妻、夫が投資に対してNOなときを、ほったらかし投資家に聞く
連載19回目。今回は、アンケートで多かった「投資を始めたくても、ママ(またはパパ)が反対で……」というお悩みに、先輩投資家がずばり回答いたします。
将来のお金が不安。投資も気になるけど、子育てが忙しくて手が回らない……という新米ママ・パパに伝えたいのが、手間をかけずにできる、ほったらかしインデックス投資。
ブログで投資経験を綴り、著書も出版、インデックス投資家のバイブル的存在として知られる投資ブロガー・水瀬ケンイチさんが、超カンタンガイドしてくれます。「新米ママ・パパむけインデックス投資講座。教えて!ほったらかし投資家・水瀬さん」第19回。
投資家の間では「嫁ブロック」と呼ばれています
こんにちは!水瀬ケンイチです。
今回は、投資において、意外と大きな問題となることが多い、夫婦間の価値観の違いについて。
自分は投資をやってみたい。でも妻・夫が「そんなリスクのあるものに、お金を使うなんてとんでもない!」と大反対、というケースはよくあります。
こうした、投資をしたくても、配偶者の反対が強くてできないことを、投資仲間たちは”嫁ブロック”と呼んだりしています。
実際、先日行った新米ママ・パパへのアンケート※でも、「投資をしたいんだけど、妻(夫)がが……」と、配偶者のブロックに悩む声は少なくありませんでした。
実は何を隠そう我が家も、夫の私が、曲がりなりにもインデックス投資家として書籍も出し、これほど熱心に積み立て投資を続けているのに、妻は全く関心なし。共働きでお互いに貯めている資産を、年に数回公開するのですが、私の資産がどんなに増えても、あるいは減っても「ふーん」。本だって、一度も読んでくれないんですよ……(グスッ涙)。
ブロックまではされないのですが、インデックス投資を信条とする私としては、やっぱり愛する妻に、少しはどんなものか関心を持ってほしいもの。そんな一抹の寂しさがありました。
ですが、ついに!その妻が!「ちょっと、どうやるのか教えて」と自ら関心を持ってくれたのです!
その時に気づいたことが、投資にアレルギーを持つ妻、あるいは夫のブロックを解くヒントになるかもしれないと思い、今回は我が家の事例で恐縮ですが、ご紹介したいと思います。
調査概要:インターネットリサーチ。「あなたご自身に関するアンケート」2019年12月実施。調査対象地域は全国。25〜44歳の既婚男女で、5歳以下の子どもがいる対象者のうち、投資に関心がある、あるいは投資の学習意向がある352人が質問に回答。
投資に一切関心がなかった妻が、振り向いてくれた理由
私の妻が初めてお金の運用に興味を持ってくれたのは、妻の貯蓄がある程度、貯まってきたタイミングでした。「なんとなく、普通預金においておくのはもったいないのでは?」と思ったようで、何かいい運用はないか、と聞いてきてくれたのです。
この、相手のお金に対する関心が高まっているときというのは、ブロックを解くよいタイミング。なぜなら、こちらの話を聞き入れてくれるオープンハート状態だからです。
私はすかさず、つみたてNISAをすすめました。その頃はまだ、つみたてNISAが始まってすぐの頃だったのですが、私はNISA時代から非課税枠を使ってインデックス投資を続けており、ちょうど5年目というとき。まずは論より証拠と、その結果を見せたのです。
NISAでは、年120万円(開始当初は年100万円)の非課税枠をすべて使って、積み立てでインデックスファンドを購入していましたので、5年間で投資した元本は560万円。当時の利益は、約100万円近くになっていました。私としては、この成績にぐっときてくれるかな?と思ったのですが、妻にひびいたのは、そこではありません。妻を動かしたのは、次の説明です。
「実は、この利益の100万円がね、普通の投資だと税金で20万円もとられちゃうんだ。でもつみたてNISAなら非課税だから1円も取られないんだよ」。
これを聞いた妻は、急に前のめりになり、「え、なにそれ、めちゃめちゃお得じゃない!」と、一気に乗り気に。初めて、インデックス投資について真剣に聞いてくれ、さっそく自分でつみたてNISAを申し込んでいました。
(最後まで、「本当に面倒くさくないのね?」と何度も念を押されましたが……)
リスクは「こわい」人に合わせて調整を
私がどれほど言葉をつくして、本まで書いてインデックス投資の魅力を語っても、振り向いてくれなかった妻を、一気にその気にさせてくれたつみたてNISAの「お得」というワード。ちょっと妬けてしまいますが、これも、話を聞いてもらうためには有効かと思います。
もう一つ、最後の後押しとして覚えておいていただきたいのは、相手に対する思いやりです。投資を嫌がる理由の多くは、「リスクが心配だから」というものです。相手は不安に思っているわけですから、一緒に投資をやる際は、リターンを欲張らず、リスクを抑えて安全サイドに立った運用に。「いくらまでならマイナスになっても耐えられるか」をきちんと聞き、相手が安心できるリスク許容度に資産の配分を調整しましょう。結婚生活同様、決して、自分の意見をゴリ押ししないことが、長く、仲良く投資を楽しむ秘訣です。
今回は、私の経験から、妻や夫から投資を反対された場合に、参考になりそうなヒントをご紹介しました。参考になれば、幸いです!
次回は、皆さんにぜひ知っていただきたい「ファンド・オブ・ザ・イヤー」について。これは、個人投資家が選ぶ投資信託のアワードで、私もずっと参加しています。単なるランキングではなく、とても学べることが多いので、お楽しみに!
ではまた
(監修・水瀬ケンイチ イラスト・おぐらなおみ 取材・文 大上ミカ)
水瀬ケンイチ
1973年生まれ。IT企業に勤める会社員であり、個人投資家。2005年より、ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」で自身の投資経験を綴り、インデックス投資家のバイブル的存在として認知される。著書に「お金は寝かせて増やしなさい」(フォレスト出版)、カラー版 お金が勝手に増える「熟成」投資術 (宝島社新書) など。
参考文献:水瀬ケンイチ著書
お金は寝かせて増やしなさい(フォレスト出版)
全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド(朝日新書)
投資は元本保証がありません。資産運用はあくまでもご自身の責任で行ってください。本連載の内容を実践したことによって被る損害については、いかなる理由があろうとも、監修者、運営社、執筆者ともその責任は負いません。