インデックス投資って最後はどうしたらいいの?をほったらかし投資家に聞く
連載21回目。約1年続いたこの連載も、ついに今回が最終回!最後は、これまで学んできたインデックス投資の出口戦略について先輩投資家が解説します。
将来のお金が不安。投資も気になるけど、子育てが忙しくて手が回らない……という新米ママ・パパに伝えたいのが、手間をかけずにできる、ほったらかしインデックス投資。
ブログで投資経験を綴り、著書も出版、インデックス投資家のバイブル的存在として知られる投資ブロガー・水瀬ケンイチさんが、超カンタンガイドしてくれます。「新米ママ・パパむけインデックス投資講座。教えて!ほったらかし投資家・水瀬さん」第21回。
積み立てたお金は、どう使う?
こんにちは!水瀬ケンイチです。
連載最終回となる今回は、コツコツと積み立てた資産を、使うときはどうしたらいいか、インデックス投資の「出口」についてお伝えしたいと思います。
お金は使うためにあるもの。インデックス投資は、長く続けることが大前提ですが、育てた「実り」は収穫してこそ価値があります。ただ、一気に使うのではなく、できるだけ資産を増やす力を保ちながら、取り崩していくのが理想的。
私がおすすめする「取り崩すときのルール」は、この理想を目指し、長期で少しずつ使っていくというもの。積み立てたときと同じように、使うときもコツコツ使うのです。2パターンあるので、状況に応じて使い分けていただければと思います。
今、インデックス投資を始めたばかりの新米ママ・パパさんにとっては、資産の取り崩しは、まだまだ遠い将来の話ではありますが、頭の片隅にメモしておいていただけたら嬉しいです。
方法1:「株式」の部分から売っていく
まず、1つ目の方法は、資産のうちの「株式」部分を売却するという方法。頻繁に取り崩すのではなく、数年に1度ペースで使いたい人に向いている方法です。
この連載では、「世界株型」と「国内債券型」の2つのインデックスファンドを組み合わせる方法をおすすめしてきましたが、この場合なら「世界株型」のインデックスファンドだけを売ります。
具体的には、5年に1度ぐらいを目安に4〜5%。仮に、「世界株型」を70%、「国内債券型」を30%の比率で積み立てていたとしたら、売却後は「世界株型」が65%、「国内債券型」が35%になるように、世界株型を少し売却して減らすのです。
この方法で取り崩すと10年後には、「世界株型」の比率が10%減り、逆に「国内債券型」が10%増。手元にはキャッシュを時々残しながら、年齢が上がるとともにリスク資産である「世界株型」を減らし、より安全サイドに立った資産に調整しながら運用を続けられます。
誰にとっても、歳を重ねるとともにリスク許容度が低下するのは自然なことです。
資産全体の比率を保守的に変更していくプロセスは、5年に1度ぐらい行うのが望ましいので、取り崩しのついでに、このプロセスもまかなってしまおうという考え方です。
お子さんの進学時など、まとまった金額を使いたいときも、この方法で取り崩すと合理的だと思います。
方法2:積み立てた比率と同じ比率で売っていく
2つ目の方法は、資産全体の比率を崩さず、全体的に少しずつ売っていく方法。この方法は、毎月や半年ごと、1年ごとなど、定期的に使っていきたい時に向いていますす。
もし、「世界株型」と「国内債券型」で5:5の資産なら、取り崩すときも同じ割合で売っていきます。取り崩したあとも、資産の内訳を5:5のままで維持するのです。
取り崩す目安は、年間で資産残高の4%ほどにします。この数字は、インデックス投資が盛んなアメリカでは「4%ルール」と呼ばれ、とてもポピュラー。根拠はややこしいので省きますが、簡単にいうと年間で4%ずつ取り崩せば、理論上は資産をあまり減らさずに使っていくことができる、というものです。
たとえば、定年して年金生活になったら、資産残高の4%を毎年取り崩して、年金に足して使う、という使い方に適しています。
定額ではなく、定率で取り崩すのがポイント
方法1にしても、2にしても、「5年おきに100万円ずつ」、「毎年70万円ずつ」というような定額ではなく、定率で取り崩すのがポイントです。
定額で取り崩すと、金額が一定なので分かりやすいのですが、相場によっては資産の比率が大きく崩れ、自分が許容しきれないリスクを抱えてしまう可能性もあります。
定率の場合、取り崩せる金額は相場によって上下しますが、資産の比率を自分でコントロールすることができるのがメリット。例えば、資産残高が1000万円のときと、1500万円のときでは、同じ4%でも売却によって得られるキャッシュは変わってしまうわけですが、最後まで、自分の取れるリスクの範囲で運用しながら、使っていけます。
また、定率だと資産が成長する力を維持しながら取り崩せるので、資産がより長持ち。資産を増やしながら使っていくことが可能です。
本当に必要なときは、躊躇せず使いましょう
最初にもお伝えした通り、お金は使うためにあります。今回は、理想的な取り崩し方として、少しずつ定率で売却していく方法をお伝えしましたが、どうしてもお金が必要なときは、躊躇せず、必要なだけ売却しましょう。
崩すのがもったいないからと、キャッシングなどに頼らないようにしてくださいね。
さて、この連載も今回が最終回。ここまで約1年間もの間、お付き合いいただき、本当にありがとうございました!
先輩投資家として、新米ママ・パパの皆さんにインデックス投資の魅力や方法、そして本質を少しでもお伝えできていれば幸いです。
インデックス投資を始められて、何か疑問や不安が出てきた時は、私が長年書き続けているブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」も、お役に立てるかもしれないので、ぜひチェックしてみて下さいね。
最後になりましたが、皆さんの豊かな未来と、お子様の健やかな成長を心から願って。
またいつかお会いできる日を、心から楽しみにしています!
ありがとうございました!!
監修/水瀬ケンイチ イラスト/おぐらなおみ 取材・文/大上ミカ
水瀬ケンイチ
1973年生まれ。IT企業に勤める会社員であり、個人投資家。2005年より、ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」で自身の投資経験を綴り、インデックス投資家のバイブル的存在として認知される。著書に「お金は寝かせて増やしなさい」(フォレスト出版)、カラー版 お金が勝手に増える「熟成」投資術 (宝島社新書) など。
参考文献:水瀬ケンイチ著書
お金は寝かせて増やしなさい(フォレスト出版)
全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド(朝日新書)
投資は元本保証がありません。資産運用はあくまでもご自身の責任で行ってください。本連載の内容を実践したことによって被る損害については、いかなる理由があろうとも、監修者、運営社、執筆者ともその責任は負いません。