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“卵アレルギー”は完全除去しないほうが6才の予後がいい。【国立成育医療研究センターが発表】

更新

皿の中の茶色の卵。
写真はイメージです
Sanny11/gettyimages

乳幼児が起こす食物アレルギーの原因食物第一位は卵。そのため、予防のために卵を食べさせなかったり、一度反応が出たからと完全除去してしまったりと、ママやパパの自己判断で対応していたりしませんか。
国立成育医療研究センターが「卵を完全除去しないほうがアレルギーの予後はいい」という研究結果を発表しました。国立成育医療研究センターアレルギーセンター総合アレルギー科医長・山本貴和子先生に、今回の研究について聞きました。

食物アレルギーは、成長して治る子と治らない子がいる

今回の研究の背景のひとつに、“すべての子どもの卵アレルギーが年齢とともに改善するわけではない”という海外の報告があるといいます。

「卵アレルギーのお子さんを診察する中で、成長すれば治ると(治る子もいるし治らない子もいる)思い、不要な除去をしていたりする例をたくさん見てきました。なんとか卵の不要な除去を減らし、卵アレルギーを減らせないか、と考えました」(山本先生)

研究は、2013年11月から2019年7月までに、食物経口負荷試験(OFC) を実施した6才の子どもで、2才までにアレルギー検査のデータがある子どもを対象にカルテデータを振り返って行われました。
加熱した卵アレルギーがよくなっている 17名とOFCで少量の卵に反応した卵アレルギーが 持続している26名の違いを調査しています。

6才まで完全除去した場合、9割以上に症状が続いていた

その結果、6 才時に完全除去を継続していた子どもで、卵アレルギーが改善したのは 8%のみで、92%は 卵アレルギーが持続していました。
一方、完全除去をしていなかった子どものうち53%が、卵アレルギーがよくなったという結果になりました。

アレルギー検査が陽性だからと完全除去せず、医師と相談を

この研究のもうひとつの背景に、わが国で卵のアレルギー検査が陽性という理由だけで卵摂取を完全除去されている子どもが多いということと、2007年の海外の報告(※1)でも 57%の子どもが検査陽性だけで完全除去していたという報告(※2)があるといいます。

「皮膚や血液のアレルギー検査陽性だけで食物アレルギーを正しく診断することはできません。食物アレルギーは、問診や食物経口負荷試験で原因食物を食べて“アレルギー症状”があることを経て確定診断となります。

湿疹(しっしん)やアトピー性皮膚炎がある時にも検査をするのですが、ある特定の食物のアレルギー検査陽性=食物アレルギーと考える人は医療従事者も含め、まだ多いという現状があります。アレルギー検査をして陽性が出てしまうと、食物アレルギー症状がなくても食物アレルギーと診断してしまい、完全除去を指導することが多くあります」(山本先生)

皮膚や血液のアレルギー検査はアレルギーが出る可能性がある、というものを示すだけで、問診や食物経口負荷試験で陽性になるなど、確定診断は原因食物を食べて症状があることで決められるとということなのです。

「食物経口負荷試験はアレルギー専門医の指導のもと、体制と環境を整えて行う必要があります。いつでもどこでもできるというわけではありませんが、全国都道府県に“アレルギー拠点病院”はありますし、全国の食物経口負荷試験実施施設を確認することができます。
卵アレルギーと自己判断して卵を除去せずに、最低限の除去や解除をできるように医療機関に相談してほしいと思います」(山本先生)

アレルギー検査が陰性でも、症状がある子も

食物アレルギーは症状がないのに、検査が陽性だったからと完全除去してしまう例が多いということですが、逆に、明らかに反応があるのに、アレルギー検査が陰性だった、という体験も聞くことがあります。

「もしかすると即時型ではなく、違うタイプの消化管アレルギーかもしれません。最近、アレルギー検査(IgE抗体)で陽性にならないタイプの消化管アレルギーも増えています。全国調査で、1才6カ月のお子さんの100人中1~2名のお子さんに消化管アレルギー症状があったようです。アレルギー専門医に相談するといいでしょう」(山本先生)

アレルギー検査が陽性だからと自己判断で除去しないで

今回の研究結果では、卵アレルギーのある子でも部分解除や経口免疫療法を行って、完全除去しないほうが卵アレルギーの予後がいいという結果が出ました。ただ、ここにも注意点があるといいます。

「卵アレルギーと診断されている子どもに、保護者の自己判断で卵を食べさせるとアナフィラキシーなどを生じるリスクが高くなります。医師の適切な指示のもと必要最小限の除去を行い、保護者の自己判断により自宅で食べさせないことに注意してほしいと思います。

また、これから離乳食を始めるというお子さんの場合、湿疹・アトピー性皮膚炎をよくしてから離乳食を開始しましょう。湿疹・アトピー性皮膚炎があってもしっかりコントロールできていれば多くのお子さんは少量の卵は摂取できます。
離乳を始める前に湿疹・アトピー性皮膚炎があるお子さんは医師と相談して卵をすすめてください」(山本先生)

離乳食の進め方については、2020年度より厚労省の「授乳・離乳の支援ガイド」では卵は離乳初期(5~6カ月ごろ)から食べさせることになっています。

お話・監修/山本貴和子先生
図版提供/国立成育医療研究センター 取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部

食物アレルギーの研究分野は日々進歩していて、新しい発表が次々にされています。適切な情報をこまめにチェックするように心がけましょう。

●全国のアレルギー拠点病院
医療機関情報

●全国の食物経口負荷試験実施施設
食物経口負荷試験 実施施設一覧|食物アレルギー研究会

※1)Savage JH, Matsui EC, Skripak JM, Wood RA. The natural history of egg allergy. J Allergy Clin Immunol. 2007 Dec;120(6):1413-7.
doi: 10.1016/j.jaci.2007.09.040. PMID: 18073126.

※2 )Savage JH, Matsui EC, Skripak JM, Wood RA. The natural history of egg allergy. J Allergy Clin Immunol. 2007 Dec;120(6):1413-7.
doi: 10.1016/j.jaci.2007.09.040. PMID: 18073126)

山本貴和子先生(やまもときわこ)

Profile
国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科医長。
2003年山口大学卒業。小児科学、アレルギー学が専門。小児アレルギーのリスク因子の同定や予防法の開発研究を行う。
研究成果

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