除菌、抗菌、滅菌の違いは?アルコール消毒液の選び方は?
コロナウイルスが流行し始めて、私たちの暮らしの中でも「除菌」「抗菌」「滅菌」という言葉が気になるようになりました。しかし、その違いについては意外に知らないという人も多いのではないでしょうか。今回は「除菌」「抗菌」「滅菌」の違いについて、家事マイスター(R)の梶野智絵さんに聞きました。
梶野智絵
家事マイスター(R)
家事が苦手な人に、家事のコツや時短家事・分担家事・男家事・整理収納・楽家事などのレッスンを行う。またセミナーや講演・雑誌取材やTV出演・コラム等でも活躍。
「除菌」とは特定の菌を減らすこと
「除菌」とは、「対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を有効数減少させること」と定義されています(出典:日本石鹸洗剤工業会)。そして洗剤・石けん公正取引協議会公認の基準を満たさないと「除菌」の表示はできないという決まりがあります(細菌にはカビ・酵母などの真菌類は含みません)。
よく広告で「99.9%除菌」などと書かれているのを見かけると思いますが、これも「100%はあり得ないから100%とは表示しない」という日本石鹸洗剤工業会の規約にのっとってそのように表示しているようです。
私たちは普段多くの細菌に囲まれて生活をしていますが、その中でも私たちに害を及ぼす細菌に対して、除菌商品が開発されています。そして、商品に書かれている「用途」に、定められた「使い方」をすることで除菌効果が得られます。
「抗菌」とは菌の増殖を抑えること
通産省(現・経済産業省)の「抗菌加工製品ガイドライン」では「当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」と定義されています(抗菌加工製品ガイドライン)。
業界団体が調べて抗菌効果があるとされた繊維製品(抗菌靴下など)には「SEK」マーク、繊維以外の製品(まな板など)には「SIAA」マークをつけて品質を保証するようになりましたので、商品を選ぶときにこのマークを確認すると分かりやすいですね。
「抗」という字は抵抗するという意味ですから、菌が繁殖するのに抵抗するということ、つまり菌にとって居心地の悪い環境を製品の表面や素材に施すことです。
私たちの身の回りには抗菌加工された製品がたくさんあるので、菌に対して安心な気がします。でも「抗菌加工を施しているからずっと安心!」というわけではありません。抗菌加工にも寿命があります。その年数は製品により差があり、取扱説明書に書かれていることもありますので確認してください。あるいは「抗菌加工されたはずの肌着の臭いが気になってきた」といった場合も、加工に寿命が来たことになります。
「滅菌」とはすべての菌を全滅させること
医薬品の規格基準を定めた「日本薬局方」によると、「被滅菌物の中の全ての微生物を殺滅又は除去すること」と定義されています(出典:日本薬局方)。
「滅」は、滅びるという意味。すべての菌やウイルスを全滅させる、取り去ってしまう働きがあるものを指します。傷の手当てや看病・介護をするときに使う器具などにも「滅菌」と表示されているものを使うことが多く、主に医療の現場で使われるのが「滅菌」です。細菌やウイルスに対して最強です。
ここまで「除菌」「抗菌」「滅菌」について、詳しくご紹介しました。
さらに、これらと同じような意味合いで「消毒」「殺菌」など紛らわしい言葉もよく使
われていますので、簡単に説明しておきましょうね。
「消毒」とは菌を無毒化すること
消毒とは字のごとく、毒消しです。滅菌と似ているように感じますが、消毒では細菌やウイルスそのものを死滅させるのではなく、私たちの身体に悪影響を及ぼす力を無毒化することをいいます。ここが「滅菌」との違いです。つまり、私たちを攻撃する、武器だけを取り上げるような感じですね。
「殺菌」とは菌を減らすこと
殺菌も「滅菌」に似ているように思いますが、全く違うものです。「殺菌」の定義にはその程度は含まれないため、わずかな細菌やウイルスを死なせても「殺菌」といえるのです。商品選びをするときに、この違いを知って選んでくださいね。
アルコール消毒液は濃度に注目
「除菌」「滅菌」「消毒」「殺菌」によく使われるものに、アルコールがあります。アルコールに含まれているエタノールの濃度が70%以上95%以下の場合に、菌やウイルス対して効果が得られます。エタノールが入手困難な場合、60%台の濃度でも消毒効果があるとされています。アルコール消毒液を選ぶときは、表示をよく確認してくださいね。
「除菌」「滅菌」「消毒」「殺菌」を表示した商品が沢山あり、どの商品を選べば良いか迷ったときは、記載されている「用途」「使用目的」「効能・効果」に従って選ぶと間違いはありません。
「除菌」「抗菌」「滅菌」「消毒」「殺菌」。似た言葉ですが、これまで持っていたイメージとその効果は合っていましたか?思ったよりも効果が大きかった・小さかったといった言葉もあったのではないでしょうか。それぞれの特徴を知って、暮らしに取り入れて下さいね。