不登園・不登校の子が2~3倍に増える可能性が、長期間のが休園・休校影響【専門家が発信】
全国で緊急事態宣言が解除され、幼稚園や小学校も段階的に再開! しかし長期間に渡る休園・休校に心も体も慣れてしまい、「幼稚園に行きたくない」「小学校に行きたくない」と言い出している子もいるのではないでしょうか。
教育学博士で、教育現場に詳しい諸富祥彦先生によると、7月ごろから不登園・不登校児の増加が心配されるそう。理由や防ぐ方法を諸富先生に聞きました。
潜在的な不登園・不登校の傾向を持つ子はクラスで2割。コロナ禍で“行きたくない”気持ちが加速する子も
幼稚園や小学校が再開されて、今、全国的に心配されているのが不登園・不登校予備軍の増加です。
「潜在的な不登園・不登校傾向を持ちながら、これまで頑張って、無理して登園・登校していた子はクラスで2割ぐらいいます。
潜在的な不登園・不登校傾向を持つ子は、集団行動が苦手で、内向的な性格な子に多く、今回の新型コロナウイルスの流行で、急に休園・休校になり自宅で過ごす体験をしたことで、“幼稚園に行きたくない”“小学校に行きたくない”という気持ちが強くなってしまったと思います。
そのため適切なケアをしないと、不登園・不登校の子が2~3倍に増えるのでないかと心配しています。
とくに“幼稚園に行きたくない”小学校に行きたくない“というサインが見られるのが6月、7月なので今の時期は、子どもの様子をよく見てあげてください」(諸富先生)
休校明けの新1年生は、不安やストレスでいっぱい! 揺らぐ心を支えてあげて
子どもの不登校問題で、とくに注意が必要なのが新1年生です。1年生は“小1の壁”という言葉もありますが、幼稚園や保育園に通っていたころとは、生活パターンも人間関係もガラリと変わり、コロナ禍でなくても新しい環境に慣れるのに精一杯です。
休校という長い春休みを経て、突然、新しい世界に飛び込むのは、喜びや期待感よりも不安やストレスのほうが大きくなりがちです。
またコロナ禍で卒園式が中止になった園もありますが、それが子どもの心に大きな影響を及ぼすことも…。
「卒園式や入学式は、新たな気持ちで1歩を踏み出すための大切な儀式です。しかし卒園式がないまま新1年生になると、気持ちの切り替えがつかない子もいます。そうしたサインは“授業を集中して受けられない”“お友だち関係がうまくいかない”“忘れ物が多い”などに現れます。
そのため気になる様子があるときはしからずに“字がきれいだね。さすが1年生だね”“音読上手だね”と、いいところを見つけてほめて、自信をつけさせましょう」(諸富先生)
気分的な不登園・不登校を防ぐには、スモールステップで
もし子どもが“幼稚園に行きたくない”“小学校に行きたくない”と言い出したら、ママやパパはどのように対応するといいのでしょうか。
「いじめなどを受けていないか確認することが第一です。休園・休校明けで気分的な問題のときは、スモールステップで無理をせず、登園・登校に導きましょう」(諸富先生)
ポイントは次の通りです。
<気分的な不登園・不登校を防ぐ6つのポイント>
Point1 4日以上は休ませない
基本はスモールステップで無理なく登園・登校を促すことですが、4日以上休ませると本当に行かなくなる子も。そのため“4日以上は休ませない!”と心に決めて。
Point2 どうしても行かないときは、休ませてOK
朝から大泣きして登園・登校を拒むなど、どうしても行かないときは休ませてOK。仕事をしているママ(パパ)も、その日は休んで、子どもと遊ぶ時間を優先的に作りましょう。
Point3 体調不良を訴えたときは、少し様子を見る
登園・登校を渋り「おなかが痛い」「気持ち悪い」など体調不良を訴える子もいますが「仮病?」など疑うのはNG。子どもは「行きたくない」と思うと、本当に具合が悪くなります。そのため「おなか痛いの?」と言って、少し様子を見ましょう。しばらくして回復したら、遅刻でもいいので登園・登校させて。
Point4 子どもとの会話は肯定的に!
子どもの心のケアで大切なのは否定しないことです。「夕ごはん、ハンバーグが食べたいな」など言ってきたら、「いいね!」と明るく受け入れましょう。こうした親子のやりとりが心の安定につながります。
Point5 生活リズムを見直す
休園・休校中、ゲームをしたり、動画を見たりする時間が増えたり、就寝時間が遅くなった子は、規則正しい生活リズムに戻しましょう。不規則な生活リズムは、不登園・不登校の原因になります。
Point6 先生と情報を共有する
休園・休校明けの幼稚園や小学校は、子ども同士や先生との信頼関係の再構築から始めます。そのため登園・登校を嫌がるときは、子どもの様子を担任の先生に伝えておきましょう。
お話・監修/諸富祥彦先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
諸富先生によると、ウィズコロナの今、休校明け登園・登校を拒んだときは、とにかく7月を乗りきることがポイントだそう。休む習慣がつくと夏休みをきっかけに、本当に幼稚園や小学校に行かなくなる子も。「まだ小さいからいいや!」「夏休み明けから頑張ろう!」と考えるのは危険だそうです。
諸富祥彦先生(もろとみよしひこ)
(明治大学文学部教授・教育学博士)
Profile
1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授を経て現職。臨床心理士、上級教育カウンセラー、学会認定カウンセラーなどの資格を持ち、長年に渡ってスクールカウンセラーを務める。近著に「教師の悩み」(ワニブックス)。