【パパ栄養士が発信】料理を作ったことがない人にこそ離乳食を作ってほしい
赤ちゃんの成長過程において必要な離乳食ですが、「あまり料理をしたことがない」、「料理に苦手意識がある」というママやパパで離乳食作りを不安に思っている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「離乳食は料理を作ったことがない人にこそ作ってほしい」と発信している、雑誌やテレビで活躍中のパパ料理家で栄養士の本田よう一さんに話を聞きました。
離乳食ほどシンプルな調理はない
――著書の中で「離乳食は料理をしたことがない人にこそ作ってほしい」と書いていますが、それはなぜですか?
本田さん(以下敬称略) とにかく離乳食の調理はシンプル!これにつきます。
離乳食初期は、“煮る”、“すりつぶすor刻む”だけでOK。
「味が決まらない…」なんで悩む必要はないんです。むしろ初期の離乳食は味つけしたらダメなんですから。だから料理初心者にもできるんです。
――料理に慣れていたり、料理が好きな人にとっては物足りないくらいかもしれませんね。
本田 離乳食自体はとてもシンプルなので、ママやパパのお気に入りのお皿を使ったりなどの工夫をして楽しみを見つけるのもいいですね。
また、自分が作った離乳食は子どもが食べてくれるとうれしいし、食べてくれなかったときはその原因を探しますよね。
その原因を取り除いて、また与えて…。そんなふうに繰り返していくうちに、料理に苦手意識がある人もだんだん料理がうまくなっていくんじゃないかと思います。
離乳食が作れたら介護食への応用もできますので、少し先のことになるとは思いますが、子育てが終わっても役に立つ場面があるかもしれません。
今、子育て中に料理についての苦手意識をなくしておくことが、将来にもつながると思うんです。
――調理が簡単な離乳食でも、やっぱり自分が作ったものを食べてくれるというのはうれしいので、モチベーションも上がりますね。
本田 食べる、食べないというリアクションだけでなく、「スプーンをつかめるようになった!」といった日々の成長を感じたり、「この食具がお気に入りなんだな」などの発見があったり、食べたものによる排便の変化など、まだ言葉が話せない子どもとの貴重なコミュニケーションの一つにもなるんですよ。
――ただ作って食べさせて終わり、ではなくて、離乳食をコミュニケーションとしてとらえると、楽しみが増えますね。
本田 また、僕の場合は、離乳食は子どもだけでなく妻とのコミュニケーションの材料にもなっていました。
「何を食べさせるか?」、「旬の素材は何か」などを話し合ったり、アレルギーの可能性も考慮して「いつどんな食材を食べさせるか」、「病院にかかれる時間は何時までか」などを情報としてたがいに共有するのも大切ですね。
妻の負担を少しでも軽くするのが自分の役割
――本田さんは、両親が共働き、かつ、介護が必要なおばあさまと同居という状況で、中学生のころから料理を作っていたそうですが、息子さんの離乳食を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
本田 料理を仕事にしていた僕は、妻の妊娠中から食事作りを担当していたんです。
長い期間、おなかの中で赤ちゃんを育ててくれている妻に何ができるかって考えたときに、妻の体の健康を維持することが赤ちゃんにとっていちばん大事なことだと思ったので・・・。
――食生活は健康に直結するものだからこそ、気をつけたいですよね。
本田 それは出産後も変わらず、できることをやろうと思うと、離乳食を作るのも自然な流れでした。
男は母乳が出ないうえに、乳児期は夜一緒に寝ていても泣き声に気づかず起きない、なんてことも聞いていましたが、実際に僕もそうでした。
僕にできること何だろうと考えたら、もともと好きで、今は仕事にもなっている料理に関することでした。
妻は育児休暇中でしたが、“休暇”とは仕事の面のことで、妻自身は休暇とは程遠い毎日でした。産後のホルモンバランスも整っていない状態で、赤ちゃんの生命維持を監視するというのは激務です。
第一子だったので、初めての経験の連続だった育児はなかなかの緊張状態が続いていたと思います。
――そんなふうに考えてくれるとママもうれしいですね。
本田 とにかく、妻の負担を少しでも軽くするのが自分の役割だと思ったんです。
産後の大変な時期に、いくら家にいるからといって家事全般を妻に任せるのは負担が大きすぎると思い、ひとまず炊事を全部僕が担当することにしました。
子どもの離乳食が始まった当時は出張がある仕事もしていたので、数日分をフリージングしてから出張に行っていましたね。
離乳食用のペーストが残ってしまったら 大人用メニューに使うのがおすすめ
――フリージングについてコツはありますか?
本田 離乳食をスタートしたころは、大人用メニューからの取り分けというよりも、離乳食用に作った野菜のペーストを大人用メニューに使うという考え方のほうがおすすめです。
大量に作りすぎてしまったり、作ったのに食べてくれなかったり、理想の保存期間が過ぎてしまって赤ちゃんに食べさせるのはちょっと控えたい、というようなときには、大人のポタージュにしたり、カレーの隠し味にしたり、ドレッシングやお肉のソテーのソースに使うなど、使い道はさまざまですので、ぜひ活用してみてくださいね。
●野菜のペーストを使った大人用のポタージュ
いつか終わりがくる離乳食とうまくつき合って
――離乳食を作ることで、息子さんに対する気持ちに変化はありましたか?
本田 自分の子どもではあるけれど、合う・合わないということがあり、自分とは違う個体であるということを強く認識しましたね。
それに気づけたことで、じゃあそこからどう工夫していくことが子どもにとって最善なのかを模索することができるようになりました。
――最後に、現在離乳食作りに奮闘しているママやパパ、そしてこれから離乳食をスタートするママやパパにメッセージをお願いします。
本田 離乳食は、介護食や病への食と違っていつかは終わりがきます。生後5カ月から始めたとして最長1年くらいですね。
初めての育児で離乳食に悩むと、先の見えないトンネルのような気持ちになってしまうかもしれませんが、ベビーフードのレトルトを使ったり、まわりの人に頼ったりしながらうまく息抜きをしてください。
そして、ママのために何かしたいと思っているパパは、料理が苦手なら洗濯でも掃除でも、授乳以外のことは全部できると思います。
得手不得手ももちろんありますので、どちらも苦手であれば、家事代行などを使うのもおすすめ。
パートナーをできるだけ機嫌よく過ごさせてあげてくださいね。
取材・文/大月真衣子、ひよこクラブ編集部
「料理を作ったことがない」、「料理が苦手」と不安に思っているママやパパは、まずは手に取りやすい地元の食材などを使って、シンプルな離乳食に挑戦してみてはいかがでしょうか。
福島県の出身で“あったかふくしま観光交流大使”としても活動している本田さんによると、ふくしま食材にも離乳食に簡単に取り入れられるものが多いんだそう。
たとえば、福島県産で有名な桃やなし、ぶどうなどの果物は必要があれば加熱し、月齢に合わせた大きさに切るだけでOK。また、車麩(ふ)はだしで煮るだけで立派な離乳食になります。
身近なところから、簡単な離乳食のアイデアを見つけてみてくださいね。
お話・監修/本田よう一さん
(料理家・栄養士)
1983年生まれ福島県泉崎村出身。高校卒業後、栄養士の専門学校に進み、栄養士の免許を取得。卒業後は独学で、料理写真を学び、フリーカメラマンに。2006年からは料理家として仕事を開始。野菜をたっぷり使い、素材の味を活かしたレシピを得意とし、 家族みんなで楽しめる味つけに定評がある。
あったかふくしま観光交流大使として活動中。著書に「パパ離乳食始めます。」(女子栄養大学出版部)がある。