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【医師監修】ウィズコロナ 緊急事態宣言解除、子どもの生活どう守る?・小児科医

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青空の下にマスクをした日本の女の子(5歳)
※写真はイメージです。
ziggy_mars/gettyimages

5月25日、全国的に緊急事態宣言が解除されました。新しい生活様式の提案がなされ、保育園、小学校の分散登校などでの再開に向けた動きや、リモートワークを終了する企業も出てきています。ただ、新型コロナウイルス感染症の特効薬やワクチンは見つけられたり、開発されたりはしていない状況です。赤ちゃんと子どもの健康を守るにはどのように生活をすればいいのでしょうか。「ひよこクラブ」では帝京大学医学部附属溝口病院の小児科医・黒澤照喜先生に、2020年5月28日時点でわかっていること、注意したほうがいいことを、黒澤先生自身の経験を交えて聞きました。

2才以上でもマスクで息苦しくなったら、はずして涼しい場所で安静に

――日本では、外出時にマスクをつけることが、すっかり日常となってきました。そんな中、2才未満の乳幼児はマスクをつけないほうがいいと、学会からの提言も。 熱中症の危険もあるとのことですが、これはこれからの季節、限定のことでしょうか?

黒澤先生(以下敬称略) マスクとは、自分とそれ以外の間に壁を作り、ウイルスなどの有害物を取り込んだり排出したりしないようにするためのものです。
しかしながら、マスクは空気・水蒸気・熱の交換もある程度妨害してしまい、呼吸や循環に影響を与えることもあります。ある程度の年齢ならば、このような場合には自分でマスクをとることもできますが、小さなお子さんの場合はそれができません。
さらに、小さなお子さんが新型コロナにかかるパターンは家族内感染が多いことがわかりました。また、お子さんからクラスターが発生したという事実は確認されていません。したがって、お子さんにマスクをさせるより身近な人たちがマスクをするほうが有効です。
このように、小さなお子さんのマスク着用には安全性に懸念があり、有効性も定かではないことから、すすめられていません。明確な区切りはないですが、米国での勧告などを踏まえつつ、2歳未満でマスクを着用しないように推奨したようです。
とくにこれからは急に暑くなり湿度も上がる時期です。小さい子だけでなく、大きなお子さんでもとくにマスクを着用しながら運動して呼吸が苦しくなったり、気持ちが悪くなった場合は、直ちにマスクをはずして涼しい場所で安静にするなどの対応が必要です。
参考/日本小児科医会「2才未満の子どもにマスクは不要、むしろ危険!」


――手作りのマスクや、布製のマスク、ウイルス対策に効くものと、効かないものがありますか。また、正しい使い方はどうすればいいのでしょうか?

黒澤 コロナ禍に伴って、マスクの種類も増えました。さらに、最近は一時のような枯渇も解消してきた印象です。
どのようなマスクも一定の効果を持ちますが、絶対のものはありません。
たとえば裏表を間違って着用しない、鼻と口をしっかり覆う、同じ紙マスクを数日以上使用しない(可能ならば毎日変える)、洗えるマスクはできれば毎日洗う、マスクを無造作にポケットに入れない、などの対応が必要です。
また、マスクに触る前後には手洗いやアルコール消毒をしっかりすることも大切ですね。

第2波に備えて、ママやパパが感染してしまった場合の対策の検討を

――ママやパパがかかってしまったら、赤ちゃん・子どものお世話をどうしたらいいのか、とても心配という声があります。

黒澤 これは非常に問題ですね。たとえば、パパがかかってしまい、ママが濃厚接触で無症状の場合、ママがマスク・手洗いを厳重に行いながらお子さんのお世話をしてもらう可能性があります。親せきや行政に支援を求めることもできると思いますが、今は確実な方法はありません。完璧な対策を立てるのは難しいのですが、緊急事態宣言が解除され一息ついた今こそ、第2波に備えて家族や親せきなどを交えて、相談しておくことをおすすめします。
なお、軽症自宅待機の場合、患者さんはできる限り別室にいて、接触する人は最低限にするようにとされています。お子さんや赤ちゃんは可能な限り近づけないようにしてください。

――高齢者が重症化するということから、急務があっても祖父母宅の訪問などを控えている「ひよこクラブ」読者世代も多いようです。この状況はまだ変わらないでしょうか。

黒澤 まず、小児が原因となったクラスターの発生はほとんど報告されていません。したがって、移動制限が緩和された場合、全員が無症状で感染の可能性が低いと考えられる場合は訪問を控える必要はないと思います。
逆に、インフルエンザや通常の風邪を子どもが外からもらってきて家族内に感染させてしまうことはこれまでもよくありました。せき・鼻水・発熱などの体調不良があれば、新型コロナウイルスにかかわらず他人にうつしてしまう可能性はあります。このような症状が少しでもある場合は訪問を控えるのが賢明でしょう。

緊急時代宣言解除後の毎日の過ごし方について

――赤ちゃん、子ども、ママが感染しないためには、おうちで過ごすのがいちばんなのでしょうか。

黒澤 緊急事態宣言が発令されている間は、患者(無症状の人も含む)が多かったため、3密を確実に避けられる外出自粛が求められていました。しかしながら、緊急事態宣言が解除された現在、ゼロまではまだまだですが新型コロナウイルス感染のリスクはだいぶ減ってきました。
したがって、徐々に以前のようにお出かけが可能になっていくと考えられます。
おうちにいなければならない場合、お子さんのストレス・運動不足・生活リズムの変調につながる恐れがあります。もともとの日常生活に戻るため、生活サイクル・ルーティンワークを保っていくことが大切です。
わが家の場合は、早起き・早寝を継続し、食事の時間も普段と変わらずに行いました。また、集合住宅に住んでいるため、人の行き来がないこと、迷惑にならないことなどを確認して階段を上り下りさせてゲームのようにしていました。子どもたちも楽しんでいたと思います。

――自粛中にスマホなどで動画を見せる機会が増えた乳幼児ファミリーが多いとようです。動画との上手なつき合い方についてアドバイスはありますか。

黒澤 スマホの過度の利用は以前から問題があるとされています。スマホをうまく利用しつつも、メディア漬けにならないよう今こそ注意が必要です。
具体的には、漫然と使用せずに、ママやパパとの会話の一助として活用する。ママやパパ自体がメディアと節度を持ってつき合う。といった心がけが大切です。
参考/日本小児科医会「子どもとスマホ」


――「ひよこクラブ」では、いつも赤ちゃんはスキンシップが大好き!ドンドン触れ合って、とすすめています。出勤しているパパなどとは、感染予防の面からは控えたほうがいいのでしょうか?

黒澤 スキンシップ、大切ですね。新型コロナ対策としての「ソーシャルディスタンス」の影響で、今までのようなコミュニケーション、スキンシップがとりづらくなってしまいました。
でも、家族と不特定多数の他人は別だと思います。
出勤しているパパも、症状がなくて、帰宅後手洗いなどをしっかりすればお子さんと触れ合えると思います。
ちなみに、私は子どもたちといつも通り遊んでいます。ぎゅっと抱きしめたり、おしゃべりをしたりして、私自身も子どもたちから元気をもらっています。

働くママやパパが直面している保育園問題について

――保育園が再開しても「預けるのが怖い」というママ・パパもいるようです。

黒澤 保育園を含めて、現段階では集団生活で先生から子ども、子ども同士の感染は少ないとされています。また、保育現場は「3密」であることを十分意識して可能な限りの感染対策をしています。したがって、園内や地域で新型コロナ感染が流行している場合などを除き、登園を控える理由はありません。集団保育はお子さんや家族にとってメリットも大きいため、さまざまな要素を考えた上で総合的に判断するのがいいでしょう。
参考/日本小児科学会「新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて」のQ9


――両親がリモートワークで子どものリズムが狂ったり、逆に大人が深夜しか誌仕事ができずに睡眠不足になっていたりと、家族全体の生活リズムが崩れている家族が増えています。どのように改善していったらいいでしょうか。

黒澤 子どもの場合すぐに生活リズムを戻すのは難しいです。まずは現状と理想のスケジュールをそれぞれ書き出してみましょう。具体的には家族全員の起床・食事・外出・入浴・就寝などでしょうか。
その中で早々に直せそうなもの、直さなくてはならないものを考えます(例:朝8時の起床を6時にしたい)。そのためにできることを考えます(例:夜11時の就寝を9時にする。そのために、昼寝は4時までに切り上げ、夕食は6時、入浴は7時にする)。
どれくらいかけて修正していくかを考える(例:起床・就寝時刻を1日15分ずつ前倒しにして、1週間程度かけて直す)。
子どものリズムを整えることでおのずと家族の生活リズムがいい方向に行くと思います。家族で話し合い、協力し合いながら、一つ一つ地道に直していくのがいいでしょう。

赤ちゃん・子どものストレスとも対応を

――ママやパパが、自粛生活でストレスを感じていることも多いようです。

黒澤 今まで当然のようにできていたことができなくなり、また将来に不安を感じるため、ストレスを感じない人はいないと思います。
ストレスを感じるのは当たり前ですので、それをしっかり認識してうまく発散することが大切です。外出が厳しい状態ですと、ストレッチやヨガなど、本格的ではなくてもちょっとしたことでストレスを緩和させていくことが大切ですね。
また、SNSやオンラインを上手に活用して、他人とのコミュニケーションをとるのもいいことです。

また、ママ・パパに注意をしてほしいのは、赤ちゃん・子どもたちもストレスを感じているという点です。赤ちゃんたちは大人が思うよりもずっとママ・パパの様子に敏感です。ママ・パパのストレス量に応じて、お子さんもストレスをためていてもおかしくありません。大人同様、お子さんもストレスを感じないようにするより、発散させる方が現実的でしょう。

参考/国立成育医療研究センター「新型コロナウイルスと子どものストレスについて」


こちらのサイトにはお子さんと一緒にできるちょっとした運動もあります。試してみましょう。

――「コロナ離婚」などという言葉も聞かれ、子どもたちへの影響が少なくないと感じています。

黒澤 コロナによって見たくないお互いの実態が見えてしまったり、将来の不安のため、家族仲が険悪になっていることもあるようです。でも、このような異常事態で今まで通り平穏に暮らしていけるほうが難しく、そのためみんなそれぞれ大変な思いをしながら日々を送っています。緊急事態宣言が解除され、異常事態もいったん落ち着くものと思われます。
今は結果が伴っていなかったとしても、相手の努力を尊重し、お互いに協力しようとする気持ちがあれば、少しずつでも家族で前にすすめるのではないでしょうか。大切な人たちを守るためならば頑張れたり一致団結できたりできると思います。
ただ、どうしても我慢できない場合もあると思います。いろんな事情もご家庭それぞれでしょう。精も根も尽き果ててしまう前に家族・行政・医療機関など誰かに助けを求めましょう。
体が風邪をひくように心も風邪をひきます。ましてや、このコロナ禍の異常事態では心も風邪をひきやすいと思います。心の風邪をこじらせる前に、赤ちゃん・子ども・家族の笑顔を守るため、自分たち一人一人の心身の健康を保ちたいものです。

いずれにせよ、新型コロナについての正しい情報を得ることが大前提です。日本小児科学会を含め、名だたる医療機関や団体が情報を出しています。難しく見えたり、そもそも自分たちに当てはまるかどうかわからないときは、かかりつけの信頼できる先生に相談することが大切です。
参考/日本小児科学会「新型コロナウイルス関連情報」

緊急事態宣言が解除されたからと言って、新型コロナウイルスが消え去ったわけでも、感染のリスクがなくなったわけでもありません。
今まで培ってきた「3密を避ける」「マスク着用」などの習慣は続けることが大切です。
それとは別に、今後は徐々にできることが増えていきます。心身ともにコロナ騒ぎで疲れてしまったお子さんたちが少しでも元気になって早く日常生活を取り戻せるように、皆が知恵を出し合えればと思います。一小児科医として、少しでも力になれたらと感じています。


聞き手/ひよこクラブ編集部

監修/【小児科医】黒澤照喜 先生

初回公開日 2020/06/01

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