【女優・加藤貴子】妊活・高齢出産を夫婦で乗り越え、2人きょうだいの子育てで学んだこととは?
不妊治療・3度の流産を経て44才で第一子、46才で第二子を出産した女優の加藤貴子さん。たまひよONLINEでは、2年間にわたって連載を持ち、育児に影響を与えた言葉の数々を紹介してくれています。現在長男は小学1年生、次男は4才。加藤さんに高齢出産のことやこれまでの子育ての話などを聞きました。
高齢出産にならざるを得ない状況の人もいる
――2年間のたまひよONLINEでの連載を振り返って、周囲の人の反応や、加藤さん自身の思いなどを教えてください。
加藤さん(以下敬称略) 子育てって年は取っていても初めてのことばかりで、たくさん失敗したり悩んだりしました。その中で誰かにアドバイスをもらったことを、同じように悩んでいる人にシェアできたらいいな、と思い連載をしていました。私の失敗を読んで「自分だけじゃないんだな」と読者の方に思ってもらえたらうれしいです。
――令和元年の調査では、35才以上で第一子を産む人が約29%となったそうです(※)。加藤さんも44才で第一子を出産しましたが、高齢出産についてはどう考えていますか?
加藤 自分が高齢出産をして、私は高齢出産はできればしないほうがいいと考えています。妊活も妊娠適齢期のうちにしたほうがいいと思いますし、子育ても若いうちにしたほうがいいと感じています。それは、自身の体力や気力の問題ももちろんですが、今、2人の息子を育てながら「この子たちの成長を1日でも長く見守ってあげたい」と思うことが大きいからです。
ですが、現状、仕事を持つ女性にとって、妊娠・出産・育児とキャリアとの両立がいまだにすんなり受け入れてもらえる社会とは言えませんよね。いろんな事情を抱えながら、不妊治療をしたり高齢出産になったりする人も多いと思います。
育児の大変さは1人ではなかなか乗り越えにくい
――体力面や精神面などで高齢出産を心配する人もいますが、加藤さんは育児する上で工夫などしていますか?
加藤 工夫というか…私たち夫婦は不妊治療を始めたときから、いろんなことを一つ一つ話し合って、協力しあうようにしています。子どもの笑顔と健康が第一で、そのためにどうするか考え、失敗しながら助け合いながら毎日必死で子育てしています。
今朝、私が家を出るときに次男が「保育園に行きたくない」と泣き始めたんです。保育園の送りは私のほうが多いので「仕事に遅れちゃう~」と心配になりましたが、夫が「僕が保育園に連れていくからいいよ」と言ってくれて助かりました。体力的にも気持ちの面でもただでさえワンオペママというのは、大変なのですから、高齢出産をする人にはぜひ夫婦で協力しあってほしいですね。
――これまで7年間の子育てで、大変だったことはどんなことですか?
加藤 子どもってすぐ熱を出しますし、夜中にせきが止まらないとか、インフルエンザにかかったりとか…看病で徹夜のようになることもよくありますよね。私は40才過ぎたくらいから、ドラマの撮影でも徹夜だったりすると、なかなか疲れから回復しづらくなってきたと感じていました。だから44才で子どもが体調が悪くて何日も寝不足が続くような状況は、本当に1人では乗り越えられなかったと思います。
先輩ママから教わったのが「子どもが具合が悪いときは夫婦2人で面倒を見る必要はないよ」ということ。共倒れがいちばん困るので、子どもが病気になったら、夫婦のどちらかがお世話をして、片方はきちんと休んで次に備える、ということは今も続けています。
子育てを経験し、目の前で起きていることを受け入れられるように
――子育てをする中で自身の価値観や考え方に何か変化がありましたか?
加藤 時間という概念にしばられすぎないようになりました。だいたいイライラするときって、時間に間に合わないときが多いと思うんですけど、子ども相手だと計画通りにならないことばかりですよね。出かけるのに玄関の鍵を閉めた瞬間に「うんちしたい!」とか言いますし(笑)。
もちろん長男は、小学校に遅刻をしないなどの基本的なことは守らせますが、頭のどこかで「ま、遅刻しても、死んじゃうわけでもないし!」と逃げ場を作るようになりました。目の前で起こっていることを受け入れる、というのを子育てで学びましたし、今も勉強中です。
――その考え方は仕事にも影響していますか?
加藤 そうですね。出産する前は、すごく慎重で石橋をたたいて渡るタイプでした。仕事の現場でトラブルがあると「えっ?! どうしよう!」と気を取られてしまうことも。でも今は、トラブルがあっても「まあなんとかなるでしょう」と。起こってもいないことを不安に思ってもしょうがないし、本当になんとかならないときに考えよう、というふうに変わりました。
自分で考え、自分なりの意見を持ってほしい
――現在長男のサクくんは7才、次男のアンくんは4才。これからどんなふうに育ってほしいと思いますか?
加藤 人の痛みに寄り添える、思いやりのある子に育ってほしいなと思いますね。そしてちょっと表現が難しいのですが、正しいことというよりも、あたたかさや楽しいことを選んでほしいなと思っています。
子どもが幼稚園のおゆうぎ会で歌った「ふしぎはすてき」という歌があるんです。「あたりまえがふしぎ」っていう歌詞がすごくいいなと感じました。私たちが日常であたりまえにやり過ごしてしまっていることって、実はふしぎなことがたくさんありますよね。
子どもには、ふしぎだな、なぜだろう?ということを、自分で考えて調べて自分なりの意見を持ってほしいと思います。なぜかな、と考える気持ちを大切にする心のさきに、あたたかさ、ぬくもりがあるんじゃないかなと思います。そして、いつも楽しむことを忘れないでいてほしいなと思いますね。
――そのために子育てで心がけていることはありますか?
加藤 子どもの話はよく聞くようにはしています。…といっても上の空のことも多いですが(笑)。私が「うんうん」と相づちを打っていると、子どもは私に話しながら自分の考えがまとまるみたいです。存分に話して気が済んだり解決したりすると離れていきます。
子どもがそうやって自分で考えた意見や答えが間違っていても私はいいと思うんです。私は聞き役に徹して、もし彼らが間違えに気づいたときに、手を差し伸べてあげられる親でありたいと思っています。
お話/加藤貴子 撮影/アベユキヘ 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
「子育てでいちばん大変だったことは?」と聞くと「毎日、今がいちばん大変!」と加藤さん。「高齢出産に限らず、子育ては予期しないことばかりで大変ですよね。くじけそうになときは力を抜く時間を持っています」とも。加藤さんのように柔軟に変化を受け入れながら、周囲と協力して子育ての大変さを乗り越えられるといいでしょう。
加藤貴子さん(かとうたかこ)
PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。