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【小児科医リレーエッセイ 16】 コロナ禍・イヤイヤ期のイライラを乗りきるには『ちょっとほめ』を

不幸せなファミリー
※写真はイメージです
sunabesyou/gettyimages

「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の先生方から子育てに向き合っているお母さん・お父さんへのメッセージをお届けします。第16回は、福岡県北九州市・よしだ小児科医院の吉田ゆかり先生です。ウィズコロナの日々で子どものイヤイヤ期とのつき合い方へのアドバイスです。

新型コロナの影響で、大人も子どももストレスを抱えています

新型コロナウイルス感染の流行で、この時期外来では年齢を問わずストレスを感じている大人や子どもに多く遭遇します。病気への漠然とした不安はもちろんですが、学童の場合この先自分の生活はどうなるのか、学校の勉強についていけるのかなど、はっきり言葉で言い表せないで、頭痛や腹痛など身体症状につながっています。
また幼児では外に遊びに行けず家でずっと過ごしていたり、保育園・幼稚園にも長期通えず家の中でいつもと違う生活を強いられています。
必然的にダダをこねたり、イヤイヤが増えたり、きょうだいげんかが増えたりしてつい親もしかることが増え、自己嫌悪に陥ったりしています。また経済的不安も見過ごせません。

お母さん・お父さんに子どもの心の発達を理解してもらうことが大切

今私たち医療スタッフにできることはなんでしょうか。まず大切なのは親子の気持ちに寄り添うことで、最初から言動を否定しないことですよね。子どもへの対応は年齢に応じて異なります。私は親に子どもの心の発達を理解してもらい、その発達段階に応じた望ましい対応を話しています。
乳幼児期の情緒や心理、社会的発達について私自身が勉強して理解しやすかったのは、エリクソンという心理学者があげている「人間性の健全な発達に極めて重要な課題」です。
今回は、乳児期(〜1歳)の基本的信頼関係の形成、幼児前期(2歳前後〜3歳)の自律心の形成について考えてみましょう。

0歳代に形成された「心の安全基地」は思春期まで続きます

まず0歳児では、生後数日から始まる母から子へ、子から母へ働く母子相互作用が大切です。目と目を合わせて話しかけたり、子どもが泣くと高い調子の声(マザーリースといいます)であやしたり、においや体温を感じたりすることの繰り返しで母と子の気持ちが同調していき、母と子のきずな「愛着」が形成されて、子どもの母親に対する「基本的信頼関係が成立」していきます。
これはまた「心の安全基地」とされ、その後の子どもの心の発達や社会化の原動力になります。テレビ番組で「はじめてのおつかい」というものがありますが、子どもにそれができるのは、自分の心の中に常に母親像があり、心の安全基地ができているからでしょうね。
また私は子どもが思春期になるころ、この安全基地がフラッシュバックしているなと感じます。体が大きくなって変化してくることや、自分を取り巻く社会の対応の変化などに漠然とした不安があるのでしょうか、やたら母親にベタベタすり寄ってくる時期があります。
親にとっては奇異に感じるかもしれませんが、きっと安全基地を感じたいのだと思います。さり気なく対応してください、あっという間に過ぎて思春期の反抗に変わります。
また、私は母親に基本的信頼関係の成立がいかに大切かを伝えます。生後6カ月くらいまで泣けばすぐ対応してもらえる、世界の中心でいられる子どもは幸せなんだよ、人生後にも先にも世界の中心でいられるのはこの時期だけだよと。でも生後半年を過ぎたら、たとえば調理中に泣き出したりした場合、ちょっと待ってと声をかけてもいい、その代わりそばに行けたときしっかり我慢したねと言いながら抱いて安心させてあげてね、と話します。
その繰り返しで子どもは自分をなだめる力を身につけ、やがて世の中はいつも自分に合わせてくれないことを認めていきます。

2歳代は、自我を容認しつつ我慢する力を育て自立心の形成を

2歳前後になると、未熟ですが言葉で自分の意志を伝えることができるようになり、まだ先が見えてなく危険などを予測できないのですが、自分で自分の好きなことがやりたい「自我の発達」を迎えます。しかし危険から身を守るために、社会規範に合わせていい社会性を持った人になるために、子どもの自我を容認しつつも我慢する力を育て上げなければなりません。返事をする、あいさつをする、簡単なお手伝いや片づけをするから始まって、食事の習慣やトイレトレーニングなどの「しつけ」も必要です。

当然子どもは自分のやりたいようにしたい自我の発達真っただ中の第一反抗期ですから思いっきり泣いたり、イヤイヤと暴れたりと大変です。
しかし、子どもが言葉に出しにくいネガティブな感情を素直に表現できていることが大切で、自由な感情表出を大人が否定しないことです。子どもはしつけの枠組みにぶつかって不快感情を出しますが、大人はその感情を「嫌なことはわかるよ」と抱きしめ、気持ちを受容してあげます。枠組みは変えないでほめたり、透かしたり、おだてたりしながら、怒るのではなくしかる、すなわち教え諭す姿勢をもつことです。その繰り返しで自我を抑えること(自制)ができる、我慢できるようになります。「自律心の形成」ですね。

イヤイヤ期への対応は、『ちょっとほめ』繰り返すことが大切

しかし毎日繰り返されるイヤイヤ期への対応は親にとって負担を感じていることもあります。そこで私は、ペアレントトレーニングを参考にした対応をお母さんたちに話しています。まず、けがをするような危険な行為、物を壊す・投げる、ほかの人への暴力など「絶対にしてはいけない行動」は断固とした真剣な態度ですぐに止めさせます。
あいさつやお手伝いなど「好ましい行動」をしたときは、即座にほめる、そしてお母さんはうれしい、ありがとうと主語をつけて言うようにします。かんしゃくを起こして泣きわめいたり、イヤイヤとすねるなど「してほしくない行動」をいくら諭しても止めようとしない場合、「泣きやんだらおいで」とまわりを危なくない環境にして、しばらく相手をせずにほかのことをしながら見ていないふりします。
そしてその行動を止めて寄ってきたら「えらいね」と『ちょっとほめ』をします。しつけの意味がすぐにわからなくても、『ちょっとほめ』を繰り返すことによってその心地よさから行動が変わって自律心ができていきます。

『ちょっとほめ』を実際に実行されたお母さんは、怒ることが少なくなりましたと言われます。なんとか「イヤイヤ期」を乗りきるのに役立ってほしいです。

文/吉田ゆかり先生(医療法人よしだ小児科医院・理事長)

1974年広島大学医学部卒業。大学6年の夏、愛知県重症心身障害児のコロニーでの経験から未熟児、新生児医療をめざして小児科医になる。名古屋市立大学医学部小児科学教室、国立小倉病院小児科を経て、1990年開業。2005年より現職。孫5人。「3人の子どもの子育て中は、仕事との両立で子どもに迷惑のかけ通しだった」

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