専業主婦→事務職→飲食業→セラピスト。専業ママの再就職&転職ヒストリー
お子さんの入園・入学など、子育てが一段落したタイミングで「そろそろ仕事を再開したい」と考える人もいるのではないでしょうか。
今回は、お子さんの幼稚園入園のタイミングで再就職を果たし、アラフィフで新たな職種に挑戦したママに話を聞きました。
子育てをしながら何度かの転職をした経験から、自分にあった仕事に出会うためのヒントを探ります。
長男の幼稚園入園を機に、「働きたい」という思いを叶える
お話をうかがったのは、20歳男子と5歳男児のママ、伊藤あけみさん(47歳)。
伊藤さんは24歳で結婚を機に仕事を辞め、一度専業主婦になったのだそう。
「夫の希望で専業主婦になりましたが、働きたいという思いはずっとありました。そして、長男の幼稚園入園前くらいから再就職を意識しだしたんです。ちょうど、女性の事務職を探している会社を親族が紹介してくれたので、その会社で働き始めることにしました。勤務は16時までということ、また自転車で行ける距離だということも、子育てをしながら働く自分にとってありがたいと思いました」
この会社で10年働いたという伊藤さん。そのあと、飲食店に転職したそう。
「飲食店への転職は、長男が14歳の時でした。当時わたしは40歳。そのころ、ちょうど離婚したということもあり、生活のためにも、長時間働ける環境を探していました。もともと接客業をしたいと思っていたことも、転職の理由のひとつです」
女手ひとつで子どもを育てるのは、大変なこと。子育てと仕事をどう両立したのでしょうか。
「とにかく子どもを養っていかなくては、という気持ちでした。昼間働いて夕方家に帰って晩ごはんを作り、子どもが帰ってきたら食べさせて、また仕事に戻るという日々でした。本当に寝る時以外に休む間はなかったですね」
飲食業へ転職後、再婚し、夫婦で独立開業することに
そんな生活を1年続けたころ、転機が訪れます。同じお店で働く男性と再婚し、お金を貯めて、2人で飲食店を開くことになったのです。
「独立はうれしいことでしたが、お店のオープンと次男の出産の時期が重なったため、産後2カ月で仕事に戻りました。幸い、義母が女性が働くことへの理解があったので、義母の協力を得て、この時も昼夜働いていましたね。
でも飲食店の経営は難しく、3年後に店をたたむことになりました。すぐに、他の飲食店の求人を探し、働きだしたのが44歳の時です。そのときには飲食店で働くことに慣れていたので、転職後も仕事内容や生活スタイルで苦戦することは少なかったですね」
1枚の店頭ポスターが新たな業界へのきっかけに
そうして1年が経った頃、伊藤さんに二度目の転機が訪れます。
「ショッピングモールを歩いていて、『未経験者歓迎、手に職をつけたい方、お客様の立場に立った接客がしたい方』などと書かれた求人のポスターを見つけたのです」
それは、全国に500以上の店舗を持つリラクゼーションスペース「ラフィネ」の求人でした。伊藤さんはこれを見て、家に帰ってすぐ、ラフィネについて調べたそう。
「ボディケアやリフレクソロジー、フェイスセラピーなどをお客様に施術するセラピストの募集でした。これまで経験したことのない世界ですが、接客をもっとつきつめたいと思っていた私にぴったりなような気がしました。また実際に働き出す前に、無料で研修を受けることができて、しっかりと技術を身に付けられる点も魅力でした」
ラフィネで働きたい、と思った伊藤さん。早速面接を受け、研修を受けることに。
「研修では、施術の技術や接客などをみっちりと学び、最終試験を受けてからインターンに出ます。ラフィネには研修の種類が2パターン、1カ月間ほぼ毎日通って受ける通常研修と、自分の行ける日時を選んで時間をかけて受けるフレックス研修(※)があり、私は後者を選びました。
おかげで、飲食店で働きながら研修を受けることができ、約3カ月の研修を経てインターンとしてお店で働き始めました。45歳の時のことです。
働きだして感じたのは、お客様との距離感の違いです。飲食業だと一度にたくさんのお客様と接しますが、セラピストは1対1なので、1人のお客様に深く接することができます。また飲食店では、急に大勢のお客様がいらしたり、予約が変更になったり、ちょっとしたミスが起きたりと、とにかくイレギュラーの連続。働いている間中、ずっと忙しない状態でした。
でもセラピストは施術の間、じっくりとお客様に向き合うことができます。責任感もありますが、その充足感は大きいですね。
疲れた顔で来店されたお客様の表情が、帰る時には明るくなっていたり、『スッキリしたわ〜』などと笑ってくださったりする時が一番うれしいです 」
※フレックス研修は現在実施を中止中。くわしくはWebサイト([だから、ラフィネ]と検索)でご確認ください。
心に余裕が持てる働き方と時間の使い方を目指して
現在の伊藤さんの働き方は、8〜9時間勤務を週5日。以前に比べると、仕事で家を離れる時間は大幅に減ったそう。
「仕事に振り回されていると、自分もギスギスとしてしまい、家族にもそのまま接してしまいます。だから、今は心に余裕を持ちたいと思っています。
先日、80歳から新しい習い事を始めたという方とお話しする機会がありました。生き生きとしていて、とても楽しそうに話すんです。私もこういう歳の取り方をしたいと思いました。
これまでは、自分の時間はまったくありませんでした。働く時間が長かったし、忙しすぎて美容院に行くこともできませんでした。でも今は1人で美容院へ行く時間も作れるようになりました。
先日は自分の誕生日だからと、記念に着物を着た写真を撮りに行ったりもしました。そういう遊びの時間も作っていこうと思っています。
子どもたちには働く姿ばかりを見せてしまっていたからか、次男からは『いつも働いてくれてありがとう』と手紙をもらったり(笑)。ちなみに長男からは誕生日にハンドクリームをもらいました。今まで手をかける側だった子どもから何かをしてもらえるのって、うれしいですね。頑張ってきてよかったなと思いました」
最後に、再就職を目指すママやアラフォー・アラフィフで再就職・転職を考えているママたちへのメッセージをもらいました。
「チャレンジすることは年齢に関わらず、自分次第でいつでもできるものだと、私は思っています。私自身も、現在セラピストとしての技術を磨くために勉強しているところです。みなさんそれぞれ、いろんな事情があると思いますが、『自分には無理だから…』と諦めたりせずに、やりたいことがあれば、小さなことでも挑戦してみるといいと思いますよ。少し手を出してみると、思いのほか上手く進むこともあるでしょうし、難航したとしても、それも学びにつながるはずです」
「やりたい」と思うことや、「これなら自分にできそう」と思える仕事にチャレンジすることを続けたら、徐々に自分にあった仕事にシフトできた伊藤さん。自分にあった働き方を見つけることは、年齢に関係なく、実現できるのですね。
(文・橋本真理子/bizmom編集部)
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