「小児科医なのに娘の湿疹も治せない…」自分を責めた経験から、今のママ・パパに伝えたいこと【ママ小児科医】
今回は、3児を子育て中のママ小児科医・藤井明子先生が、子育てをとおして感じた「わからないことだらけの育児」をテーマに、先生の体験をお届けします。
藤井先生が、日々の診療の中でママ・パパたちから寄せられたお悩みについてのアドバイスや、日々の子育てに頑張っているママ・パパに伝えたいさまざまな情報を発信している連載の第5回目です。
思い描いていた産後のイメージと現実はかけ離れていた
私が長女を出産したのは医師になって5年目のときです。
出産する前は、4~5日に1回のペースで当直をし、当直明けの翌日も夕方まで勤務をしていたので、体力と気力はあるほうだと思っていました。
出産前の私は、「出産後の生活は授乳とおむつ替えをすれば、あとは赤ちゃんと一緒に寝ていればいいでしょ」とたかをくくっていたのです。
ですが、出産後、私の予想は大きくはずれました。授乳だけでも大仕事…!
さらに、胸が張りやすい私は、赤ちゃんの抱き方の向きをいろいろ変えて飲ませるように言われていたので、赤ちゃんの向きを変えて、授乳クッションを駆使しながら、授乳していました。
そして、授乳が終わったら、げっぷをさせるのですが、げっぷと一緒に母乳が口からけぽっと出ることも。
吐きもどしでベビー服が汚れ、着替えさせたら次はおむつ替え…と、「なんでこんなに大変なのか!!」と思ったのが初めての育児の感想でした。
「頑張れば成果がついてくる」と、自分自身を追い詰めていた日々
小児科医とはいえ、医学は勉強してきたものの、育児は初めて。わからないこともたくさんありました。
家での過ごし方、洋服の組み合わせ、おもちゃの選び方など、まったくわかりませんでした。
長女は、乳児湿疹が顔全体に出たことがあったのですが、わが子の湿疹となると心配でたまらなく、湿疹がよくなるようにスキンケアを必死で頑張りました。
湿疹ひとつでも、「よくならないのは私のスキンケアが悪いせい」、「母乳がいけないのではないか」、「肌着がいけないのか、はたまた洗剤がいけないのか」…などいろいろ悩んでしまいました。
そんなときに尊敬する大先輩の小児科医に言われた言葉が忘れられません。
「頑張ったら頑張っただけ報われると思って過ごしてきた人は、子育てでも、自分が頑張れば成果がついてくると思って、必死に頑張ってしまう。ただ、子育てって思い通りにならないことが多い。だから、思い通りにならない子育てを目の当たりにして、自分のせいにしてしまったり、さらに必死になって頑張ってしまうお母さんが多くいる。そのお母さんたちを支えるのが、子育てのサポートの上でとても大切です」
実際に母親になってみて、お母さんたちの大変さを身にしみて感じました。湿疹ひとつとっても、「自分は小児科医なのに、すぐには治してあげられない」と、泣きそうになったときもありました。
私の場合には、職場の小児科医師や看護師や、先輩ママである妹、ファミリーサポートの方、保健師さんに相談にのってもらい、育児を乗りきってきました。
そして、今は子育て歴12年目を迎え、3人の母となり、思い通りにならない育児、それぞれの子どものペースで成長する姿を楽しめるようにもなってきました。
子育てをとおして、「頑張りすぎないでも大丈夫」という経験を教えられている気がしています。
とくに初めての育児中のママ・パパは、不安や心配ごとがたくさんあると思いますが、私がお伝えしたいのは、「思い通りにならないこともたくさんあるけれど、それ以上に子どもたちと過ごす時間は楽しいよ、大丈夫」ということです。
これからも、小児科医としての働きを通して、親御さんとともに子どもの成長を楽しみながら、見守っていきたいと思っています。
文・監修/藤井明子先生 構成/ひよこクラブ編集部
藤井明子先生(ふじいあきこ)
Profile
さくらキッズクリニック・院長。小児科医。東京女子医科大学病院や長崎大学病院、長崎県立こども医療福祉センターで研さんを積んだ後、現職。専門は小児神経。“病気に限らず、子どものすべてを診るクリニック”をめざし、ママ・パパの子育ての悩みに寄り添う診療を行っている。現在3人のお子さんを子育て中。