「私の愛情不足?」と悩む母に、3児のママ小児科医がかけた言葉
3児を子育て中のママ小児科医・藤井明子先生が、子育てを通して感じた「子どもの愛情不足」をテーマに、先生の体験談をお届けします。
藤井先生が、診療の中でママ・パパたちから寄せられたお悩みについてのアドバイスや、日々の子育てに頑張っているママ・パパに伝えたいさまざまな情報を発信している連載の第8回目です。
愛情がたりていないかも、と悩むお母さんにかけた言葉
乳幼児健診では、赤ちゃんの体のことだけでなく、お母さんやお父さんの育児の心配ごとを聞くことも大切にしています。あるとき、健診票の質問事項にある「Q.何かご心配なことがありますか?」の欄に、お母さんがこのように書かれていました。
「私と2人のときには甘えてくるけれど、おばあちゃんや私の友だちと一緒だと、私よりもおばあちゃんや友だちに甘えます。もしかして、これって私の愛情不足なのかも…と、心配になります」
ご相談いただいたお母さんへは、「愛情不足ではないかとわが子を思う気持ちがあるだけで、もう愛情はあるし、お母さんと2人のときに甘えてくる赤ちゃんへの愛情は不足ではないですよ」とお伝えしました。
“理想の母”になれなくても、自分を責めないで
お子さんの行動一つひとつを見たときに、行動は一つでも、見方によってわいてくる感情は人それぞれです。おばあちゃんに甘えるわが子を見て、おばあちゃんに抱っこされてよかったと思うお母さんもいれば、「私の愛情がたりないのかしら?」と思うお母さんもいます。
わが子が母である自分以外の人になついたりすると悲しくなり、愛情不足ではないかと心配するとき、そんなときはお母さん自身が「理想の母になれていない」「理想の育児ができていない」と自分を責めてはいないでしょうか。
理想の母になり、理想の育児ができないと思うときには、それだけ気持ちの余裕がないときだと思います。まずは、愛情不足ではないかと自分を責めるよりも先に、お母さん自身の心身を休ませられたらいいですね。
中には、きょうだいもいたりして、物理的にゆっくり休むことができないお母さんもいるかもしれません。そんなときは、少しでもいいので、自分の気持ちを俯瞰(ふかん)してみてみることをおすすめします。
たとえば、「愛情がたりてないと思うな」「イライラしているな」「疲れているな」「眠いな」…などなんでもOK。自分の気持ちがわいてくるのを、上から眺めるイメージです。
すると、普段は育児に追われて、頭の端に追いやっていた自分自身の気持ちに気づき、少しだけ自分をいたわることができます。
また、自分の気持ちを客観視すると、「愛情がたりてないって思っていたけど、愛情がたりてないって本当なのかな?」と考えの偏りにも気づき、気持ちを緩めることができます。イライラするくらい、育児に疲れているな、と気づけるだけでも十分です。
そうして、お母さん自身をいたわってあげられたらいいと思います。それでも、「愛情がたりてないのではないか?」と、お母さんが自分自身を責めて苦しいときには、1人で悩まず、パートナーや家族、時にはかかりつけの小児科医に相談されてもいいと思いますよ。
文・監修/藤井明子先生 構成/ひよこクラブ編集部
藤井明子先生(ふじいあきこ)
Profile
さくらキッズクリニック・院長 小児科医。東京女子医科大学病院や長崎大学病院、長崎県立こども医療福祉センターで研さんを積んだ後、現職。専門は小児神経。“病気に限らず、子どものすべてを診るクリニック”をめざし、ママ・パパの子育ての悩みに寄り添う診療を行っている。現在3人のお子さんを子育て中。