昼寝が夕方近くになってしまったり長時間に渡ってしまうと、夜の就寝時間に眠れなくなるので、途中で起こすことが必要な場合も。
全身をほぐす
遊びながら背中が丸くなるように抱っこしたり、背中をさするなどして全身をリラックスさせましょう。敏感な口まわりの筋肉もほぐれ、口と歯の成長を後押しします。アップップーなどの変顔遊び、顔や口まわりのマッサージもおすすめ。歯磨きや顔・口まわりを触られるのが苦手な赤ちゃんもリラックスさせてあげると、徐々に嫌がりにくくなるでしょう。
“すきっ歯”ほとんど大丈夫
“すきっ歯”は、歯と歯の間にすき間があることを指しますが、これは赤ちゃんの口と歯が順調に成長している証と言っても過言ではありません。永久歯に生え替わるとしだいになくなっていくので心配いらないでしょう。生え替わり期のあごは成長し、永久歯が生えるスペースをつくっていきます。スペースができていないと、乳歯が抜けていないのにずれた位置に永久歯が生えてきたり、斜めやねじれた状態で生えてくる子も。あごが育ってくると正しい位置に収まることもありますが、気になる場合は受診しましょう。
赤ちゃんの歯に歯石がついた! その原因と対処法とは?
赤ちゃんの仕上げ磨きを丁寧にしても、磨き残しのような白いものなどが歯についていて「歯石かも…」「むし歯の原因になるかな?」などと心配する家庭も多くあります。歯石はどうしてついてしまうのか、適切な対処法などについて解説します。
歯石がつく原因と対処法は?
歯石はカルシウムが歯に沈着することで起こります。唾液の成分や赤ちゃん一人一人の口の動かし方なども関係するため、歯石がつかない子もいれば、0歳代でも歯石がつく子も。つまり、歯磨きで歯垢が取れていても歯石はついてしまうことがあります。とはいえ、歯石を自宅で除去するのは難しいので、歯科医院でとってもらうといいでしょう。歯石は、むし歯を引き起こす一因にはなりませんが、できるだけきれいな歯に保っておきたいものです。受診するときは使用中の歯ブラシを持参し、歯磨きの適切なケア方法や仕上げ磨きのしかたも再確認するといいでしょう。
歯についた白い線はむし歯のなりかけの場合も。受診を!
前歯の歯ぐきと歯の境目などに白い線のようなものがついてしまう子もいます。歯石と同様、歯ブラシでみがいてもとれません。これは、白濁[はくだつ]といって、むし歯になりかけたものです。唾液には口の中の栄養分やばい菌を流して減らす力がありますが、とくに上の前歯はその自浄作用が十分に行き渡らないケースが多くあるため、白濁ができやすい傾向にあります。
白濁ができた部分は毎日きちんと歯ブラシで汚れを落とし、歯科医院でフッ化物の塗布などをしてもらって予ケアするといいでしょう。元の状態に近い歯に戻ることがあります。逆に、放っておくと白い線の部分は表面がやわらかくなって歯に穴があいてしまうこともあるので、気づいたら歯科医を受診することをおすすめします。
先輩ママ教えて! 赤ちゃんの気になる歯ぎしり・歯並び・歯石、どう対処した?(ウィメンズパーク体験談)
ママ同士の交流が活発に行われているサイト「ウィメンズパーク」に寄せられた、赤ちゃんの歯ぎしり・歯並び・歯石に関する体験談を抜粋してお届けします。先輩ママたちは、どのように対処したのでしょう? そのころの赤ちゃんの様子なども参考に。
【歯ぎしり】
生え始めのころだけ歯ぎしり。今は全然なし! (1歳6か月の女の子ママ)
娘は、生後6か月ごろ歯が生え始めましたが、そのころから日中の起きている時間帯に“ギチギチ”と音を立ててよく歯ぎしりしていました。そのたびに歯固めを噛ませたり、気分転換にお散歩に行くなどしたものの、気づくとまた歯ぎしりの繰り返し。6~7か月健診で相談したら、「歯がすり減るほどでなければ様子を見て大丈夫」と言われ、気にしないように。今、上下で8本の歯が生えていますが、最近はまったく歯ぎしりをしません。
入園を機に始まった歯ぎしりは慣れたらフェードアウト (5歳の男の子ママ)
幼稚園入園前までは一度もなかったのに、入園して1~2か月くらい“カリッ、カリッ、カリカリカリ”と何度か音を立てて歯ぎしりをしていました。ほかに、弟が遊んでいるおもちゃをとったり、物を貸してあげないなどの様子も。弟に遊びを邪魔されるとたたくこともありました。不慣れな幼稚園生活がストレスだったようです。幼稚園に慣れてきたら、歯ぎしりも弟への意地悪もなくなっていきました。
【歯並び】
上の子の歯並びはキレイなのに下の子はガタガタ。個人差大!
(14歳と3歳9か月の女の子ママ)
上の子は3歳ごろまでおしゃぶりをして寝る習慣があったので、歯並びが悪くならないかと不安でしたが、意外にも中学生の時点むし歯ゼロ&キレイな歯並びをキープしています。一方、下の子はおしゃぶりをしたことがないのに3歳でガタガタの歯並びに…。歯と歯の間に隙間もないので、生え替わったらどんな歯並びになるのかと心配しています。同じように育てたつもりでしたが、これほど個人差があることにびっくりしています。
私の悪い歯並びが遺伝しないかと心配… (1歳10か月の男の子ママ)
息子の歯が斜めに生えてきたり、前歯がすきっ歯だったりするので、私の悪い歯並びが遺伝した気が…。実母に当時の私の歯並びのことを聞いてみると、あごは狭かったけれど歯並びはキレイだったとのこと。おそらく、あごがそれほど成長しないまま永久歯が生え、歯並びが悪くなったんだと思います。息子にはいい歯並びでむし歯ゼロに育ってほしいから、定期的に受診して歯の成長を見守っていくつもりです。
【歯石】
むし歯みたいな黒いシミがなんと歯石でした (3歳6か月の男の子ママ)
息子が2歳ごろのこと。ある日歯磨きをしていて、前歯の裏に黒っぽいシミを発見しました。痛がる様子はなかったのですが、「絶対むし歯にはさせない!」とフロスも使って丁寧に歯磨きしていただけに、ショックで涙…。急いで受診すると、むし歯ではなくて歯石と言われちょっと安心しました。除去してもらいましたが、すごく念入りに歯磨きしていても歯石ってつくものなんだなと思いました。
1歳半で歯磨きを嫌がる前歯に歯石が… (4歳10か月の女の子ママ)
娘は仕上げ磨きが大嫌いで、きちんと磨けないことも多々。その積み重ねかどうかわかりませんが、ようやく口の中をじっくりと確認できたある日、前歯と前歯の間や裏側についた歯石を発見。歯磨きを嫌がる娘に遠慮したツケだと反省しました。病院でとってもらうときも、口を触られることを嫌がって大泣きされ、なだめるのにひと苦労しました。すんなりと口の中が確認できるように、慣れさせることも大事だと実感しました。
「母乳はむし歯の原因になる?」のギモンにアンサー
「歯が生えてから夜中に授乳すると、むし歯になる?」と心配するママの声は多く届きます。歯磨き後に母乳をあげるとむし歯リスクは上がるのか、解説します。
母乳自体がむし歯の原因にはならないはずだけど、注意点がある!
母乳以外に甘い飲み物や食べ物をとっている場合、むし歯の原因菌(主にミュータンス連鎖球菌)が歯の表面に付着しやすくなり、それが口の中で長く留まるほど、むし歯リスクは高まります。
母乳はむし歯の原因菌を育てないとは言われていますが、実際には1歳6か月でむし歯ができた子のうち、授乳している子は授乳していない子の約3倍だったという報告もあります。離乳食の進み方でつまずいていたり、食事リズムが整わないなどの理由でダラダラと食べているような状況で母乳をあげているなら注意が必要です。この場合は、甘い飲み物や食べ物を控えて歯磨きをきちんと行い、食事のリズムを整えることが大切! 0歳代でもむし歯になる子はいます。予防として歯科医院でしっかり診てもらい、フッ素塗布をしてもらったりするのも一つの方法です。
「歯並びがよくてむし歯のない丈夫な歯に育てたい!」そう願うほど、赤ちゃんの歯のちょっとした変化も気になりますよね。とはいえ、赤ちゃんの自我が芽生えてくると、自分で歯磨きするのはOKだけど仕上げ磨きは嫌がるなど、ママやパパを困らすことも起こるでしょう。磨き残しなどの確認も十分できないことがあります。定期的に診てもらいながら、赤ちゃんの健康な歯を守っていけると安心かもしれないですね。(取材・文/茶畑美治子)
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初回公開日 2019/10/29
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