うんちやおしっこの色がカギ!1万人に1人の胆道閉鎖症の早期発見、治療を【小児科医】
母子健康手帳についている“便色カード”をしっかり利用していますか。赤ちゃんの命にかかわることもある「胆道閉鎖症」という病気は、うんちの色で早期発見することができます。乳幼児健診も重要なので、コロナ禍の中でもしっかり受けましょう。
新生児期から注意したい胆道閉鎖症とは?
胆道閉鎖症は、新生児期から3カ月くらいまでに発症する病気です。肝臓でつくられる消化液(胆汁)を十二指腸に流すための通り道である胆管が、何らかの原因で破壊され閉塞し、肝臓から腸に胆汁を流せなくなります。うんちやおしっこの色で早期発見ができます。胆道閉鎖症に詳しい、済生会横浜市東部病院・小児肝臓消化器科部長の乾あやの先生に話を聞きました。
「胆道閉鎖症は原因不明の病気で、約1万人に1人の赤ちゃんがかかるといわれています。遺伝の有無などはわかっていませんが、アジア人に多く、女の子の発症率は男の子の約2倍です。主な症状は
①生後14日以上続く黄疸
②薄い黄色やクリーム色のうんち
③ウーロン茶のような濃い色のおしっこ
です。痛くて泣いたり、おっぱいやミルクの飲みが悪くなったりするなどの変化は見られません。そのためうんちやおしっこの色の変化に気づかないと、見逃してしまいやすい病気です」(乾先生)
便色カードを使いうんちチェックを習慣に
胆道閉鎖症の早期発見に活用したいのが、母子健康手帳にある「便色カード」です。
「赤ちゃんがうんちをしたとき、便色カードと見比べてください。正しく見比べるには、白い布などを敷いて、その上におむつを広げて横に便色カードを置きましょう。日中は明るい自然光のもとで。夜は間接照明ではなく、明るい蛍光灯の下で見比べます。うんちの色が薄い場合、出たばかりのうんちならば、衛生的なポリ袋などに入れて小児科に持っていき、医師に診てもらいましょう。夜間などですぐに受診ができないときは、時間がたつとうんちは変色しやすいので、スマートフォンなどで撮影しておきましょう。うんちの横に便色カードを並べて撮影することも診断の助けになります」(乾先生)
また胆道閉鎖症は、うんちやおしっこの色が毎日おかしいというわけではありません。
「たとえば新生児のときにうんちの色がやや薄くなり、1カ月後にまた薄くなるなど症状を繰り返す場合が多いです。そのため生後3カ月くらいまでは便色カードを使って、うんちの色が正常か、毎日見比べる習慣をつけてください」(乾先生)
胆道閉鎖症の早期発見が大切なのは、 早期の治療により自分の肝臓で長く生きられるからです。胆道閉鎖症・乳幼児肝疾患母の会「肝ったママ sʼ 」の代表を務める加藤貴子さんは、 第 2子である長女が生後 5日目に濃いウーロン茶色のおしっこが出たものの、生後 2週間健診でも、1カ月健診でも「異常なし」と言われました。しかし2カ月 13日のとき脳内出血で緊急手術に。 5日後、赤ちゃんは亡くなりました。「胆道閉鎖症は、早期発見によって命が助かる可能性が高まる病気です。便色カードを使うことで胆道閉鎖症だけでなく、肝臓全体の病気を見つけることができます。“どうして気づいてあげられなかったのだろう”と、ママやパパたちに後悔してほしくなくて活動をしています」(加藤さん)
乳幼児健診で気づいてもらうためにも、日ごろから赤ちゃんのうんちやおしっこの色をチェックする習慣をつけましょう。
監修/乾あやの先生 撮影/矢作常明 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
便色カードの見方を紹介します。 健康なうんちの色は5番~7番です。至急受診が必要な色は1番~3番です。4番 のうんちの色は、1番 ~3番の色に変化していく可能性があるので、念のため小児科を 受診してください。
乾 あやの先生(いぬいあやの)
Profile
済生会横浜市東部病院・小児肝臓消化器科部長。 専門は肝臓、感染症、代謝異常。日本小児科学会専門医、日本肝臓学会専門医・指導医。日本胆道閉鎖症研究会の役員も務める。
参考/『ひよこクラブ』2020年10月号「子育てTOPICS」