教育費はどのくらい?いつから貯めるのが正解?
もうすぐ新学期、入園(入学)シーズン。将来かかる教育費に不安を抱える方もいるかもしれません。教育費に限らず、お金の不安は「先が見えないもの」ではないでしょうか。
今回は、教育費の目標額設定の仕方、そして、教育費をどのように貯めていくかについて、ファイナンシャルプランナーの海老原政子さんに紹介してもらいました。
海老原 政子
ファイナンシャル・プランナー/住宅ローンアドバイザー
生命保険募集人の経験から、ライフプランの重要性に目覚めFP資格を取得。結婚や出産など人生の節目におけるお金のアドバイスができる専門家。生命保険の見直しや住宅購入相談、家計改善アドバイスが好評。
大学は私立?公立?進路のイメージを持ちましょう
家計相談で感じることは、「我が家の場合、○○資金はいくら必要か?」を知りたい人が多いことです。逆に言うと、先が見えれば今やるべきことが見えてくるため、不安は小さくなります。あなたが抱える不安をそのままにせず、向き合ってみることをおすすめします。
コツコツ貯めていくことが必要な資金のうち、教育費は“貯める目安のとらえやすい資金”といえるでしょう。子どもの年齢から、教育費が必要になるまでの期間が想定できます。
生まれたばかりの赤ちゃんや乳幼児の場合、教育費の準備手段として頭に浮かぶのは「学資保険」かもしれません。私見ですが、お子さまが小さいうちは進路がわからないため「とりあえず学資保険にでも入っておくか」という感じになりがちです。
学資保険で貯める方法ももちろんありますが、手段の巧拙よりまず教育費の目安を考えるほうが先だと考えます。なぜなら、「いつまでに」「いくら貯める必要があるか」というマネープランが決まらなければ、そのプランを実行する手段の良し悪しも決められないはずだからです。
教育費準備において、お子さんの進路のイメージを具体的に考えることが最初のステップになります。
お子さんの進路が私立か公立か。進学費用のうち、どれくらいの金額を親として我が子に用意したいかを考えてみましょう。
公立大学は4年間で約320万円、私立理系は620万円
教育費のピークは大学の4年間です。
高校までは家計から授業料などを捻出し、高校卒業までに大学4年間にかかる費用を貯めておく、というのが一般的な考え方です。たとえば「公立大学の進学費用ぐらいは親として出してあげたい」場合、次のように教育費の目安を算出します。
「平成30年度学生納付金調査結果(文部科学省)」によると、公立大学(昼間部)の初年度費用の平均は約79万円(うち授業料は約54万円)です。くわえて、通学定期代や教材費などが年間20万円かかると考えると、自宅から近場の公立大学への進学を想定した場合、約320万円が大学4年間の教育費目安となります。
私立大学も同様に考えていきましょう。ただし私立大学の場合は、文系学部か理系学部でかかる費用が変わります(「平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査結果(文部科学省)」参照)。よりお金のかかる私立理系学部への進学費用(自宅通学)を考えると、大学4年間で約620万円と計算できます。
下宿やひとり暮らしをして通学する場合は、通学費用を除き家賃と生活費が別途必要です。
「私立高校や中高一貫校に通わせたい」「双子(年子)なので多めに貯めたい」など各ご家庭の事情があれば、それらも加味していきます。
筆者は、高校3年生になると塾代や模試費用などのお金がかかるため、大学4年分の教育費を高校2年生までに貯めることをすすめています。仮にお子さんが現在2歳であれば17歳になるこれからの15年間で教育費を積み立てましょう。公立大学なら22万円/年、私立なら42万円/年貯めていければよいわけです。児童手当を全額貯蓄できれば自前で積み立てる額はさらに少なくなりますよね。
参照:文部科学省「平成30年度学生納付金調査結果」
参照:文部科学省「平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査結果」
貯めどきは小学校時代。貯蓄目標は進路から逆算!
最初はミルクとオムツ代のみで済んだ赤ちゃんも、成長するにつれてスイミングなど習い事を始めたり、部活動で遠征試合に出かけるようになったりしていきます。お子さんの成長とともに家計支出は増える傾向にあります。そのため、教育費を貯めるペースもお子さんの成長にあわせて変えると、途中で挫折しにくくなるでしょう。
教育費の「貯めどき」は、一般的に中学入学前までの間です。保育料負担がある共働き世帯にとって小学校6年間はもっともお子さんにお金がかからない時期。この時期に集中して貯めるだけで公立大学進学費用を工面することも不可能ではありません。
小学校時代は、お子さんの習い事代やレジャー支出が膨らみがちです。しかし、財布のひもを緩めず年間貯蓄ペースを1.2倍~2倍まで上げられれば、仮にお子さんが中学受験や私立高校に進学することになっても大学進学費用が貯められるでしょう。目先の家計収支だけでなく、先の見通しを持って家計管理することをおすすめします。
高校進学が決まったら資金を点検しよう
教育費の目安は、お子さんの進路によって異なるという話を最初にしましたが、逆を言えば、上位の学校に進学した後は、教育費の再点検をする絶好の機会ということになります。
進学する高校が定まれば、その学校の進学実績をもとにお子さんの進学先をリアルに想定できるはずです。仮に、国公立大学より私立大学の進学者数が多いようであれば、家計を見直して貯蓄ペースを上げる必要があるかもしれません。前年度の進路実績を入学説明会で知ることもあるでしょう。高校進学が決まったらお子様を交えて進路について話し合ってみましょう。
教育費はよく「ひとり1千万円かかる」と言われますが、実際にはお子さんがどういう進路を選ぶかでかかる費用は異なります。ただ、早く貯蓄をスタートすればするほど必要な年間貯蓄額は下がっていきます。
「ジュニアNISAがいいのか、学資保険がいいのか?」貯める手段の検討をする前にまず進路のイメージを持つようにします。そして教育費の貯蓄目標を定めましょう。
教育費として年間で貯められるようになった後は、節目で教育資金額を点検することもお忘れなく!