夫婦関係の良し悪しは、子育てにどう影響する? チーム育児という考え方とは
共働き世帯は増加しているのに、育児の分担は母親に偏ったままである昨今、注目が集まっているのが「チーム育児」。
母親だけでなく父親や家族はもちろん、地域や友人、さまざまなサービスなどを巻き込んで、「みんなで子育て」をしようという考え方です。
東京大学の発達保育実践政策学センター(以下Cedep)は、「新しい時代のチーム育児を考える」をテーマにしたシンポジウムを2019年11月に開催しました。
たまひよONLINEがレポートします。
夫婦関係が良い夫婦ほど、子育てに前向き
「夫婦仲の良し悪しは、子どもの認知的・非認知的スキルの発達と密接な関連がある」とのことが、従来の研究で指摘されてきました。0~2歳児期の子育てについて調べたCedepとベネッセ教育総合研究所の共同研究(「乳幼児の生活と育ちに関する調査2017-2018」)でも、「夫婦仲が良いと感じている夫婦ほど、子どもにとって望ましい関わりをし、子どもとの信頼関係も安定する傾向にある」ということが確認されました。
特に母親が、夫婦関係が良いと感じることが、夫の養育行動にポジティブな影響を与えるとのこと。母親の気持ちがポイントになるということです。
では、母親が夫婦関係が良いと感じるのは、どういうことが要因になるのでしょうか。
夫婦関係をよくするためには「妊娠期から」が重要なポイント
調査によると、1、2才の子どもをもつ母親が夫婦関係が良いと感じる要因は、「妊娠期から夫婦で子育てについて話し合う」経験や、「妊娠期から夫の支え」があったという経験であることがわかりました。「産後に子育てを分担した」経験も影響するものの子どもが産まれる前から、夫婦でチーム育児に向けた準備をすることが重要であるということがいえます。
もっと子育てしたい!パパの育児を阻むもの
今回の調査では、「妊娠期からのチーム育児が重要」ではあるものの、1〜2歳の子どもがいる家庭では、母親の就労状況にかかわらず、「母親が子育ての8〜9割を担っている」という回答が多いという結果に。
また、「もっと子育てがしたい」という父親も少なくないものの、平日に希望通りの時間に帰宅できない実態も浮き彫りとなりました。
一方で「子育てと両立しやすい職場環境」で働く父親は、職場から家庭にネガティブな感情を家庭に持ちこみにくく、子育てに対して前向きな気持ち(楽しさや充実感)をもちやすいという結果も明らかに。
チーム育児の一員として「職場」が加わることが、子どもの養育環境の質を高めることにつながると言えそうです。
夫婦に必要なのは、助けを求める力!
さらに、悩みを相談したり、子どもを預けたりできる「子育てを支えてくれる人」についても分析をしています。結果、家族だけでなく、友人や地域といった頼りになるコミュティが広い人ほど、子育てに対して前向きな気持ちをもちやすいということがわかりました。また、母親・父親ともに、困ったときに助けを求めることができる、援助要請スキルが高い人のほうが、子育てを前向きにとらえる傾向に。
ひとりでかかえこまず、チームやミカタを増やし、頼ることができる力が大切といえそうです。
シンポジウムの後半に、Cedepのセンター長である東京大学の遠藤利彦教授より「人間の赤ちゃんは、ほかの哺乳動物と比べて未熟で手がかかる状態で生まれるだけでなく、その後も食事の世話や安全の確保など子育てにかかる期間が長い。こうした子どもを、人間の歴史の中で、母親ひとりで育ててきたとは考えられず、チーム育児が子育ての自然な姿である可能性が高い。現代に合ったチーム育児とはどういうものか考えることが必要である」という発表がありました。
それぞれの家族の事情により、チームをつくるのが容易でない場合も考えられる現代、家族はもちろん地域や職場などを含め、社会全体がチームの意識をもっていくことが、子どもにとって幸せな環境をつくることになるといえそうです。
シンポジウムの模様
資料出典
ベネッセ教育総合研究所「新しい時代の"チーム育児"を考える〜乳幼児の生活と発達に関する縦断研究より〜」
ひよこクラブ2020年1月号別冊付録「パパが読むチーム育児BOOK」
(文/たまひよONLINE編集部)