赤ちゃんの力を伸ばす「モンテッソーリ流」1才までのおもちゃの選び方
将棋の最年少プロ・藤井聡太七段や、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏などが幼少期に取り入れていたことでも知られる「モンテッソーリ教育」では、おもちゃも重要な教材として使われています。子どもの自主性を尊重するモンテッソーリ教育では、どんなおもちゃが推奨されているのでしょうか。今回は3~5カ月、6カ月~1歳におすすめのおもちゃについて、モンテッソーリ教師などの資格を持つ教育コンサルタントのあべようこさんに聞きました。
おもちゃを選ぶ前に お部屋の準備で気をつけたい「4つのコーナー」
ものをつかめるようになったり、座ったり、はいはいを始めたりと、0歳代の赤ちゃんには多くのイベントがあります。おもちゃをそろえる前に気をつけたいのが部屋づくり。本来なら赤ちゃんが生まれる前から準備しておきたいところですが、生まれてからでも遅くはありません。見直しの意味でも、赤ちゃんのための部屋づくりについてあらためて考えてみましょう。
――赤ちゃんのいる家庭の部屋づくりのポイントについて教えてください。
あべさん:モンテッソーリ教育では、「赤ちゃんはどこに行ってもいい」という前提で環境づくりをしています。危険のないお部屋をできるだけ多くして、まわりを自由に探索できることが理想です。どうしても危ない場所はあらかじめ柵などで囲っておき、赤ちゃんが行けないようにしておくとよいでしょう。
――自主性を最大限引き出すためにも、安全が大切なんですね。
あべさん:安全と同時に、赤ちゃんが安心できる環境づくりも大切です。居心地のよかったママのおなかから急に外に出てきた赤ちゃんは、最初は不安ですが、「この世界は安心できる場所なんだ」と感じることで、まわりの人たちを信頼できるようになります。
――どのような部屋づくりをすれば、赤ちゃんは安心できますか?
あべさん:私が推奨しているのは、家の中に「4つのコーナー」を設けることです。「寝る」「授乳」「運動」「おむつ替え・着替え」の4つのコーナーを設けて、何かをする際の固定の位置を決めておくのです。いつもと同じ場所で、いつもと同じことをする。そのくり返しで、赤ちゃんはだんだんと安心します。逆に場所がコロコロ変わると、赤ちゃんは世界のことがわからずに不安になります。
――おもちゃを置く場所も決めておいたほうがいいですか?
あべさん:起きている時間に過ごす運動のコーナーに決めておくのがいいでしょう。モビールをつるせばそれを見たり触ったりして楽しみますし、鏡をおけば自分の姿や動きを見て楽しみます。逆に寝る場所には、おもちゃのような刺激となるものは置かないほうがいいでしょう。
3~5カ月の赤ちゃんにぴったりのおもちゃはコレ!
モンテッソーリ教師・あべようこさんおすすめの、3~5カ月にぴったりのおもちゃを紹介します。
【モビール、ガラガラ】
0~3カ月の赤ちゃんにもおすすめのモビールやガラガラは、この時期にも引き続きおすすめです。ただし、赤ちゃんは興味あるものに自分から手を伸ばすようになるので、遊び方は変わります。「触る」「持つ」ということにフォーカスして、触り心地のいい素材、持ちやすい形状を考えて選びましょう。
【ビーズ(にぎる用)】
ガラガラをつかむのが難しい間は、それよりもつかみやすいものを選んでみてください。糸に大きな丸いビーズを通したおもちゃは、比較的握りやすいでしょう。
【ボールトラッカー】
木製のボールがゆっくりと坂を転がっていくボールトラッカーは、ゆっくりと目で追える(追視できる)ようになるこの時期にぴったりのおもちゃです。この月齢が過ぎた後も自分でボールを転がすなどして楽しめるので、長く遊べるおもちゃとしておすすめです。1人でじっくり集中するのはまだ難しいので、ママ・パパも一緒に楽しんでください。
6カ月~1歳の赤ちゃんにぴったりのおもちゃはコレ!
モンテッソーリ教師・あべようこさんおすすめの、6カ月~1歳にぴったりのおもちゃを紹介します。
【輪投げ】
「ものをつかむ」「つかんだものを落とす」ことができるようになると、輪投げのような「輪を棒に通す」系のおもちゃを楽しむようになります。実際に輪投げをするわけではありませんが、つかんで落とすだけでも赤ちゃんにはおもしろいのです。
【まる鈴】
まわりに何もなくても赤ちゃんははいはいを始めますが、円筒状の木製の入れ物に大きな鈴の入った「まる鈴」など、優しい音色を出して転がるおもちゃがあれば、はいはいやずりばいでそれを喜んで追いかけていきます。まる鈴はもっと早い月齢でも、この月齢を過ぎた後でも楽しめます。
【玉入れ(ぽっとん落とし)】
箱の上部の穴からボールを入れる「ぽっとん落とし」は赤ちゃんの定番おもちゃですが、ボールを落とした後、別の穴からボールが排出される「玉入れ」というおもちゃも赤ちゃんにはおすすめです。赤ちゃんが玉入れに入れたボールは、赤ちゃんの目の前から一時的に消えてしまうけれど、箱から排出されることで「実はある」ということに気づきます。赤ちゃんにとっては、「消えたものがまた現れる」という現象は楽しくてしかたがありません。「いないいないばあ」と同じです。木製の玉入れであれば、ボールを入れたときの「コトン」という音も楽しいでしょう。
【かかわり方の秘訣】お手本を見せよう!
最初は大人から働きかけてもらわないとおもちゃで楽しめなかった赤ちゃんも、自分でできることが増えてくると、だんだんと主体的に遊べるようになります。ただ、この時期はまだできないことが多いので、最初はママ・パパがお手本を見せてあげましょう。たとえば玉入れがうまくできないのであれば、ママ・パパが「こうやりなさい」と口だけで教えるのではなく、やっているところを実際に見せてあげる。そうすると、それを見て理解する赤ちゃんはどんどんクリエイティブになり、遊びの幅を自分で広げていきます。
うまくできたら、ママ・パパが一緒に喜んであげることも忘れずに。親子のコミュニケーションが深まることで、赤ちゃんはおもちゃで遊ぶことがもっと楽しくなります。
ものをつかむ、落とす、はいはいする、つかまり立ちをする。0歳代は赤ちゃんにとって大きなイベントの連続です。その中で遊びの幅も広がるので、赤ちゃんができることに合わせたおもちゃ選びをしてあげたいですね。自分でできることが増えていくのはいいことですが、一方で誤飲などの危険も高まるので要注意。誤飲の心配のない大きさのものを選ぶ。おもちゃの対象年齢、安全基準のマークを確認する。こういった基本的なことは常に意識しておきましょう。
※直径39㎜以下の大きさのものは、乳幼児は誤飲するおそれがあります。遊ぶ際には必ず大人が目を離さないようにしましょう。
(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修・イラスト/あべようこさん
国際モンテッソーリ協会公認国際教師(0-3歳)、日本モンテッソーリ協会公認国際教師(3-6歳)、教育コンサルタント、保育士。上智大学文学部教育学科卒。モンテッソーリ教育のポータルサイト「イデー・モンテッソーリ 」を運営し、モンテッソーリ子育てのマンガを描くなどしてその普及に努めている。
参考文献/『未来の才能をのばす 0歳と1歳のモンテッソーリ子育て』 (河出書房新社・あべようこ著)