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「救急車の中で心臓が止まりそうに…」胆道閉鎖症でわが子をなくしたママ、おしっことうんちの色で早期発見を

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写真/肝ったママ's

「胆道閉鎖症」(たんどうへいさしょう)という病名を聞いたことがありますか。胆道閉鎖症は原因不明の病気で、新生児期から3カ月ごろまでに気づかれることが多いです。発見が遅れると赤ちゃんが亡くなってしまうこともある怖い病気なので、早期発見、治療が重要になります。11年前に胆道閉鎖症による脳内出血で赤ちゃんを亡くしたあと、「早期発見」を訴え続けているママがいます。胆道閉鎖症・乳幼児肝疾患母の会「肝ったママ's」代表として活動する加藤貴子さんに、自身の経験と早期発見の大切さについて聞きました。

最初の異変は、生後5日目の濃いウーロン茶色のおしっこ! でも乳幼児健診では異常なし

胆道閉鎖症は、肝臓から胆汁(消化液)を腸に流す胆管が何らかの原因でふさがれる病気です。胆管がふさがれると、胆汁が肝臓の中にたまって肝細胞を破壊。それにより肝機能障害などを発症し、無治療で放置すると肝硬変から死に至る危険性もあります。胆道閉鎖症のサインは、新生児から3カ月ごろに見られる、うんちやおしっこの色の変化です。

11年前に胆道閉鎖症による脳内出血で2カ月半の赤ちゃんを亡くされた、加藤貴子さんも、当時を振り返ると最初に異変を感じたのはおしっこの色だったと言います。
「産院に入院中の生後5日目、沐浴(もくよく)指導を受けていたときに濃いウーロン茶みたいな色をしたおしっこがピューッと出たんです。そばに置いていたバスタオルに、おしっこがかかって茶色いシミができたのですが、そのとき私は胆道閉鎖症の知識がまったくなく“随分濃い色のおしっこだな”程度にしか思いませんでした。そばにいた看護師さんからも何も言われませんでした。しかし娘を亡くしたあとにわかったのですが、胆道閉鎖症によって、おしっこの中にビリルビンが排出されて色が濃かったということがわかりました」(加藤さん)

ビリルビンとは、赤血球中のヘモグロビンが肝臓や脾臓(ひぞう)などで壊されたときにできる胆汁色素のこと。健康な子は、うんちによってビリルビンが体外に排出されます。

加藤さんの赤ちゃんは、誕生後多少の黄疸(おうだん)が見られたものの「心配ないよ。大丈夫!」と言われて無事に退院。生後2週間健診、1カ月健診でも「異常なし」と言われました。

2カ月のときに、うすい黄色のうんちが! でも白ではないので様子を見ることに

退院後は「スヤスヤとよく寝てくれて、まったく手がかからない子でした」と言う加藤さん。泣きやまない、グズグズと機嫌が悪いことが続くなどの印象がまったくなかったと言います。

「当時は“女の子だからラクなのかな?”“2人目だから手がかからないのかな?”と思っていましたが、今にして思えば、何か異変があったのかも知れません」(加藤さん)

おしっこの色の次に、加藤さんが気になったのがうんちの色です。
「2カ月のときに、うっすら黄色がかったおかゆのようなうんちが出ました。母子健康手帳の便色カードだと、2番の色です。“白いうんちは危険“ということは知っていたのですが、白ではないので様子を見ることにしました。おっぱい・ミルクもよく飲んでいて、体重の増加も順調。1カ月健診で“問題なし”と言われていたので、まさか大きな病気が隠れているなんて思いもしませんでした。
ただ生まれたときから黄疸が多少見られていて、2カ月になっても“肌と白目が黄色っぽいな”とは思っていました」(加藤さん)

実は黄疸は、胆道閉鎖症の特徴の1つです。生後14日以上黄疸が続く場合は、胆道閉鎖症が疑われます。

2カ月13日目の夕方急変! 脳内出血を起こして緊急手術

赤ちゃんの様子が急変したのは、2カ月13日目の夕方です。

「それまでは、いつもと変わらない様子だったのですが、夕方の授乳後、ベッドに寝かせていたら、かなり吐いて、足までベタベタに汚れてしまいました。
ふいてきれいにしてあげて様子を見ていたのですが、夜も授乳後、勢いよく3回吐いてしまって…。“診察時間外だから、明日の朝、すぐに小児科に行こう”と思いました。しかしおむつを替えたら、うんちが真っ白! 娘は機嫌が悪く、泣き方もいつもと違い、明らかにおかしい。熱は36.3度の低温になっていたので急いで救急車を呼んで市民病院に搬送されました。しだいに、私の呼びかけにも反応しなくなってしまい、娘の心臓は救急車の中で何度か止まりそうになり、処置を受けました」(加藤さん)

脳のCT検査をしたところ、脳内出血という診断が。胆道閉鎖症は、前述のとおり胆汁が流れないことにより、ビタミンKが欠乏しやすくなります。ビタミンKが欠乏すると、内出血を起こしやすくなります。とくに赤ちゃんの場合は、脳の血管が細いので、脳内出血のリスクが高まるといわれています。

「医師からは“CTで診たら、2週間ぐらい前にも脳内出血を起こしているけど、何か気づかなかった?”と聞かれましたが、まったく心当たりがありませんでした。強いて言うならば、よく寝ていたことぐらいです。しかしおっぱいもよく飲んでいたので、おかしいとは思いませんでした。
“緊急手術をしないと、この子の命が救えない”と言われ、そのまま緊急手術をすることになりました。ただこのときは、医師も私も、脳内出血を起こしたのは胆道閉鎖症が原因とは思っていませんでした」(加藤さん)

白いうんちで、初めて胆道閉鎖症の疑いが! 救急搬送されて5日目に天国へ

4時間かかるといわれた緊急手術は2時間ほどで終わり、医師から「意識障害は残るかもしれないけれど、命は助かるから!」と言われ、強く手を握られたという加藤さん。しかしその日の夕方、事態は急変します。

「検査のために、小児科の医師がおむつをはずしたら真っ白いうんちが! “いつから、うんち白かった? うすい黄色のうんち出なかった?”と聞かれて、ここで初めて胆道閉鎖症による脳内出血が疑われました。その後の検査で“脳が70%死滅しています。おなかを開いて診ないとわかりませんが、おそらく胆道閉鎖症でしょう。しかし今の状態で、再び手術をすると心臓がパンクしてしまう。残念だけど、手の施しようがありません”と言われました。この言葉を聞いて、頭の中が真っ白に…。でも懸命に病と闘う小さな娘を見て、残された時間を大切に過ごそうと心に誓いました」(加藤さん)

救急搬送から5日目。生後2カ月18日目に、娘さんは天使になりました。

胆道閉鎖症・乳幼児肝疾患母の会「肝ったママ's」の代表として、早期発見を促す活動にまい進!

赤ちゃんを亡くしてからは、家にこもる日々でした。そんなある日、ご主人から「ちょっと公園でも散歩してみない?」と誘われて、家族で公園へ。

「その日は晴天で、公園の丘にある芝生広場にシロツメクサがたくさん咲いていました。“あぁ、娘がいる天国もこんな感じに花が咲いているのかな?”と思い、娘と同じ場所にいるような気持ちになったら、不思議と心がラクになって、やっと現実を受けとめられました」(加藤さん)

しかし、今でも抱くのが「なんで早く気づいてあげられなかったんだろう…」という後悔です。そうした思いから、加藤さんは胆道閉鎖症・乳幼児肝疾患母の会「肝ったママ's」の代表として、早期発見の活動に力を注いでいます。

「胆道閉鎖症は、約1万人に1人という病気のため、乳幼児健診などでは見落とされてしまうこともあります。
2012年4月から全国の母子健康手帳には便色カードが掲載され、だれでも家庭でうんちの色がチェックできるようになりましたが、それまでは育児雑誌などを見ないと確認できませんでした。そのため肝ったママ'sは、母子健康手帳の便色
カード記載を目標に、自治体などにお願いをして、胆道閉鎖症の症状の異変に気づける小冊子をママやパパに配布してもらうなどの活動をしてきました。
胆道閉鎖症はうんちの色がうすくなるのがサインの1つですが、「うすい黄色」といわれても抽象的で、異常に気づけないことが多いので、危険なうんちの色がひと目でわかるように改善を呼びかけてきました。また胆道閉鎖症というと、うんちの色だけを見がちですが、実はおしっこの色にもサインが出ます。母子健康手帳の便色カードには、その旨記載されているので、一度、よく目を通してみてください」(加藤さん)

お話/加藤貴子さん 写真/肝ったママ's 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

胆道閉鎖症は、約1万人に1人の割合で発症する病気と聞くと、どこかひとごとのように感じるママやパパもいるかも知れません。しかし加藤さんは「1万人に1人と言われていても、当事者になれば確率なんて関係ありません」と言います。また現在、新型コロナウイルスの感染を心配して、小児科の受診を控えているママやパパもいるでしょうが、うんちやおしっこ、黄疸の色が気になるときは早めに受診を。急変して命にかかわったり、重い合併症を伴ったりするのが胆道閉鎖症の怖さです。

■胆道閉鎖症は早期発見が第一! 

「肝ったママ's」では、日本外来小児科学会などにブース参加し、医療関係者に、ママやパパへの啓発活動をお願いしています。写真は、加藤さん。

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